休職明けの中年女性の圧倒的無敵感について。

理由は知らないが休職から復帰したとある50歳くらいの女性N氏が職場において圧倒的な無敵感を放っており感銘を受けたので記しておきたい。

【人物像】

女性。50歳前後。おそらくシングル。休職に至った理由は知らされていないが、挙動の不振さや話している時の目が、覚せい剤中毒者のように”パキパキ”であることから精神疾患の為療養していたと思われる。そしてその症状はおそらく対症療法的な薬物で抑え込んではいるが治っていないだろう。

服装の印象は渋谷の10代ギャル。商売女のようなゆるっとしたノースリーブのワンピースや、露出の多い服を好み、脚、腕など嫌でも目立つ。そしていつもだいたい厚底のサンダルを不慣れに履いて頼りなげな足取りでコピー機と自席の間を行き来している。

髪色は明るい茶色。前髪はぱっつんで幼げな若作りが目立つ。

しゃべり方。これは対象に大きく左右されるが概ね人に取り入るような高く甘い声を発する。迎合的な態度で周囲の人間の庇護に預かろうとする姿勢がよく見られるが、これは自身が仕事で役に立っていない現状を踏まえた生存戦略ともとれる。


仕事内容はよく知らないのだが、というか何もやっていないと思うのだが、先輩に指示された請求書をプリントアウトし、間違いがないかしっかりと(しつこいほど)チェックし横の先輩にパスする。

それ以外は椅子に座って先輩から渡された業務マニュアルのようなものを机いっぱいに広げて読んでいる。かと思えば急にオフィス備え付けの薬箱からこれ見よがしに錠剤をバリバリと取り出し口に放り込む。

しばらくすると薬が効いてきたのだろうか、うつらうつらし始める。

これが毎日のように続くがそれを指摘できるものはいない。

誰もが彼女への指導には及び腰で、時々パワハラ気質の役職者が出張してくるがN氏には口を出せない。

「何もできないか弱いアタシ」で自己ブランディングを徹底しているN氏に対して何か言えば、それが例え合理的な目的があるにせよ、彼女が再び調子を崩したときに批判の矛先が自分に向きかねない。

若手社員の意見を強力なマウンティング力で抹殺してきた役員ですらN氏にはかなわない。

この圧倒的無敵感にはすがすがしさすら覚える。

上司が時々簡単な事務仕事を割り振っているようだが、説明をされても「そんなのやったこと無い」「説明が全然わかんない」「で、結局私は何をやればいいわけ?」と言ってのける姿勢からは、たとえ彼女が100%まで回復したとしても凡そ戦力化など不可能だと悟らせる。


「仕事をしないでお金をもらう」。誰もが絵空事と思うほどあまりに現実離れした夢。そんな生きた実例を身近に見ることができて驚きと学びを得た。

もちろん簡単なことではないが、平凡な人間にでもいくつかのメンタルブロック(~でなければならない)を解除すれば実現できるかもしれない。

1.まず正社員として会社に所属する。

 労働者の権利保護を重視した日本の労働法では会社は簡単に労働者を解雇できない。

2.仕事を覚えようとしない。

 上司からの指示はあくまで「できません」ベースで聞き、説明に不明点があっても質問しない。質問することは場合によって「仕事への積極姿勢」と捉えられる。

3.出来なくても他人のせいにする。

 ミスをしても知らぬ存ぜぬ。上司の説明の仕方が悪かった。

同じ仕事をテキパキこなす同僚とは比較をしない。比べないこころ。


社会制度のひずみで生きる人間のタフネス。

「そんなに頑張らなくたって生きていけるんだよ」

永世中立的なN氏から学ぶことは多い。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?