ファッション市場規模でも中国筆頭にアジアがのし上がってくる?市場が縮小する日本で考える「世界で戦える日本の若手ファッションブランドの育成」とは

いままでtumblr中心に文章を綴っていましたが、そろそろ別のジャンルの人も入りやすい場所で書くべきかなと(自分のリサーチ範囲や思考範囲を広めなければいけないという自戒も込めて)思い、noteに移行します。

気づいたら毎月、月末になり1年が終わるまでのカウントダウンに焦る日々ですが、今月初めに香港へ一週間行ってきました。初香港にして、出発4日目前くらいに「行ってみる?」と突然言われ向かった出張でしたが、最終的に行ってとても良かったと感じる旅だったことは間違いない。(食べ物は聞いていた通りに絶品ばかり)

今回は経産省のプロジェクトの一環として、「日本のファッションブランドが香港で展示を行ったら、どのくらいのリアクションがあるのか?」「香港の業界人は日本のファッション業界をどのように感じているのか?」と言ったような、つまるところ香港から見た日本のブランドや業界についてのリサーチを行うために開かれた展示会でした。(私は展示会場での英語通訳係として飛んで行きました)パリコレと時期が被ってしまい、中々バイヤーに遭遇できず終わってしまいましたが、(ミーハー心をくすぐるJOYCEのオフィスへ訪問や笑)現地で感じたり知れたことは多々。

乱文承知ですが前半では、まず現地で出会った経産省さんが考える「世界で戦える日本のファッションブランドを育てる」施策やリサーチ内容について。

後半は、何故パリではなく香港で展示会を開催?5年後にはファッション市場規模で1位を取る中国?!について。(所々香港の風景写真を混ぜながら‥lanecrawfordの圧倒的な建物の高さをご覧あれ‥)


経産省が考える「世界で戦える日本のファッションブランドを育てるには?」

まず前述した通り、経産省のサポートなしでは開催されなかった今回の展示会。展示会に限らず、普段から経産省のクリエイティブ産業課がファッション、デザイン、観光サービス事業に関しては管轄しているそうです。(アートは管轄外らしい)主な事業内容としては、例えば私たちに馴染みがあるクールジャパンを筆頭に、様々なジャンルのプロジェクトに予算含めサポートを行っているわけです。

とはいえ、経産省のトップから支援金を受け、各ジャンルで何か大きなプロジェクトを実行するのはそう容易くはないので、色々と証拠を集めなければいけないわけです。 事例や証拠を集め問題点を見つけ、投資するメリットも伝え、業界にも国にも相乗効果が生まれるんだよ! ということを資料で提出して承諾を得るというフローで頑張って実行に移しているそうです。(普段から企業同士でプロジェクトを行う際もこのようなプレゼンテーションは行うと思うのですが、規模が明らかに経産省の方が大きい)

このようなリサーチは経産省が現場で動くというより、外資系企業が代行しているそうで、過去にもファッション関連でこちらのレポートを公開してます。現在は「世界で戦える日本の若手デザイナーを育成/輩出するには?」という議題のもと、今回の展示会や業界人10名で計3回の勉強会開催など色々とリサーチを行っているそう。(そのリサーチ結果は、ローランドベルガーさんのウェブサイトで公開予定らしいので楽しみ)

経産省や外資系企業と縁もゆかりもない場所で生きてきたので、「まさか経産省でファッションを管轄をしてる部署があるとは!というか、若手デザイナー輩出についても考えてるなんて!」と何故か異国の地、香港で両日本企業から話を聞いてびっくり。


では、具体的には彼らは若手育成/輩出について考える時に何を参考にしたり、どのようなブランドを見ているのか。

若手ブランドの支援の参考に見ているのは、LVMH prize。他の若手支援を差し置いて、LVMH prizeを参考にしているのは何故‥と思ったけれど、色々話を聞く中で日本でそのようなプロジェクトを行おうとしても、審査員になり得る人材の不在を問題視していたので、LVMH prizeのあの不老不死カールラガーフェルドを率いたレジェンド集団は輝いて見えるのかなと感じました。もちろん成功し始めているブランドが集まってきているという表面的な良さも含め。あとは、市場の中で現在レディスブランドが規模を拡大している動向を主催者が捉え、レディスブランドを中心に輩出している/投資を的確に当てている点も気になってるのかも‥?

ブランドは、海外で活躍してるブランド勢、東コレ参加ブランドは知っていて、その境界線を越えた野生の若手ブランドは知らない‥‥とここに来て国内での東コレのメジャーさを痛感‥。ブランドに詳しくない人が、最初からブランドの歴史も調べ、変なサブカルブランド含め野生の若手ブランドを見る必要はないかもしれないけど、なんか不思議な境界線の中でリサーチしてるなあと思ったり。(もちろん部署の位によって経歴長い人はブランドに詳しいのですが、会社内部の情報はオフレコでお願いします)


個人的には、LVMH prizeは無いよりある方が良いけど参考にすべきだとは思わないんですね。何故かというと、資金援助と1年間のサポートのみだから。それで満足しないのかい!という話ではなく、

先日のコロモザでも討論されていた 「若手デザイナーを育成するには、1回の資金援助だけだと本人が使い方を分かってないから、生地代やショー代に当ててしまって服の完成度は上がっても、次回支援なしで製作する際に根本的なブランド継続するノウハウは学べていない」「ロンドンのFashion East, NEWGENのような1つのブランドを継続的に育成していくことに意味がある」「主催者側がデザイナーと引き合わせるべき人をコネクションしている」「川久保玲の成功の陰にはエイドリアンの支えがある」と言ったような話に尽きると思うんです。

今まで人気を得て順調に成功の道を開き続けているブランドも、ノウハウ勝ちしてると思うんです。例えばJ.W.AndersonはFashionEastに複数回参加して、人気が出始めて体制を整える時、まず最初にSales managerをチームに引き入れています。BoF "Why You Shouldn't Launch a Label Straight Out of School"の記事でもブランド”AMI”が成功するまでの苦難を語っているわけですが、最終的に

After another year designing menswear at Marc Jacobs, AMI was born. Mattiussi recalls: “I said, ‘Okay, I think I have understood the most important things: you have to have a team, you can’t work alone. You really have to have investment, so you have to think about a business plan. You have to think about fabrics and production, understand where your products are going to be made. You have to think about where to market and sell the collections,’” he says. Things were very different second time around. AMI launched with a team of three, and Mattiussi quickly hired a sales manager and production manager. He took on PR firm KCD. And he found investment (AMI declined to comment on its investment). Today, AMI has a team of 50.

と語っていて、やはりデザイナーだけ居てデザイナーがデザインも経営もやるなんてかなりタフなわけです。(学校でも縫製とデザインの勉強はしても経営の勉強は行ってないだろうし)などの思いや問題点、改善点は一応リサーチ側には伝えたのですが、伝わっているだろうか‥

ここで再度どうやらこうやら言ってもリサーチ結果には反映されないので、口だけ小娘ですが‥‥世界で戦える若手ブランドを育てるには、リサーチの一環として1回ぽっきりの支援を行うのではなく継続して行うことが大事であり、それもお金を与え続ける資金援助ではなくノウハウと人脈が広がるようなプロジェクトであるべきだと思うんですね。あとは、学生含め業界内で経営、マーケティングもファッションもわかる人材を増やしたり(アップルのように他の業界から経営に強い人を呼ぶでもいいと思うんですけど)、そういう人材がお役所や数字に強いメンツと交渉したり。兎にも角にもブランドを継続するには、やはりシグニチャーアイテム含めた強いブランディング、アイテムは勿論のこと良いチームと資金が必要だと思うんです。改めて書きますけど!的な内容ですが。(ということで最近経営、数字に強くなるためにシコシコと勉強しているので頑張ります)


さて、ここで一度区切って「そもそもパリとかではなく香港で展示会?アジアに市場は集まってきている?」の話を後半はしていきます。(このままノンストップで書くのはシンドイので一旦休憩)

香港のファッション事情

そもそも今回パリではなく香港でファッションブランドの展示会を行う所以について飛行機の中でアナと雪の女王を初めて見ながら考えていたわけです。というのも、香港は今アート業界では注目を集めていると聞いていたけれど、ファッションについてはセレクトショップ三大巨頭JOYCE, I.T., Lamecrowford有名で香港人のデザイナーもフォトグラファーも中々見たことがないから。

日本より世界的に権力のあるバイヤー陣が揃っている環境は、展示会にとって得な話だが、果たして香港内のファッションシーンは盛り上がっているのか?そして、私が香港にいく数週間前には上司がジェトロ主催のジャカルタイベントにブースを出して参加していたし、アジアのファッションシーンは変わりつつあるのかな?と気づき始めていたりも。

まず香港内のファッションシーンと中国との関係性について述べたのちに、視野を広くしてアジア圏のファッション市場の変化について話していきます。

香港は文字通り「香る港」と貿易が盛んであり、いまやアメリカと方を並べて経済成長を遂げる中国との距離も近い。なぜ貿易が盛んなのか、現地の人に聞いてみると「自由港だから」という返答が次々に。他国の製品を輸入する際に関税がかからない港だなんて日本では信じられないけれど、いま世界で唯一香港とシンガポールが自由港として残っているそう。アヘン戦争や自由港として紡いできた歴史から香港の土地柄も、様々な国のものを受け入れ混在していくプラットフォームのような気質を持っている。

そのため、衣類や食品、そしてアート作品においても輸入しやすい。なだれ込むアート作品がたどり着くような有名なギャラリーがいくつか存在する他、近年ではアートフェアも注目を集めている。ファッションにしても同様で、何故セレクトショップが権力を持っているかというと、前述したもともとの自由港であること、プラットフォーム気質が合っているからだと思う。輸入する際の税を負担する必要もなければ、香港周辺の富裕層が買いに来る確信もある。

また香港コンベンション&エキシビジョンセンター−日本で言う所のビックサイト−(下記の画像左の屋根付き建物。というかこの夜景は香港観光名物の1つですが 強すぎ‥と圧巻された) では「香港ファッションウィーク」が開催されている。

日本の東コレとは異なり、香港のファッションウィークはもちろんショーやブランド展示会も行われるが、それよりもODMや生地会社の出展も多いそう。世界中から、そしていまや日本製と変わりのない縫製技術を持ち始めているお隣中国からも多くのバイヤーが訪れる。

しかし逆も然りで、様々な国の文化が入ってくる代わりに自国から文化やアーティストが生まれにくい現状もある。現地で流れている音楽は大体ウエスタンミュージックであり、クラブも同じ状況だった。というか、クラブがある地域一帯は白人や外資系企業オフィスが連ねる六本木のような街で、まだイギリス植民地であった歴史が残るレンガの建物も露骨に残っていて一人虚しくなりました。(ちなみに今でも市内のバスはイギリスのアイコンでもある2階建バスで、地下鉄も似た内装)

テレビチャンネルも広東語の番組は2チャンネルしかないらしく、他は全て英語でBBCも勿論含まれている。と、かなり他のカルチャーが流れ込み植民地の歴史が今なお残っていました。

色々とファッション以外の話も盛り込んでしまったけど、要するに香港は自由港を武器に様々な国の原産品などを受け止める場所として最適なんだと肌で感じました。JOYCEなど限られたコミュニティはその力を存分に発揮し、アジアの中でもブランド側から見れば関税がかからず中国とのアクセスが頻繁にある場所として重宝されるのも納得。逆に一般的な目線から見ると、日本と似て戦後フラットになった土壌に様々な文化がなだれ込み輸出できるような強いオリジナルのコンテンツは生まれにくい。ファッションもストリートを見渡せばファストファッションのお店かメゾンの路面店が並び、中間層のブランドは見受けられない。

中間層が居ないなら、今や多過ぎるというほどに増えた日本の中間層ブランドは役目がないのか‥?というとそうでもない。逆に富裕層がいる限り中間層−現地では少し高めなブランドは需要があると思う。但しアジア、親日国という一括りでまとめても相手先の国の気質、文化、好きなテイストなどを肌で感じない限り、日本で売れたものも売れないこともあるように思える。(極端だけどユニクロのバングラディッシュ出店も現地の声を聞かないまま一発目はレディース売上が好調でなかったり、シンガポール伊勢丹も現地では盛り上がってないそう。そして大体ユニクロのようなグローバルな視点がない企業は、都心部の大型店舗に優秀な人材を集めて、海外は余り物を派遣する)

そろそろ香港についても、上記で述べたことが基本的な話なのでアジアの視点で進めようと思うけど、その前に少し余談。

滞在期間中は、ほとんど展示会会場に居たから隙間時間でショップ巡りなどをして。I.T.以外のlanecrawford, JOYCEだけは見てきたんだけど、JOYCEがダントツでファッションに情熱をかけているような気がしました。1、2枚目lanecrawford‥‥Times Squareというショッピングモールの一角に入店しているのだけど、ビル全体とにかくフロアが高い‥ハリーポッターみたいに建物を横切るエレベーターある‥。

そして、こちらlanecrawfordのフロア。伊勢丹2階フロアの半分くらいの面積かな、それを独り占め。質素なディスプレイの左右に広がるブランドたちは、nicopanda、selfportrait、Helen Leeなど日本ではあまりお目にかかれないブランドがあったり、日本ブランドだと王道ブランドはもちろんのことsacai,toga,facetasmまで取り揃えてありました。もちろんsacaiがラック数多め。

JOYCEは現在3店舗くらい運営しているけど、そのうちの路面本店に行ってみました。M&Sなど並ぶ変哲もない道に急に現れる、いきなりのジャングル感‥1階がウィメンズとコスメ、2階がメンズとジュエリー。あまりにも店員がたくさん居たので、中は写真をパシャパシャ撮れなかったですが、ラックやシューズを置くプロップがヴィトンのヴィンテージだったり拘りを細部から感じました。海外王道ブランドはもちろんのこと、vetementsも、日本ブランドはfacetasmを抜いたlanecrawfordと大体同じ並び。undercoverも1ラックのみでしたが、置いてあったり。

と、改めてJOYCEに置いてもらうのいいなあと(掛け率や取引の内容は知らないですが)胸が高まり、I.T.はまあいいかと行かなかったわけです。

日本のブランドにとって、I.T.も重要だと思うのですが現地人からすれば、かなりブランドの入れ替わりが激しかったり自社ブランドがネックだったりするらしく、彼らからJOYCE程のブランドへの愛情は感じられないそうです。なので、極端な言い方だけど、ブランドの個性が骨太に確立してないと一気にかき消されるし、ある意味弱いブランドの墓場にもなり得るそう‥怖い


という余談を挟みましたが、ここからもうちょっとワイドに考えてアジアの市場について。

中国、インド、インドネシア、シンガポールの時代








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