見出し画像

Workshopの発達

「発達段階を何に活用できるのか」とよく聞かれますが、メタ理論は概念に近いため、加工(何かに適用)しなければ使い物になりません。

今回はWorkshopを発達段階的に捉えて、独断の偏見で感想を書き連ねます。具体的に描いたがゆえにツッコミどころ満載ですが、ご容赦ください。

発達段階的に考える

ヒトの成長は連続体であり、明確なラインで変化するわけではなく、グラデーション状に徐々に変わっていきます。その瞬間は変化に気づかず、後に振り返って気づいていきます。

この変化のパターンを概念化していくと、ヒトの成長だけでなく、集団特性、歴史、環境など、ヒトの関わる様々な物事が似たような仕組みで動いていくことがわかります。

そのような変化を適当な段階(レベル)で区切って捉えることで、自らの立ち位置、通ってきた道、そして次の発達がみえるようになります。とある人は発達段階を「地図」に例えますが、確かに手に入るのは「地図」のみであり、それをどのように使うかはその人次第となります。それこそがメタ理論たる所以でしょう。

※自身のレベルを確認するときには、バイアスにお気をつけください※
自らを評価する(振り返る)ときは、過去と照らし合わせるために未来はみえていません。つまり、自分自身の今の状況を最高峰だと思い込んでしまいがちとなります。また、そのレベルにいないにもかかわらず、自らはより発達していると勘違いすることも多々あります。

内包されたレベルは状況に応じて発現します。
変化する状況に合わせてレベル間を往還するため、「この瞬間はこのレベルだった」という評価は下せるかもしれませんが、「私は今このレベルである」という観点は普通ではもつことができません。

そもそも「自分がどこに位置するか気になる」ということ自体が低次レベルの発現ですが、それ自体は悪いことではなく当たり前のことです。

発達段階の基本ですが、低次レベルは程度が低いのではなく、高次レベルを支える土台(基礎)です。基礎がなければ応用はありませんし、理解できないレベルがあるということは「そのレベルに届くための土台ができていない」ということでもあります。

Workshopで考える

早速、Workshopを区分けしてみましょう。
研修や授業に置き換えていただいても読み解けると思います。

Workshop 1.0

参加者は、言われたことを言われたとおりにやります。
振り返りもなく、単に体験するだけ。ただ楽しむだけで場が閉じます。

Workshop 2.0

参加者は、Workshopらしきものをさせられます。
体験の前後に方向性のよくわからない話し合いをさせられます。振り返りも感想を述べあう程度で、モチベーションは上がりますが長続きしません。

Workshop 3.0

参加者は、Workshopに参加させられています。
全体の目標に向かって小気味よく活動が進みます。体験前の前振りによって、気づけば方向性の定まった振り返りに誘導されています。
問題点は浮き彫りになりますが、それが目標と異なれば解決することはありません。そこで生まれる学びは、もともと意図されたもののみとなります。

Workshop 4.0

参加者は、Workshopに参加します。
様々な意見が場に出されますが、目的に応じた抽象的な括りでまとめられてしまいます。主体性を重視するがゆえに、参加者の間に温度差が生まれます。
全体としての目的に向かい、ある一定の方向性が掲示され、意思の統一が図られます。うまくいっているように見えますが、個々の課題についてはあまり吟味されず、表面的な変化しか生まれません。

Workshop 5.0

参加者は、Workshopをきっかけに挑戦します。
参加者一人一人の意見にスポットを当て、全員でそれを吟味し、それぞれが関わることによって、全体だけでなく個人目標の達成へもいざなわれます。参加者それぞれにとって具体的な変化の兆しが生まれる機会となり、Workshop後にも行動が続きます。

Workshop 6.0

参加者は、Workshopで自分自身と対峙します。
より深い振り返りによって、参加者個人の内面が生み出す問題や課題と向き合う機会が作られます。体験を概念レベルまで落とし込むことによって、本来あるべき方向性や目標の見直しなど、個人の根幹から課題解決を図ることができます。

Workshop 7.0

参加者は、Workshopで人生が変わります。
永遠不変の真理に近づく試みが進められます。個人はいわゆる「大いなる目的」に取り込まれ、自他境界が曖昧となります。そこで生まれる合一体験や超越体験などの神秘体験との遭遇は、その体験のみで人生を一変させるでしょう。また、言葉を超えた内面の対話(瞑想など)によって、実体験を介さない体験の創出が可能となります。そうなると、個人の永続的かつ意図的な変化を期待することができます。

Workshop 8.0

人生がWorkshop。
悟りの境地へ。


Facilitatorで考える

では、Workshopを扱うFacilitatorは各段階でどのような考えを持つのでしょうか。前段と同じく、講師や教師に置き換えてもよいでしょう。

Facilitator 1.0

ようこそ、Facilitatorの世界へ。
初めてWorkshopに触れたときの「場を作ってみたい」という純粋な欲求からなる段階です。右も左もわからず、知っているアクティビティを見境もなく扱う、最も楽しくエネルギッシュな時期です。
参加者のことは全くみえていません。

Facilitator 2.0

Facilitatorとして認められるためにFacilitatorをしています。
一つの手法を取りつかれたかのように学び、先達を尊敬し、創始者に至っては崇拝します。それゆえに、その手法が絶対的となり、他の「教え」には耳を貸すことが少ないでしょう。「あり方」などといった知った言葉を使いますが、それが何かはまだわかっていません。「Workshopはこのようにしなければならない」という考えが根付いています。
参加者はその「信仰」の肩越しにみえています。他のFacilitatorを評価するときにも、その人自身ではなくどの「流派」であるかで判断してしまいます。

Facilitator 3.0 

少しずつ稼げるようになってきました。
「Workshopはこうあるべきだ」と、ついつい独り立ちできると勘違いしがちですが、いつかBIGになることを夢見ています。「どれだけ多くのアクティビティができるか」など、他者よりも上に立とうとする傾向が最も強い時期です。自らの手法を商売道具として扱い、時には流派そのものに辟易することも。
参加者は「報酬」の向こう側にみえており、最短経路でニーズに応えます。

Facilitator 4.0

前の段階で自信をしっかりとつけることで、寛容さが生まれます。
多様性と対峙するために、一つの手法だけではなく他の手法に挑戦するなど、より広い知識や経験が必要となります。関係性を同業内で広げて、共同体をつくり、駆け出しFacilitatorの育成などにも手を出しますが、それはまだ自分たちのためでもあります。
参加者にとっても期待以上のWorkshopを展開できるようになりますが、変化を促すには至りません。

Facilitator 5.0

ここから先に敵がいるとすれば、それは自分自身です。
今までに得た技術とノウハウを、純粋に参加者に向けて注ぐことができる、Facilitatorとしての「自己実現」の段階に入ります。まだベースは一つの手法ですが、他の手法も取り入れるようになります。
培ってきた手法も手足のように扱うことができ、Workshopの変化に対応しながら、より大きな変化を参加者に促します。

Facilitator 6.0

自分自身の主義・思想・考えなど、内面の偏りに気づくことができないのであれば、まだたどり着いていません。
状況に応じて手法を使い分けることができるようになり、様々な課題に対応できるようになります。
人間社会における問題を、生態系という広い観点から捉えることで解決に導きます。現実的ではない考えも扱うため、ジレンマにも悩まされますが、それらは創造のタネとなって次の段階で花開きます。
この段階に至ると、扱う手法はさらに円熟味を帯び、Workshopの中で至高体験へと導くことができます。

Facilitator 7.0

自身はもちろん、参加者に起こる様々な偏りを把握しながら、様々な手法を創造的に組み合わせます。もうすでに、一つの手法や考えに囚われることはありませんし、逆にわざと囚われることもできます。その手法は、オリジナルの新しいものとなっているでしょう。
この段階ではじめて、今まで通ってきたWorkshopの各レベルを自由にコントロールすることができるようになります。また、Workshop中に神秘的な体験も起こりえます。

Facilitator 8.0

自分自身そのものが自然体のFacilitatorです。
変化を促すことなく変化は起こり、その流れに身を任せます。


Membershipで考える

Workshopのレベルを司るのは、Facilitatorの力だけではありません。
例えば、参加者との相互作用も「場」や「空気」に影響を与えます。
今回のしめくくりは、Membershipで考えてみましょう。

Membership 1.0

「なんとなく」「友人に連れられて…」
Workshopに対する意識はまったくありません。
楽しむことができなければ、参加しなくなります。

Membership 2.0

「誰かに受けてくるようにいわれた」「必要に迫られて…」
Workshopへの意識はありますが、興味はありません。
参加意欲は低めですが、行動はしっかりと適応します。

Membership 3.0

「ノウハウやスキルが欲しい」「関係性を広げたい」
参加意欲は高めですが、行動は統制されていません。
ある程度の経験を持っていることが多く、評価は厳しめです。

Membership 4.0

「様々な考え方を知りたい」「自分の考えを確かめたい」
一歩引いて参加しながら、必要に応じて行動します。
専門性をもっており、他の参加者の体験を損なわないように振舞います。
体験よりも話し合いの時間を必要とします。

Membership 5.0

「課題解決を手伝いたい」「場の役に立ちたい」
利他的でボランタリーな精神が表に出てきます。
高い専門性をもっており、そのアイデアを発揮できる環境を求めます。

Membership 6.0

「自己を追求したい」「より難しい課題に挑戦したい」
ほぼ自分自身で体験の処理を完結できます。
新たな観点の獲得や、本質を考える機会を求めます。

Membership 7.0

「仕組みを知りたい」「創造したい」
様々な意識の状態を往還します。
概念的思考の言語化と共有の機会を求めます。

Membership 8.0

「ただそこに在ること」


最後に

  • Workshopの目標レベルは、Facilitatorが設定します。もちろん、Facilitatorのレベルを超えるWorkshopは構築できません。

  • Workshopが進む中で、MembershipによってFacilitatorの能力を上回るWorkshopに変化するしていくこともあります。ただ多くの場合はFacilitatorが扱いきれません。

  • FacilitatorはWorkshopを介してMembershipのレベルを向上させることができます。良くも悪くも。

  • Membershipを高いレベルで維持できる人であれば、どのようなWorkshopであってもFacilitatorの意図を超える「収穫」を得ることができます。

  • もっと細かくレベリングすることもできますし、荒くすることもできます。例えばもっとも荒いもの一つは「1.0~4.0=モノ(外面)重視、5.0~8.0=コト(内面)重視」などです。

  • 発達の前半は「手に入れる」過程、後半はそれを「手放す」過程です。


この記事は下記のイメージで構成しました。

1.0:レッド
2.0:アンバー
3.0:オレンジ
4.0:グリーン
5.0:ティール
6.0:ターコイズ
7.0:インディゴ
8.0:ヴァイオレット

各レベルについては「発達段階の諸相」を参考にどうぞ。

キリがないので適当に書き上げた部分があります。
申し訳ありません。