20231207体験理論の再構築
体験学習サイクル(ELC)のアップデート
なぜELCは「体験」と「経験」の表記揺れがあるのか
日本語における体験と経験の違いと英語表記
スパイラルアップはどこから来てどこへ向かうのか
本来は大小いくつものスパイラルが絡み合った状態かより細分化することができる
体験→振り返り
出来事(事実)と感情を切り離す
出来事→スキル的な処理→PDCAサイクルへ
感情→人格的な処理→ELCへ
適用→体験
前フリまたはアンカリングによる、体験と振り返りの方向づけ
アクティビティそのものはツールであり、それを誰に対してどのように扱うのか
振り返り→概念化→適用
一般化(generalization)と概念化(conceptualization)の違い:定式化
無意識下の処理のため把握することが難しい(説明も難しい)
出来事と分離した感情は意味づけされて概念へと変化し、蓄積される
その意味は体験前の適用において設定された目的とリンクする
概念化が行われない経験は、いわゆるトラウマやコンプレックスといわれる形式で格納され、適用における不適応な判断や、体験の際のフラッシュバックなどで再現される
体験学習サイクルにおける体験の処理とトラウマ治療の接点に留意
概念化において、知識の量は大きくなり、質は洗練される(学習)
適用への流れで、大きくなった知識から新たな選択肢(アイデア)が導き出される(応用)
ELCをスペクトラム的に捉える
体験から概念化までの流れが「振り返り」のプロセス:外から内へ
振り返りから適用までの流れが「概念化」のプロセス:無意識下
概念化から体験までが「適用」のプロセス:内から外へ
適用から振り返りまでが「体験」のプロセス:意識下
Cゾーンのアップデート
コンフォートゾーンの広げかた
チャレンジできること:心理的安全性の確保
発達の最近接領域:グループでの活動は個人のストレッチゾーンを拡張させ、本来はパニックゾーンであってもチャレンジ可能となる領域が生まれる
Cゾーンの閉じ込め:安全ではない不慣れな環境に身を置くことでCゾーンを縮小させることで、本来はCゾーンの行動でも学ぶことが可能
体験のインパクトはチャレンジ(感情の振れ幅)の大きさ:パニックゾーンに近いほど強烈な体験となる
活動そのものの強度が小さくても、振り返りによる再体験で質を上げることも可能
ELCと発達段階
ELCは何歳から自分で回すことができるのか
0-2歳
適用→体験サイクル→適用…
言語化できないため振り返りができない
2-7歳
適用→体験→感想→適用…
未分化の領域が多く振り返りにおける出来事と感情の分離は難しい
7-11歳
適用→体験→振り返り→適用…
知識の総量は少なく、現実的なアイデアは乏しい
11歳以降
適用→体験→振り返り→概念化→適用…
さらに発達が進むことでより深い概念化が可能に
脳神経学的視点から
左右の脳をつなぐ脳梁の完成は19歳頃→出来事と感情の分離を正確に行うことができる年齢(成人するということ)
脳機能の完成は25歳頃→体験学習サイクルを理解し、意識して回すことができるようになる年齢
発達的に、自身でまだ出来ない部分を外から
発達段階別の関わり方
「乳児」「幼児」「小学校低学年」「小学校高学年」「中学校」「高校」「大学」「社会人」「専門職」「達人」
前段の通り、それぞれの段階でELCの作動範囲が異なるため、同じアプローチでは通用しない
まとめ
「体験から学ぶ」といった言葉がよく使われているが、その仕組みについてどこまで理解できているのか、どのような知識を持っているのかも、提供できる活動の幅や質に影響する
ELCを伴う体験型ファシリテーションは万能ではなく、あくまでも場を紡ぐ手法の一つ
確実な体験とスキル教授を行うインストラクション、内省を言語化に繋げるカウンセリング、目的目標を見定めるコーチング、環境づくりを行うコーディネートなど、ELCをより効果的に回すためには様々なスキルが求められる
真に人の成長を促すのであれば、一つのやり方にこだわるのではなく、より多様な手法をもって発達段階に応じた支援や指導を行わなければならない