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2020/10/30読書メモ

『人が人を裁くという』小坂井敏晶⑥

専門家が長年かかって練り上げた取調べ技術の威力は凄まじい。近代的取調べ術に抵抗し、自白を拒むのは非常に難しい。
取り調べでは、厳しい態度をとる悪役と、同情する素振りを見せる善玉が組みになって芝居する。悪役は若い部下、優しい方は年配の上司が演じる。被疑者の気持ちを察する振りをする上司は柔軟な態度で接し、彼を救ってくれる唯一の頼みだと錯覚させる。
暴力団員や政治犯が取調べに落ちにくいのは、彼らを支える組織が外部に存在するからだ。

黙秘したり、弁護士立ち会いを要求したりする者に対しては心理戦を展開する。
ミランダ警告が保障する権利を放棄させるまでは被疑者に優しく接して、本当のことを言えば捜査官は必ず信じてくれると期待させる必要がある。放棄させた後、捜査官は手のひらを返したように態度を変え、本格的な取調べを開始する。

ミランダ警告
①あなたは黙秘権を行使できる
②あなたの供述はすべて、公判において不利な証拠として用いられる可能性がある
③あなたは弁護士の立ち会いを求める権利がある
④弁護士を依頼する経済力がなければ、公選弁護士を付けてもらう権利がある

黙秘権を行使すると主張する者は、マフィアのような犯罪のプロや確信的政治犯を除けば多くない。

(普通の被疑者と比較して、犯罪のプロや政治犯の被疑者は黙秘権を行使したり、取り調べに落ちにくいのか。支える組織の存在以外にも、捜査官と被疑者は利害が対立する関係にある、とはっきりと認識できているかどうかの差のような気がする。)

様々な手段を通して、時には違法な方法をも講じて警察は自白を得ようとする。しかしそこに取調官の真摯な態度を読み取らないと、冤罪を生む仕組みの本当の深刻さと恐ろしさは掴めない。

(取調官の職務に対する真摯な態度が、冤罪を生んでしまうという構造的な問題があるということか。犯罪者を捕まえることと冤罪を生まないことのどちらをより重視するか?推定無罪の原則は、冤罪を生まないことをより重視する社会的な合意に思えるが、どうなんだろうか。)

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