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他人の言葉でショートショートを書く #2

はじめに

外出自粛で暇すぎて、このままだとなんかどうにかなりそうだなって唐突に思い、友人から貰ったキーワードでショートショートを書いてみます。

そもそもショートショートを知らない知能レベル3のお猿さんと比べた時には幾分かサルの方が賢いのではないかと疑われているでろうあなたのために一応説明すると…

主に、短編小説より短い小説のことを指す。特に決まりがある訳ではないがアイディア重視ではっきりとオチをつけたものが多い。代表的作家は日本では星新一、海外ではフレドリック・ブラウンなど。(ニコニコ大百科より)

「・・・」

僕も実はショートショートの意味を初めて知りました。今回はTwitterで第1回の記事を読んだフォロワーさんからもらったキーワードで書いていきます。

ラジオ / 車 / 仕事 / 海外 / 老後 / 移住 /  銃 / 
睡眠不足 / バイク /  中年

今回も特にショートショートを書くことを前提とせず、言葉をくださった方の現状や将来の日常にかかわる言葉を頂きました。それではいざ。

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ショートショート「身から出た錆」

『Don't you work?』

庭で草の手入れをしていたら、近所のご婦人が話しかけてきた。バージニア州のこの辺りに移住して間もない自分が物珍しく、老後に行えるような生活を中年の働き盛りの私が平日からしている光景が珍しかったのだろう。妻の出産が近く産休中だと伝えるとご婦人は納得して笑って去った。

こんな生活をする前、私は市民にも使える簡易タイプのハンドガンを発売し、莫大な財を成した。睡眠不足になるほど仕事にのめりこみ、海外メディアからは気づけば"King Gun"と呼ばれていた。若いころは大層遊び、仕事が軌道にのったタイミングで世界一素晴らしい妻と出会い、新たな命を2つ授かった。

そこから私の人生は一変した。私は妻たちに不幸な思いをさせまいと、趣味のバイクは死亡リスクが高いという理由で辞めた。仕事も後身たちに任せ、家庭に中心を移した。

その日はホームパーティーを行う予定だった。4人で近所のスーパーへと向かう。元気に前を歩きやっと頼もしくなってきた娘を、妻たちと手をつなぎ見守る。

赤信号にひっかかる。通り過ぎるを目で追っていた娘が疲れたのか抱っこをせがむ。妻に目配せすると彼女はそっと手を離した。しゃがんで娘を抱き上げようとしたその瞬間…

パァン・・・

・・・ドゴ

娘を抱きかかえたまま、強張った私の視界に赤い液体が映り込み、妻が倒れこんだ。胸からドクドクと流れ出る血は、排水溝にやけにゆったりと吸い込まれていく。

「ざまぁ、みやがれ」

悲鳴が連鎖していく中で、後ろからつぶやくほどの声が聞こえた。瞬間、もう一発の破裂音。娘の「いたいよ、お父さん」という声でやっと身体に力が入る。恐る恐る振り返ると、10代ほどの男の子が倒れていた。

手にはうちの製品を握っていた。私の手から命が2つこぼれていった。

あとがき

いただいた言葉をボーっと眺めていた時に、ふと目に付いたのが「銃」でした。その言葉がいまだに辞書に残っており、最新版のモデルが発売されている。車やバイクはみんなが持っているものなのに、銃の所持は認められていない。ただそれって日本に限った話ですよね。アメリカでは今でも銃を護身のために持っている人たちがいる。そしてその銃は安価なものだと大体2万円から購入出来るそうで、日本だとゲーム機を買うくらいの金額になり、かなり敷居が低い。
今回はもしもアメリカで一番初めに庶民でも持てるような銃を生み出した人がいるならば、その人はどういった日常を送っているのだろうと思って書きました。自分の商品が人の命を奪っているとなると、それは相当の恨みを寄せられているのではないかと。でも銃を持っているおかげで銃を突き付けられたときに、身を守ることができたと感謝もされる。きわめて難しい立場にいるんじゃないかなと。記述で出てきたバージニア州は2007年に銃乱射事件が起きた州で、銃の現代史において印象深い地域です。日本では禁止されているものが海外ではOKだったりするのですから、文化とは大変興味深く、それぞれの人種で未だにいがみ合っているのもなんだか頷ける気がします。


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