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読まない世界

読む時間がないだと?

そもそも読もうとしている時点で心得違いも甚だしい
君が気にしているのは、スキャンの速度のことか?
速度が速いと言ってもちょっと速いくらいでは、その量は無理だよ

まずは、目をつむって、じっと静かにして、神経を集中してごらん
心を無にするんだ
誰かが遠くで何か言っているのが聞こえるかい
だんだん近づいてくるだろう?

何か聞こえると思っていたのが、はっきりしてきたら、何か文字のような気がしてきたかい
読んでいないのに、君の脳裏には文字が見える気がするだろう?

今から1万年ほど前、読書と実質的に同じことを聴覚によって容易にできるようにするための商用サービスが始まった
なに、当時やっていたことは、えらく原始的なものだった
母親が、まだ文字を覚えていない幼児に読み聞かせをするのと同じ要領で、書籍のコンテンツを音声データにして販売していたということだ
つまりは、文字のデジタルデータと音声のデジタルデータをどうハンドリングするか、というような次元の話だった

もちろん、いまでは音声データを経由させたりなんかしない
それじゃ、遅いからね

頭に描いた1つの思考、概念が出発点になる
非言語的であっていいし、抽象的で一向に構わない
ちょうど空想的な絵画のようでもあるかもしれない
この内容を1冊ぶんの書籍のかたちに生成するなんて瞬時だ

そう、最初はそれを受け取る方法が課題だった

今では、どんな膨大な情報も、読む必要も聴く必要もなく、もっとすっと入ってくるよ
脳から脳へ、抽象的な思考、概念は、そっくり転送できるからね

つまり、頭に何かが浮かんだ時点で、コミュニケーションは終わっている
だから、読む必要がないのか

時代遅れでも、読む時間、あるほうがいいね
(709字)

2023年4月下旬頃からシロクマ文芸部の企画に毎週参加させて頂いています。2024年4月まで1年ぴったりの継続のつもりです。金曜午前(早朝)に投稿します。今回のお題は「読む時間」が書き出しでした。どうぞよろしくお願いいたします。

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