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「辺境の情報を見つけ出す」「メディアは見ない」嶋浩一郎さん、塩谷舞さんが語る”両極の情報収集”と”共通の文章テクニック” #編集視点の活かしかた

12月8日(木)、博報堂ケトル取締役の嶋浩一郎さん、文筆家の塩谷舞さん、noteプロデューサーの徳力基彦さんの3名による対談式オンラインイベントが配信されました。

この記事は配信イベントを振り返りながら、私の学びとなったものを備忘録としてアウトプットすることで、自分の理解度を高めていくことを目的としたものです。

今回のイベントで学びの核となったのは2点。
情報収集/アイデアの生み出し方」「具体と抽象を行き来するトレーニング」です。


今回のゲストである2人は、情報収集・アイデアの生み出し方が両極にあるアプローチをとっていたのが印象的でした。

嶋さんは、情報収集のためにあらゆる媒体をインプットする方。
新聞、雑誌、テレビ、Webメディアなど幅広いジャンルをチェックしていくそうです。
その中で「辺境の情報("まだ分類されていないモノ"を指す嶋さんの言葉)」を分類・言語化することが、新しい視点・アイデアにつながっていくと語っていました。

一方で、塩谷さんはあえてメディアを通じた情報を意識的に制限されているとのこと。
メディアというフィルターを通している以上、(発信者にとっては無意識であれ)何らかの意図が入り込んでしまうことを避けているのだとか。
自身をカレー屋さんに例えて「お店を良くしていきたいのであれば、他のカレー屋の常連になるのではなく、自分が使っている肉や野菜などの原材料を調査しますよね。編集もそれと同じだと思います」と語っており、例え話の上手さに嶋さんも徳力さんも唸っていました。

自分の芯がぶれないようにためにそうしていると塩谷さんは言っていましたが、なるべく一次情報に触れることで情報やアイデアの本質を高めていくのだと私は解釈しています。
あくまでも「自分」を通じて世界を覗くことで、身の回りの出来事から経済情勢の話へ発展することもできるし、逆に世界情勢も自分事のように考えられるということなんですね。

同じ”編集者”であるのに「あらゆる情報を飲み込む⇔情報をそぎ落とす」「他者⇔自分」とアプローチの方向が真逆なんですよね。
どっちが良い悪いみたいな二元論的な話ではなく、自分のスタイルにあった無理のない情報の接し方があるということが個人的には大きな学びとなりました。


「具体と抽象を行き来するトレーニング」とは、すごく嚙み砕いた言い方をすれば「伝わりやすい文章の書き方」です。

事実だけの文章はつまらないし、ずっと自分語りの文章は見てて飽きる。
そうならないための方法として、嶋さんも塩谷さんも同様のテクニックを述べており、それが「具体と抽象を行き来すること

「『名刺の作成にかかる金額がコロナ前と比べて跳ね上がった』という私自身の体験をもとに、そこから印刷業界の事情や環境問題へと視点を変えていく。」と語るのは塩谷さん。
視点が同じままだと単調な文章になって読者は離脱してしまう。次元の違う話をつなげることで、物事を抽象化させやすいのだと言います。

「YouTuberが小学生のなりたい職業No.1であるのはなぜかと考えると、大人になっても『エモい』を堪能している姿がウケているのではないかという抽象化にたどり着く」と話すのは嶋さん。
「事実→抽象」の方向へ昇華できるようになることで、逆に「抽象→具体」の方向でも文章を生み出せるようになり、企画・コピーが上手になっていくのだと説明されていました。


ここまで話を聞いていて「具体と抽象を行き来するテクニックは理解できましたけど、お2人はそれをどうやって身に着けたんですか」と深堀りしてくれた徳力さん。
参加者として助かります。私もそう思ってました。
どうやら配信を視聴していた他の参加者も同じことを感じていたようで、質疑応答の中でその訓練方法について改めて質問が投げかけられます。
この質問に対する回答も、嶋さんと塩谷さんで対称的なものが飛び出してきました。


先に回答した塩谷さんは「記事のお題に合わせて感情を乗せて執筆するために、自分の感情をメモにストックしておく」と言います。
「調べればわかること(データや文献など)はいつでもアクセスできるが、自分の感情はどこからもアクセスできない閃きは自分から生まれてこない」とし、自分の感情が揺れ動いたとき(塩谷さん曰く「バイブスがアガったとき」)の様子をひたすらiPhoneのメモ帳の同じページに書き連ねているとのこと。
これはどちらかというと具体の記述を伸ばす訓練ですね。

一方で、「すべての事象に対してなんで?を繰り返す」と語るのは嶋さん。
仮説でもいい、間違ってもいいから自分の中で言語化を繰り返すことで、抽象化して考える癖をつけることが訓練につながると話しています。
「YouTubeが人気だからウチの会社もYouTubeやろう、というのは”なんで?”の過程を放棄している」と、多くの広報担当者にとって耳が痛いような話を交えながら言語化・抽象化の大切さを説明してくれていました。


今回の配信イベントはYouTubeにアーカイブが残っているので、リアルタイムで見れなかった方はぜひご覧になることをおすすめします。
実は私もリアタイできなかったので、アーカイブで視聴しました。

「#編集視点の活かしかた」のハッシュタグでツイート検索をすると、他の参加者の意見が見れてより深い知見が得られるかもしれません。ぜひ覗いてみてくださいね。

嶋浩一郎さん
株式会社博報堂 執行役員、株式会社博報堂ケトル 取締役・クリエイティブディレクター
note:https://note.com/kettle_shima/
Twitter:https://twitter.com/shimakoichiro

塩谷舞さん
文筆家
note:https://note.com/ciotan/
Twitter:https://twitter.com/ciotan

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