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本棚をつくった話


数年前、今住んでいるアパートに引っ越したタイミングで自宅に本棚をつくった。設計したというほどでもないのだけれど、簡単な図面を書いて家具職人に製作してもらった。既製品の家具にはないような構造のものができたのと、製作してから数年経ち使用していく中でいくつかの知見が得られたので noteに書いておくことにする。

制作した本棚

既製家具の問題点

・異なる大きさの本の収納は非効率
自宅に所有している本は、漫画・雑誌・文庫・専門書など様々で、奥行や高さはシリーズものではない限り不揃いとなる。既製品の家具では本の種類に応じた棚の大きさが決められ(漫画なら漫画専用の本棚)、単一の種類の本を収納するには効率的だが、種類や大きさが異なれば効率的な収納は困難になる。例えば雑誌を収納する棚に文庫本を収納などすると上部に無駄なスペースができてくるように。

生じる無駄なスペース

・ボックス型の大きな本棚と無限に増殖する本
漫画を集めはじめると全巻揃えることになり多くのスペースが必要だし、一冊読むとそこから派生して興味が広がり無限に読みたい本が泡のように増殖していくこともある。本そのものは小さいが何冊も集合することでスペースを圧迫するため、新たに本棚を追加で購入することになる。
既製品の本棚は一般的に収納する本の大きさによって棚の奥行・高さが規格化され一定のリズムで反復し全体を構成している。棚が均一にタテヨコ整列することで大きなボックス状の形態となる。ボックス状の規格化された本棚と、日々増殖する本との関係性に既製品の本棚の用途と形状がマッチしていないように感じた。(本棚に合わせて本を収納するというより、本に合わせて本棚が形状を変化させられればいいなというのが理想。)
また、アパートで生活している以上将来引っ越しも考えられることから、既製品の大きなボックス状の自分の身長以上ある高さの本棚を狭いアパートから搬出するのも一苦労だ。

既製品の漫画専用本棚

つくった本棚について

本の収納スペースが足りなくなった時に大きなボックスを購入して横に並べる以外にも、大きさの異なる本の形状への対応や限られた部屋の大きさの中で足りない収納量に対して本棚を増設できるなど目的に応じた本棚のデザインできないかと考えた。
この本棚は本を置くための棚板と棚板を側面で固定する側板、本棚の上下で仮固定するための金物で作られている。

・側板の彫られた溝
本の大きさを基準にして等間隔に側板に溝を掘った。この溝に棚板を差し込むことで収納スペースが生まれる。溝2段分を利用すると漫画や文庫サイズなどの本がちょうど納まり、溝3段分利用すると雑誌や大型本が納まるように溝のピッチの寸法を決めた。

溝2段分に納まった本
溝3段分に納まった雑誌や大型本

この棚板は溝に差し込んであるだけで、簡単に棚の位置の変えられるようになっており、本の整理や並べ替えなど対応できる可変的な構造になっている。

・可変的な一体構造
本が増えた時、既製品の家具を購入するとどうしても「2つの本棚が並んだ」状態になってしまう。
見栄え的にも一体的に増設できないかと考えた。
この本棚は一体化した家具として増設可能な構造になっている。一番上と下の2箇所で棚板と側板は仮固定されている。「仮」というのはドライバーで締め付けると堅固に固定され、緩めるとそれぞれの部材にバラす事ができる金物を採用した。

金物による仮固定

ドライバーがあれば素人でも簡単に増設・解体可能な構造になっている。新規増設時にも2つの本棚が並んだ状態ではなく一体の本棚として利用できデザイン的にもスッキリとした見栄えとなる。
一体的に接続できるとともに容易に解体可能であるため、引っ越し時にも棚板、側板をそれぞれパーツにバラし、狭いアパートからの搬出も容易で、かつボックス状の形態から板状の部材にバラす事で、女性や子供でも簡単に持ち運べるのだ。

・本棚以外の使い道
現在は棚板を全て同じ幅・奥行で製作しているが、幅・奥行を変化させることで、本棚以外の用途とし利用可能だ。幅を広くしTVを置けばTV台として機能するし、奥行を広くしパソコンを置けばテーブルとしても機能されることも可能だ。可変的な構造によって多様な利用目的が想定できる。現状は本棚として機能させているので「本棚」と呼んでいるが機能の拡張を秘めているため呼び方を改めたいと思っている。

数年使用してみて

2024年1月1日の能登半島地震で、わたしのアパートも大きく揺れ、大きな被害はなかったものの本棚が横に大きく揺れ固定していた金物が破損した。(揺れの方向が違っていたら本棚毎崩壊し下敷きになっていた可能性もある)

地震で傾いた本棚を修理中の状態

・可変的で解体・増設可能を目的にデザインしたが、耐震対策ができていなかった。耐震を考慮すると建物に固定する事になるので、アパートでの仕様には向かず、可変的な使用も難しい。
耐震性と可変性を合わせ持つ構造が課題となった。

・本棚の材料はコストパフォーマンス重視からゴムの木の集成材とした。時間の経過とともに木の樹脂なのか触ると表面がベタつきはじめた。触ると少し気持ち悪さはあるものの、習慣的に本棚を撫で回すことはないので、あまり気にしてない。

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