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続・林田生物物理研究所

マガジンご購読の皆様、こんにちは。いつもお世話になっています。たまには、サイエンスフィクションのような、実はありえないが、架空、空想であっても科学の要素がとりいれられた楽しいストーリーを語ってみましょうか。

そう、昨日の記事の話題だった 1984年ゴジラ映画。それに登場した林田博士、牧吾郎、奥村兄妹は、2021年の今であれば、あのゴジラの物語をどのように総括するのでしょうか?

まず、昨日の記事をご覧でない方は、先に読んでみてくださいね。


2021年、ゴジラ映画では若い学生だった奥村宏は59才、あの奥村尚子も57才です。彼らは2人とも明法大学を卒業後、研究者の道を歩みました。いまや大ベテランです。原子力や量子ビームの研究拠点が集中立地する〇〇県〇〇村のビルの一室にある○○〇〇〇〇物理研究所の主要スタッフです。この研究所を運営しているのは今は亡き林田博士の遺志を継いでゴジラを研究するS博士です。S博士は1984年頃は、牧吾郎よりちょっと年少で、まだ大学院生でした。いまは長く勤務した国立研究所を退職して、○○村に私立の研究所を作って運営しています。

林田博士の1984総括

林田生物物理研究所の林田信博士は、1984年映画では、三原山火口に誘導されて落ちてゆくゴジラ、爆発の炎で燃え上がる火口を何も言わず、じっと見つめていました。この時、どんなことを思ったのでしょうか。ゴジラを三原山へ誘導することを発案したのは、ほかならぬ林田博士です。「ゴジラの奴め、わしの思った通りになったわい」でしょうか? いえいえ、研究者は決してそんな発想はしないでしょうね。

ゴジラを三原山まで誘導することが可能とわかっているのだから、もっと早くやればよかったわい。そうすればゴジラに新宿で大暴れされることもなかったはずじゃ。スーパーXや住友ビルも破壊されずにすんだのぉ。秋山司令官らの勇敢なスーパーX搭乗員も失わずにすんだし、カドミウム弾を打ちまくって、東京都心部をカドミウム汚染させずにすんだことになる。ううむ、さっさと林田生物物理学研究所を新宿から三原山へ移転させ、現地で機器組立を行った方がよかったか... 

これは迂闊には口にできない深刻にして重大な内容です。そのため、黙って、じっとゴジラの最期を見つめていたのでしょうか。

牧吾郎の2021総括

牧吾郎は、1984年には新聞記者としてアクティブに活躍しています。漁船で生き残った奥村宏を救出するときにはショッキラスと対決しました。その後、林田生物物理研究所の活動とかかわりをもち、静岡の原子力施設が襲われる現場を目撃しました。ゴジラがやってきた新宿では高層ビルのなかにとじこめられ、奥村尚子と一緒に懸命に脱出を試みました。その新宿では、スーパーXがゴジラと果敢に戦っていました。でも、最後にはスーパーXは敗れ、無残にも破壊されてしまいます。

スーパーXって、ゴジラ迎撃だけのために考えられたかどうかはわからないけれど、日本がこんな技術を開発しているって、素晴らしいね。その話を聞いたとき、僕はとても日本という国が誇らしかったよ。僕は記者だから、いろいろな科学者に取材で会ったりことも多い。ゴジラが三原山の火口に沈んでから10年くらい経ってからのこと、強力だと思ったスーパーXにも心配事が結構あるとわかってきた。負けるのは確実だったようなので、ゴジラと対決するべきじゃなかったのかもしれない。孫子の兵法にも「多算勝、少算不勝」と書いてある。スーパーXの技術には最先端の材料工学の知識が必要なんじゃないか。そもそもスーパーXの外装がチタン合金ってどうよ? プラチナ採用の集積回路ってどうよ? 火力発電所とか、ジェットエンジンとかに使われている耐熱合金って、日本の技術が世界最高と言われ、それはまずNi基超合金だろ。なんでそれを使わないんだ? もっとも、それ以前の話として、ゴジラの熱線って何度なの?  1000℃とか、1500℃とかでもちょっと超えるくらいだったらいいけれど、耐熱合金で耐えようという発想じたい、どうよ? ゴジラの体長は約80mだから、むやみに低空飛行をしなければいいような気もするけれどなあ。さらに集積回路は耐熱云々より、耐放射線が何より問題なんじゃね? 放射線でコンピュータが使えなくなったら、一貫の終わりだよ。カドミウム弾については、ゴジラに効果があったみたいだから、まあよかったのかもだが、カドミウムって鉛と同じく結構やわらかいっていうか、機械的性質があまりよくないから、どうやって使ったんだろうね? 他の金属と混ぜて合金化して改質したのかな。

ベテランジャーナリスト、牧吾郎。さすがですね。よく調べていて感心します。言われる通り、これからのスーパーXは、日本の最先端の材料工学の知識と技術を駆使して開発していってほしいですね。ところで、漁船のなかで対決したショッキラスの件、あれは単にやっつけた、はいおしまいでいいの? だって、ゴジラに寄生していたのは、あの一匹という保証はないでしょ。まだいるかもしれない。そもそもの興味として、放射能で巨大化するって、本当なのか? 被ばくでDNAがダメージを受けて、遺伝情報を喪失して、細胞が損傷、あまりにひどければ死亡というのが普通でしょう。体が巨大化するっていうことは、それとはまったく違う仕組みがあるってことじゃないか。あれ? そう言えば、牧さん、身長異常に高くない? もしかして巨大化したか? 

奥村宏の2021総括

奥村宏は、1984年には、一生忘れられないような大変な経験をしています。何より漁船に乗って操業中に、覚醒したゴジラに出会いました。この時の唯一の生存者にして、ゴジラの第一発見者です。また救助に来た牧吾郎がショッキラスと対決しているときに、背後からショッキラスをやっつけ死に至らしめる活躍がありました。さらに、ゴジラが新宿で暴れた後、スーパーXのカドミウム弾で昏睡した頃、高層ビルにとじこめられている林田博士を自衛隊のヘリコプターから発見して救出しました。問題の超音波発信機も、この時持ち出すことに成功したのですから大きな功績です。さらに、三原山火口の爆薬の起爆スイッチを押したのも奥村宏です。ですから、この年のことは生涯忘れることはありません。

オレはあの時からずっと疑問に思っていたのだが、林田先生が作ったこの装置は本当に超音波発信機なのか? 第一、通信用の電波のパラボラアンテナと超音波発信機をつないでどうするのよ? 静岡の原子力施設の上空を飛んで行く鳥が超音波を出していたって、そもそも鳥が超音波なんか発生するか? 鳥の聴覚の周波数帯はもっと低いはずだから、超音波は全然関係なくないか。けれども、林田先生は、とにかくこれをヒントにして、ゴジラの本能に関わる部位とコミュニケーションができ、誘導できるのを発見したのだから、結果オーライではある。かなり重要な技術なのだが、もし特許出願とかしていたら、日本の特許庁の仕事のスピードからして、まったく間に合わなくなる。その前にゴジラが特許庁を破壊してしまいそうだから、とっさに超音波とか、ありえないことを三田村総理に提案しておくことにしたのかな。

さすがは、その当時の状況をよく知る奥村宏ならではの見解です。超音波は潜水艦のソナーとか、最近だと高速道路を走行する自動車の無人運転の技術で、距離を正確に測定する手段として、またその他にも非破壊検査の技術としてよく登場します。その当時だって、便利に利用していたでしょう。でも、三原山から東京都心にいるゴジラを誘導するのに大気中で超音波ということはないんじゃないかな? そうそう、もうちょっと語ってほしいことがある。ゴジラの第1発見者にして、フナムシが巨大化したショッキラスをやっつけた当事者、放射線の被ばくは大丈夫だったの? なに? 宇宙飛行士なみ? いまは研究者になっているのだから、ちゃんと数字を出して言ってよ。漁船で遭難している頃で、せいぜい1ミリシーベルト/日 くらい? なるほど、そうだったか。もう1つ、質問がありますね。林田先生の三原山火口の設定について。もっと遠いところを選ぶのはダメだったの? 地震とかで、ゴジラは、また復活してくるのでは? なに! 大きな声では言えないが、どこに埋めたところで、ゴジラは永遠に不滅で、必ず復活してくる? そうだとがわかっているので、とりあえず三原山で構わない。そうか、そういうことだったのか。

奥村尚子の2021総括

奥村尚子は、1984年には、新宿の高層ビルのなかにある林田生物物理学研究所でアルバイトで、林田先生の手伝いをしています。映画の描き方は、今とは異なる、当時の社会の雰囲気を反映して、か弱く控えめな女性で、また研究所の仕事も単純なお手伝いのような軽い扱いです。もちろん、真相はまったく違います。「門前の小僧習わぬ経を読む」と言いますが、有力科学者の研究室の空気を毎日吸って、その仕事の一端に巻き込まれるだけで、すっかり影響を受けます。いまだったら、もっと若手ホープとして注目を集めるところでしょう。いえいえ、別に何の事情も知らない世間の人たちからそんなことを言ってもらう必要なんてありません。黙って研究をしていれば、行きつくべきところに行きつきます。

林田先生は、ゴジラをやっつけたい、殺したいなどとはちっとも思っていなかったのじゃないかしら。わたしはすぐ近くにいて、ずっとそう感じていました。ゴジラって、一言で言えば、エネルギーでしょ。そのエネルギーをどう使うかっていう問題じゃないの? 東京で大暴れしてあらゆるものを破壊されるのは困るけれど、現に、林田先生はゴジラを誘導して三原山に連れてゆくことだってできた。だったら、別に火口に埋めたりしなくてもいい。いまのわたしがその当時の林田先生の立場ならば、ゴジラ発電所の建設を提案するわよ。

昭和と令和の違いを感じる、素晴らしい見解です。こんな風に語ってくれれば、林田博士も草葉の陰で大いに喜んでおられることでしょう。でも、いまやベテラン科学者なのですから、提案するからにはただの思いつきでは困ります。ゴジラの持つエネルギーをどのように利用するのか。現在の原子力発電では、ウランの核分裂反応の際に、before と after の質量の差が熱エネルギーとして外部に出ることを利用しています。ただの化学反応ではなく、質量からエネルギーを取り出すという E=mc2 の式の原理に基づくため、かなり大きなエネルギーを取り扱うことになります。その核分裂反応を誘発するには中性子を供給して吸収させることが効果的で、カドミウムのような中性子吸収物質をその経路に出入りさせることによって反応を制御します。しかし、現状の原子力発電は実用化されてだいぶ時間がたつにもかかわらず、ご存じの通り、いろいろ問題を抱えています。ゴジラ発電は、その断然上を行くって、日本のエネルギー問題は解決だって、自信をもって言い切ってほしいです。次回は、そのアイデアを語ってくださいね。

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#ゴジラ  

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