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第3回公社流体力学賞(という名前の観劇年間ベスト5)


個人的な観劇年間ベスト5を公社流体力学相と名付け勝手に差し上げています。
過去はコレ。


ゴキブリコンビナート、東京にこにこちゃんに続く第3回受賞作は何になるのか。
さて、去年は配信演劇は演劇じゃないという考えの持ち主だったので配信で観た演劇は入れてなかった。でも、今年はそうは言ってもおらんやろという状況になったのでいれる。さて、5作品の登場だ。
それぞれ、観た当時に書いた感想を貼り付けてあとはちょこちょこ。

① コンプソンズ『何を見ても何かを思い出すと思う』(配信で観た)
脚本・演出/金子鈴幸 会場/「劇」小劇場(4月7日~4月11日)

記憶を失った男女。会話もかみ合わない。そのうち物語は過去が入り乱れていき俳優として上手く行かない男と苦悩する周囲が描かれる。

上で書いたが編集が強くて演劇の配信というより映像作品としての色合いが強く入れるかどうか迷ったけれど、今年を代表する演劇ということでは外すわけにはいかんやろ。岸田賞候補有力。


② 伏木啓『The Other Side - Sep. 2021』(配信で観た)
演出・構成・映像/伏木啓 会場/京都芸術センター講堂(9月10日~9月12日)

とある女性の父親との思い出やたわいもない無駄話が断片となって積み重なっていく。

最初は若手演出家コンクールで観たので、大体の感想は以下のリンクに。

しかし、そのあと京都芸術センターで行われた公演の方が空間が広い。それにより同じ作品でも空間芸術としての深みが増したためこっちの方を候補にした。


③ 勅使川原三郎、佐東利穂子 アップデイトダンスNo.88「アダージョ」
演出/勅使川原三郎 会場/カラス・アパラタスB2ホール(11月 13日~22日)

毎月新作発表しているダンスの大御所。ようやく見れて大感動。交互に踊るだけのシンプルな構造に美が宿る。


④ 風姿花伝プロデュース『ダウト~疑いをめぐる寓話~』
演出・翻訳/小川絵梨子 脚本/ジョン・パトリック・シャンリィ 会場:シアター風姿花伝(11月29日~12月19日)

今更説明の必要がない売れっ子演出家、小川絵梨子が名作に挑んだ作品。圧倒的な演技力を持つ役者をまとめる演出力。

⑤ 幻灯劇場 『1→1』
振付/本城裕哉・村上亮太郎 会場/東京芸術劇場 アトリエイースト(12月24日~26日)

観客が見たい時に見れる演劇というのは私の理想像の一つなのだが、その理想を完璧な形で上演したのがこの作品。なお、ノーマル・バッド・全クリを観たと書いたがまだ見れてないエンディングがあったらしくもし再演があったらまた行きたい。


という5作品。

今年は難しい。まずノミネート時点で最後の一枠を4つくらいが争っていて。そこから絞っても5作どれも好きな作品で、全部に賞をあげたい。でもお手々繋いで一等賞は嫌いなのでここから一番を選ぶ。過去のやつを読んだことある人だったら、賞とは無縁の作品に賞を上げるコンセプトのはずなのに勅使川原とか小川絵梨子とか既に評価の固まってる人入れてるけど方向性変えた?と思うかもしれないが好きな作品を並べただけなんで別にいい。

さて、受賞作を書く前に番外編として短編賞について書こう。短編演劇の年間ベストなんて誰も書いてないし、今年は2年ぶりにちゃんとショーケースにいくつか行けたから。こっちはカウントダウン式に

5位 コトリ会議『おみかんの明かり』(@芸劇eyes番外編vol.3.『もしもしこちら弱いい派 ─かそけき声を聴くために─』)
亡くなった人に会える湖、近づこうとした人を取り締まる女性を描いた作品。幻想的な雰囲気から突如コメディとなる。しかし根源にあるのは、あの人にもう1度会いたいという心理。

4位 やみ・あがりシアター『なかよしななくみ!』(@池袋ポップアップ劇場Vol.16)
友達だけど自分は陰キャだから陽キャのあなたと友達を辞める、という発言から始まるドタバタ劇。2人大量の役を演じるが、クラスTシャツを着替えると役が変わる。何十回も必死で着替える役者の運動量が笑いを呼ぶ。


3位 中野成樹+フランケンズ 『シャア・アズナブル(架空の人物)』(@Audi-torium vol.1きれいに晴れわたった、しんとした朝)
家賃の滞納をしている男性のもとへ行くとその男は自分をシャア・アズナブルで森高千里と付き合っていたと言い出す。テネシー・ウィリアムズ「しらみとり婦人」を原作にした、誤意訳シリーズ最新作。妄想に閉じこもる人間をスチャダラパーが鳴り響くナンセンス芝居で描く。


2位 劇団「地蔵中毒」『収録』(@地蔵中毒のコント菩薩vol.1「立ち漕ぎマリリン・モンロー」)
男女数名が監禁されている。彼らはスピッツのロビンソンにあるルーララの部分が完璧にハモるまで強制されていた。バカデスゲーム。やっていることはどこまでもしょうもないのに、必死の形相でやっているので皿に笑いが増幅。


1位 幻灯劇場『1→1』
 年間ベスト5に入れる位なんだからそりゃ短編ランキングでもベストに来るよ。お化け屋敷みたいな形式だから正式な短編ってわけじゃないけれど、1回10分くらいなんだから短編でいいでしょ。


意図したわけじゃないんだけどショーケースとかイベントが5つどれもかぶらなかったのは、それだけ上質なイベントがたくさんあったということでいい年だったなぁと。ダンスと比べて演劇はショーケースが少ない気がするのだが、それぞれの危機感を持って開催されたような気がする。

さて、上記の年間ベストとは別に課外活動の演劇クロスレビューという企画で若手の劇団について書いたのでよろしくね。


と、寄り道してようやく本筋である。素晴らしい5作品。頭一つ抜け出しているという感じではなく、それぞれタイプの違う作品だけどどれも同じ水準の傑作なのでどれも悩ましい。青春エンタメか、空間芸術か、神がかかったダンスか、傑作翻訳劇か、リアルアクションゲームか。


色々悩んだが、エイやと選んだ今年の第3回公社流体力学賞は!!!!!





幻灯劇場『1→1』


です。悩んで、最終的には伏木と幻灯交互に書いては直して書いては直して結果、今後最も影響を受けそうなのはコレだろうと決めました。本公演じゃない、劇団にとって課外活動のようなもので本来そう言う劇団じゃない異色な物ですが、公社流体力学賞は所詮ただのお遊びなので俺があげたいものに上げます。

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