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焼け石に水 ~個人では解決が非常に困難なこと~

ネットでこんな画像が話題になっていた。

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これは恐らく、性教育に関する教材の1ページであろう。「あなたはどう答えますか?」とあるので、自分なら各キャラの発言にどう答えるか考えてみた。


ポルノ・ビデオに出てくる子は幼いほどいいネ! → 児童ポルノの可能性がある。児童ポルノはそもそも違法だし良くない。


食事の片付けは女の子に任せておけば? → 男子が何か重労働をしているなどの事情がない場合は男女に関係なく気づいた人がすべきことかと思うよ。

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避妊なんてしないわ!彼が嫌がるもの。 → 妊娠の覚悟や性感染症のリスクを理解しているならいいが、そういった覚悟や理解がないなら後悔するよ。


私の身体を売って、なにが悪いの? → 売春は親が悲しむだろうし、やめた方が良いんじゃないかな。


NOと言わなかったんだから合意だろ? → もしかしたら相手が恐怖を感じてNOと言えなかったのかもしれない。性的同意はきちんと確認した方が良いと思うよ。


言うまでもなく「性的同意は取るべきだと思うよ」というのは筆者の本心だし、「性的同意なき性行為は性暴力」という主張を見聞きしたことのある方は少なくないかと思う。ただし、恐ろしい事実ではあるが、現実社会において「性的同意の確認をすることが恋愛市場で不評を買うリスクがある」という事実も知っておくに越したことはないだろう。

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以上の返答例を考えていて思ったことがある。

それは「焼け石に水」といういうことである。

「ポルノ・ビデオに出てくる子は幼いほどいいネ!」と語っているキャラは世に云うロリ豚な訳だが、ロリ豚に「ロリという性的志向は良くない」と説いたところで彼の性的志向が変わるとは思えない。

同様に「私の身体を売って、なにが悪いの?」と語っている売春婦に「売春はよくない行為だから辞めるべきだ」と説いたところで彼女が売春を辞めるとは思えない。

実際、この画像でも「友だちがこんな言動をしたら、あなたはどう改めさせますか?」ではなく「友だちがこう言ったら、あなたはどう答えますか?」という問いかけとなっている。

このように個人では解決が非常に困難なことが世の中には存在する。だが、よくよく考えれば、地球温暖化や少子高齢化などといい、個人が解決しがたい問題というものは世にありふれている。小児性愛、性売買、性暴力などといった社会問題も一人の力では解決できないことなのだろう。

2022年2月に発生したウクライナ侵攻に対して多くの人(ロシア国内に住むロシア人も含む)がプーチン政権の蛮行を非難しているが、これだけ多くの人が「戦争反対」や「ウクライナ侵攻反対」と意見を表明したりデモを行ったりしているにも拘らず、2022年2月現在、プーチン政権がウクライナ侵攻を中断する気配はない。ましてや一個人が…である。(「戦争反対」や「ウクライナ侵攻反対」と意見表明する行為が間違っているはずのないことは言うまでもない。)



余りにも解決への難易度が高すぎて個人では嘆くほかないことが存在するというのは、21世紀に限った話ではない。20世紀後半の時期、ブラックジャックは人口爆発が深刻な問題になっていた時代に「医者はなんのためにあるんだ」と嘆いた。

この台詞をみて「おい、ブラックジャック。嘆く暇があるのなら、食糧危機が起こらないようにする妙案を自分で考案してみろ」と感じる方は恐らくいないだろう。当然のことではあるが、手塚治虫もブラックジャックが「マルサスの罠」という社会問題を解決していくようなストーリーを描いていない。

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マルサスの罠は地球人口の増加の鈍化により、20世紀に比べれば深刻な社会問題ではなくなったが、それに比べて性売春や性暴力の問題は21世紀の現時点においても依然として解決が困難なままだといえる。




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