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日本人と中国人の男達が米国での結婚準備をしている話

色々あって彼氏と結婚しようと思います。詳しい話を調べようにも日本語の情報があまり出てこなかったので調べた内容を備忘録がてらNoteに記してみたいと思います。都合上日本人と中国人のカップルですが、これは米国籍を持たない外国人同士でも当てはまるので公的に結婚したい日本人カップルにも1つの情報になるかなと思っています。これは調べた限りなので実際に試してみるのは今後を乞うご期待。


当事者の紹介

筆者:日本人、男性
彼氏:中国人、男性

筆者は日本で暮らすゲイ。彼氏とは約半年前に出会い、思いのほか気が合うので今後も一緒に生活したくなりました。彼氏は中国人で半年前の時点では留学生として日本に滞在していて、この3月で卒業し、今は中国に帰ってしまいました。彼は今年の9月からアメリカの大学でポスドクをすることになりしばらく研究職に就く予定です。筆者もそのままアメリカに行きたいところですが、アメリカで生活するためにはビザが必要です。観光ビザで3ヶ月ごとに帰国を繰り返していては仕事もできないしお金もなくなるし到底生活できません。

ビザをどうするのか?

結婚云々の前に、外国で滞在するための資格であるビザについてまとめます。実はこの問題を解消することが今後一緒に生活するための1番の心配事でした。

ビザの種類

アメリカでの長期滞在を可能にするビザにはいくつかあるのですが私たちのケースでは現実的には次のH-1、J-2、 DVビザ3つ(自分でコントロールできる選択肢は2つ)です。

H-1ビザ

H-1ビザはいわゆる就労ビザで、取得するためにはまず米国内の会社からJob offer(内定)をもらわないといけません。ですが、どうやら就労ビザを持っていない人がオファーを受けるのは難易度が高いようです。というのも就労ビザは受け入れ側の会社が取得をサポートしなければならず、移民法上の義務を負ったり、そもそも取得するまでに1年近くかかるので面倒なのですね。そうなると渡米の前にまず国内で就職活動をオファーが出るまでし続けなければならず、最悪日本に居続けるままという可能性もあります。ただし、このビザを取って何年か働くとグリーンカード(永住権)への切り替えが可能という特典もあるらしいのでチャレンジする価値は大ありです。

J-2ビザ

J-2ビザはJ-1ビザ(交流訪問者ビザ)を持つ彼氏の扶養家族として滞在するビザです。こちらの条件はビザを持っている人の法律上の配偶者である、ということ。最近話題のパートナーシップではダメなんです。法律上の扶養家族、配偶者とパートナーとの違いは次のように定義されています。

Who Qualifies as a Dependent?
Dependents can be:
  - Legally married spouses* of the F-1
  - Children of the F-1
Dependents cannot be:
  - Unmarried domestic partners or significant others*
  - …

*What is a 'Spouse'?
For immigration purposes, a spouse is someone who is legally married under the applicable laws of a given country or U.S. state.  If you got married in a country or state that recognizes your marriage as legal, you have access to dependent benefits under immigration law. When your dependent applies for their visa they will need to show proof of the legal marriage to the embassy.  

A partner is someone who is not married but is in a relationship that may or may not be recognized in a legal framework. Legally recognized partnerships include civil unions (e.g. some states in the U.S.), registered or civil partnerships (e.g. Australia), and stable unions (e.g. Brazil). Such partnerships are not considered marriages for purposes of U.S. immigration law and someone who is in such a partnership is not eligible for a dependent status.

翻訳:
扶養家族として認められるのは誰ですか?
扶養家族には以下のものがあります。
  - F-1申請者の法的婚姻関係にある配偶者*。
  - F-1の子供
扶養家族にはなれません。
  - 未婚の家庭内パートナーまたは大切な人*。
  - …

*配偶者'とは何ですか?
移民法上、配偶者とは、特定の国または米国の州の適用される法律の下で合法的に結婚している人のことを指します。 あなたが合法的な結婚を認めている国や州で結婚した場合、移民法上の扶養家族の特典を受けることができます。あなたの扶養家族がビザを申請する際、彼らは大使館に合法的な結婚を証明するものを提示する必要があります。 

パートナーとは、結婚していないが、法的枠組みで認められている、または認められていない関係にある人のことを指します。法的に認められているパートナーシップには、シビル・ユニオン(米国の一部の州など)、登録されたパートナーシップまたはシビル・パートナーシップ(オーストラリアなど)、安定した組合(ブラジルなど)などがあります。このようなパートナーシップは、米国移民法上、結婚とはみなされず、このようなパートナーシップを結んでいる人は、扶養家族の資格を得ることはできません。

https://internationalaffairs.uchicago.edu/page/adding-dependent

いわゆるヘテロカップルだったら結婚して配偶者としてそのまま米国に帯同すると言う手段も使えるところですが、そこはゲイカップルの不便なところ、日本や中国の母国内だけでは公的に配偶者である書類を作れません。ちなみにこのビザは労働許可証を入手すれば働くことも可能なので、キャリアの継続という観点でも安心です。ただしH-1ビザへの切り替えには2年以上米国外へ出国する必要があるので、長期滞在をするならH-1の方が安心です。

DVビザ

DVビザは移民多様化ビザという名前で、抽選に当たると誰でもアメリカの移民になれるというものです。これは実力も努力も作戦も要りませんが運が必要です。ちなみに2023年分の抽選は外れました。残念。

で,なぜ結婚するのか?

という訳で、米国で一緒に生活するためにはビザが必要で、就労ビザであるH-1を取れるのが一番いいけど、それ一本だといつ渡米できるかわからないので、J-2も取れるように両天秤で行く作戦です。と、色々と打算的な事を書いていますが、自分たちの気分を盛り上げるための1つのイベントとしてもとても楽しみです。おそらく日本国内でこのようにして結婚している人は少ないだろうし現時点で結婚を考えていない人たちもこういうファーストペンギンを見られれば少しは面白いかなと思っています。

どうすれば結婚できるのか?

ここまでさらっと「中国人と日本人が第三国であるアメリカで男同士で結婚する」なんて書いてしまいましたが、そもそもそんなことが可能でそれで法律上有効な配偶者として認められるのかというのが疑問に思いませんか?私はめちゃくちゃ疑問に思いました。が、冷静に考えると日本国内でも外国人同士の結婚や、米国での日本人同士の結婚とかありますよね。でも、本国には同性婚の制度はないし。。。とか気になったので調べました。

外国人同士での結婚

まずこちらのサイト、これはおそらくアメリカの弁護士事務所のような所で結婚制度について解説しているところです。「2人ともアメリカ市民でない人たち同士でも結婚できますか?」に対して答えは「イエス」と書かれております。ちなみにアメリカ市民とはアメリカ国籍がある人というのと概ね同じだそうです(厳密には違うとか)私にはよく分かりませんが。

Can two non-citizens marry in the U.S.?
Yes, non-Citizens can marry within the U.S. Keep in mind that marriage does not change your immigration status and the marriage may not be recognized in your home country. To get married in the U.S., you simply need the proper identification to apply for a marriage license in the county in which you are to be married. In most cases, you’ll need to provide a valid passport. You may also need to prove that you are old enough to be legally married and that you are not already married. Your country may have additional requirements to validate your marriage abroad.

With the proper valid identification, it is not difficult to get married in the United States. If you need to change your citizenship status, you’ll benefit from consulting with an immigration lawyer. If you ever need a copy of your marriage certificate, you can always request a copy from the county or state where you were married.

翻訳:
米国市民でない二人が米国内で結婚することはできますか?
はい、非市民でも米国内で結婚することができます。ただし、結婚しても移民としての地位は変わらず、母国では結婚が認められない可能性があることに留意してください。米国で結婚するためには、結婚する郡で結婚許可証を申請するための適切な身分証明書が必要です。ほとんどの場合、有効なパスポートを提出する必要があります。また、あなたが法的に結婚できる年齢であること、そして既に結婚していないことを証明する必要がある場合もあります。あなたの国には、海外での結婚を証明するための追加要件があるかもしれません。
適切な有効な身分証明書があれば、米国で結婚することは難しいことではありません。あなたの市民権ステータスを変更する必要がある場合は、移民弁護士に相談することで恩恵を受けるでしょう。結婚証明書のコピーが必要な場合は、結婚した郡または州からいつでもコピーを請求することができます。

https://www.rocketlawyer.com/family-and-personal/family-matters/marriage/legal-guide/international-love-how-to-marry-a-foreigner-or-non-citizen#can-two-non-citizens-marry-in-the-u.s.?

必要な書類

具体的にどんな書類が必要なのかな?と思い調べてみると、米国お決まりの州(郡)によって違う 。とりあえず一番簡単そうなのはラスベガスで、ここではパスポートとお金さえあれば結婚できそうです。

アメリカで婚姻手続きを行うには、結婚許可書(Marriage License)が必要です。ラスベガスでの入手は至って簡単。まず、遠望台でも有名なストラスフィアタワーから車で約5分ほどの場所にある役所(Clark County Marriage Bureau)へ、結婚許可書の申請のために当事者2人で出向きます。必要なものは、身分証明書と申請料の$77のみ(以前は$14でしたが、不景気のあおりで値上がりしたそうです。一応、験担ぎのラッキーセブンにちなんで、$77にしたのだとか(※1))。混み具合にもよりますが、列に並んでから申請・発行までに10分ぐらいで済みます。ちなみにこの役所は、コンビニとまではいかないものの1年365日朝8時から深夜12時まで営業しています。結婚許可書を手にすれば、その後ラスベガスのどこでも結婚式を挙げることが出来ます。著者の場合は、後にハワイで式と披露宴を行うことが決まっていたので、結婚許可書を手に徒歩で役所の目と鼻の先にあるThe Office of Civil Marriageに立ち寄り、司式者の元で宣誓を行って民事婚を挙げました。

http://www.whynotjapan.com/marriage/business/

調べていてこの辺りまで来ると、米国では同性婚をするのではなくて、結婚をするんだなあということがわかってきて、同性だからといって別に手続きが増える訳じゃないんだってのが理解できてきました。こういうのは日頃の扱いから無意識にAdditional workがあるんじゃないかと思っちゃうんですねえ。不思議です。

配偶者ビザを取れるのか?

当事者のホームカントリーである日本でも中国でも2人は法律上の配偶者として認められていないのに果たして配偶者を名乗ることができるのかと疑問に思いますよね?私は思いました。でも冷静に考えてみるとビザを申請するのは米国に対してなので米国基準のエビデンスがあれば多分大丈夫です。さっきのページでも特定の国あるいは米国内の州に適用される法律の下の配偶者って書いてあるし、大使館のページにも同性婚も異性婚と同じって書いてあるし。

Spouse and children


 U.S. Embassies and Consulates will adjudicate visa applications that are based on a same-sex marriage in the same way that we adjudicate applications for opposite gender spouses.

翻訳:
配偶者と子供
……
米国大使館・領事館は、同性婚に基づくビザ申請についても、異性配偶者の申請と同様に審査します。

https://travel.state.gov/content/travel/en/us-visas/study/exchange.html

あとは個人的な話ですが、米国で結婚した中国人と韓国人のゲイカップルも配偶者ビザで渡米したとのことですのでまぁ多分できるのでしょう。(コロナ前は毎年多くの中国人カップルが結婚するために米国に行っていたみたいです)

J2 Visaで働けるのか?

Employment Authorization Document, EADというのを取得すれば労働ができるらしい.

J-2ビザは珍しく就労が許可されたビザで、他の配偶者ビザであるH-4ビザは就労が許可されていません。なのでこのビザはある意味ラッキーかもしれません。ただし、今後グリーンカードを申請する場合はおそらく日本人である筆者がH-1ビザを取得して、そこからグリーンカードへの切り替えをする方が中国人の彼氏が切り替えるよりも容易であることが想像できます。

最後に思考実験

アメリカで有効な結婚をしたとしても、自動的に日本国内で有効になるわけではありません。以下の通り、たとえ異性婚でも日本での届出がないと日本国内では有効になりません。同性婚をした場合はここで日本国内の法律に照らし合わせて日本の中で結婚が有効かどうかを判断されるわけですね。(例えばこんな記事

1.婚姻の届出
ここでは、日本人が外国人と婚姻する場合の、手続についてご説明します。

日本人が外国人と婚姻手続をする場合、日本人又は外国人配偶者、どちらかの母国で婚姻を成立させる必要があります。

婚姻が成立する為には、日本を含め、多くの国では行政機関や結婚登録機関への届出をすることになっています。
婚姻の手続は、日本で婚姻の届出を先にするのか、それとも、外国で先にするのかで、手続が異なります。

日本で先に婚姻の届出をするのであれば、相手方が婚姻の要件を備えていることを証明しなければなりません。
そして、外国で先に届出をしたのであれば、その婚姻が有効なものであることを証明しなければなりません。

2.国際結婚の手続-「創設的届出」と「報告的届出」

婚姻の届出には、「創設的届出」と「報告的届出」があります。

例えば、日本人と韓国人が日本で結婚する場合、最初に日本の役所に提出する届出が「創設的届出」です。
その後、駐日韓国大使館に対して行う届出が「報告的届出」となります。


⑴日本で結婚する場合(創設的届出)

外国でも日本でも婚姻が成立していない場合、市区町村役場に婚姻の届出を最初にすることを、婚姻の創設的届出といいます。
婚姻は、婚姻届を提出したことで成立します。


⑵外国で結婚した場合(報告的届出)

外国で既に婚姻が成立している場合、それを日本に報告するために届出をするのが、報告的届出です。

外国に在る日本人が、その国の方式に従って、届出事件に関する証書を作らせたときは、3箇月以内にその国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその証書の謄本を提出しなければなりません(戸籍法41条1項)。

大使、公使又は領事がその国に駐在しないときは、3箇月以内に本籍地の市町村長に証書の謄本を発送しなければなりません(戸籍法41条2項)。

報告的届出について、届出期間を経過したときは、過料に処される場合があります。

https://lighthouse88.com/spouse-child-japanese/marriage-procedures-documents/

さて、米国で結婚したとしても国内では有効にならないので社会福祉上のベネフィット(税の控除など)は受けられませんが、それではよくいわれるような病院での面会の拒否や不動産への入居の拒否などに対しても効力はないのでしょうか?というのも、例えば日本での結婚を登録していない外国人カップルが旅行で入国したときに、たまたま救急搬送されて、日本で有効な結婚をしていないという理由で面会できなくなるんでしょうか。おそらくですが、口頭で家族だといえば面会できるのではないでしょうか。不動産も日本国内での結婚登録を確認するのではなく、口頭やパスポートやその他のホームカントリーの家族であることの証明書で、国内の結婚が有効であるかということを以て判断していないんじゃないでしょうか。(まあ、外国人というだけで入居は拒否されるらしいので、それはまた別の話かもしれませんが)つまり、公的に家族でないとか結婚していないなどという理由は単なる欺瞞だと思うわけですね。
まぁ、このような抽象的な話をしても仕方ないので、具体的にそのような拒否が行われれば裁判等々のネタになるんだろうなぁなんて思います。

という訳で、裁判まではするつもりはないですが、誰かの何かの役に立つことを目指して、これから色々記録していくつもりです!

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