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第1回染め直し受注会をやってみて思ったこと

10月、お洋服染め直し受注会を行いました。今日はその時のレポートというか、まとめを書きたいと思います。

染め直しをお願いしてみたい方は、染め上がりのイメージの参考になるかと思うので、画像だけでもみていただけたら分かりやすいかも。
長くなっちゃいそうだから、まずは目次から。

<目次>
・受注会を行うきっかけ
・染め直しって何?
・受注会レポート
・染め直し受注会をやってみて思った事
・今後の染め直しの予定


受注会を行うきっかけ

今回、自社では初めての染め直し受注会でした。
染め直し自体は、随分前から様々な染め屋で受けている事を知っていたし、
今後、桐染でも受付をやってみたいとも考えていました。

私の想定では、あと2〜3年後に受付を始めてみたいな〜とぼんやり考えていたので、今年の10月に行うとは、自分の中では割と急な受注会ではありました。

周りの友人やd47で桐染を知ってくださった方から染め直しの依頼を受けることが少しづつ増えてきて、個人1人1人の対応が大変になってきていた事もあり、期間と色を決めてまとめて受け付ける事をやった方が良いとも思っていた頃でした。(数をまとめて受ける事で、お客様の単価も下げられるし、私達も一気に染められた方が手間が省けるのです。)

それに加えて、1番の決め手はNHK(群馬)のTV出演があった事が大きかったです。たまたまNHKの方が、こちら(下記)の私の文章を読んでくださって、取材の連絡をくださいました。

桐染のインスタグラムも見てくださっていた様なのですが、染め直しについて取材したいと言って下さったので、せっかくNHKで特集していただけるなら、この機会に染め直し受注会を合わせてやろう!と割と勢いで決めました。人から聞いた事ですが、”−自分がやりたい事をやるよりも、人から求められた事をやる方がよっぽど良い事だ−”というフレーズが頭の中で共鳴して、これがそういう事なのかもしれない!と思ったのでした。

NHKほっと群馬での「群馬人」という番組内で、放送して頂きました。
放送はとてもじゃ無いけど自分では見れなくて(恥ずかしくて)、少し時間が経ってから確認しました。

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映像はアップできませんが、特集していただくなんてなかなか無い機会なのでスクショをこちらに残します。放送の後は父が1番喜んでいました。。

幸か不幸か、今年はコロナの影響で工場も例年に比べると落ち着いていたので、染め直しを受け付けても大丈夫な位、臨機応変に動けそうというのも受注会を行う決め手となりました。

そう言った幾つもの点が結びついて、受注会をいつもお世話になっている桐生市内のギャラリー「パンセギャラリー」で行う事に。
桐染は実店舗を持っていないので、アートギャラリーを毎度店舗のようにポップアップで使わせていただいています。

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搬入の日は確か台風で大雨。ギャラリーのオーナーの藤井さんが設営を手伝ってくださいました。
3種の染め方のポスターを設置。

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実際に染めたサンプルのお洋服も設置しました。

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結果、思った以上の反響でした。
みなさんがお洋服を大切にされていることを知り、染め直し受注会をやってみて良かったぁと改めて思いました。

地元の新聞2社にも取り上げて頂き、新聞を見て会場までお越しくださった方もいました。地元新聞にはいつもお世話になっています。こういう記事にする形で、私たち若手の事も応援して下さっているのが伝わってきて、毎回心の底から嬉しいです。地元ならではで、温かい気持ちになります。

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受注会で注文して下さった方の中には、私や染色工場を応援する気持ちでご注文して下さった方もいらっしゃったと思いますが、それを取っても世間のサステナブルな考えが本当に広まってきている事を身をもって実感しました。


染め直しって何?

染め直しと聞いて、ピンとこない方。
染め直しについて簡単に説明しますので、ご安心ください。

染め直しとは文字通り、お洋服を染めて直す事。
古くなって色あせたり、シミがついてしまったり、柄や色が派手に感じて着れないお洋服を、染める事で新しいデザインに生まれ変わらせる事です。クリーニングとは違うので、シミ抜きをしたり、ほつれた部分を縫ったりする事ではなく、『染める』という方法でお洋服を修繕する事です。

今回は過去に友人から1番リクエストが多かった「黒」色での染め直しを受け付ける事にしました。その名も『THE BLACK』。

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私たちの普段の染色技術を知って頂きたいと思ったので、3種類の染め方から選べる様にしました。

籠染(かごぞめ)、暈染(ぼかしぞめ)、地染め(じぞめ=無地)。

この3種は普段から私達が染めている染色技術です。今回だけ特別に行った訳ではなく、工場で日常的に行っている染色です。個人のお客様を対象とするのは今回が初めてです。

参考までに染めのビフォーアフターの一例をご紹介します。

まずは暈染(ぼかしぞめ)
写真1枚目、真ん中から左側がbefore。右側がafterです。
一目でbefore、afterが分かりやすい様にインスタグラムをメーンにこういったビジュアルを告知ビジュアルとして使用しました。
詳しくはInstagramでご覧になれます▶︎KIRISEN instagram

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こんな風に、染める事で色んな意味で古びてしまったお洋服が
全く違ったお洋服に変わります。

暈染は、普段工場(こうば)では金襴の袴の染色が主です。
成人式や日本舞踊の袴、見た事ありますか?
桐生は金襴の織も有名で、市内で織られた金襴に暈染をするのは祖父の頃からおこなってきた私達の染色技術です。
私たちの工場アカウントにたまに出てくる染色の風景になります。

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この技術をお洋服に施す事で、もっと身近に染色を楽しんでいただきたいと思い、今回受け付けました。

暈染は柄の派手なお洋服を染めると、面白いデザインに変わります。
例えばこんな風に↓

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金襴の袴が染まる光景を昔から見てきて、派手な柄の方が暈染は生きると思っていたので、サンプル(見本)はなるべく派手なお洋服を選んで染めました。

面白くないですか?
紐やステッチは化学繊維だったので染まらずに残っています。
これも染め直しの面白い所です。

次は地染めのご紹介です。
サンプルは私の私物のワンピースです。旅行先で勢いで買った総花柄のワンピース。(こうやって文章を書いてみると割と色んな事を勢いで決めている自分に気づいてやや恐ろしくなります)

1度も袖を通す事なく箪笥の肥やしになっていたものです。
実はずいぶん前から別の色に染めて着たいと個人的に思っていた服だったので、サンプルがてらに染めてみました。

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素材はヴィスコース。天然繊維です。
背景の花柄が程よく薄らと残り、タッセルは化学繊維だったので染まらずに残り、アクセントになりました。柄が全部消えなかったのがとても気に入っています。

最後にご紹介するのは籠染(かごぞめ)
桐染の最も得意な染色技術です。籠染と言えば山崎染色(←旧屋号)と言ってくださる方も多かったそうです。自社商品でも籠染はメーンに打ち出しています。
今回の受注会で、お客様が「籠染」と言葉にして下さるだけで嬉しかったです。2年前では「籠染」と言っても聞き返されたりするのが当たり前でした。
籠染という認識が少しづつ皆さんの中に入ってきているのかと思うと、それだけでもとても嬉しいですし、自分のやってきた事が少しづつ積み重なってきているんだなぁ、と思えました。

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ここまで見ていただくと、なんとなく染め直しについて理解していただけたのでは無いでしょうか??
こんな風に染める事で新しいデザインに変えて、お気に入りのお洋服・思い入れのあるお洋服をできる限り永く着続けて頂けたら嬉しいです。


受注会レポート

お客様のお洋服も匿名で少しご紹介させて頂きます。
桐生での受注会に加えて、オンラインショップでも受付を行い、合計で103着のお洋服を染め直す事で新しいデザインへと生まれ変わらせることができました。
この枚数が、もしかすると廃棄処分になってしまったお洋服の数だと思うと、少しでも貢献できたのでは無いかと感じています。

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(※今回、急遽籠染の受付で地染めをして欲しいというお客様が多かったので、サービスで薄い黒に染めてから籠染をする方法も受け付けました。)


染め直し受注会を終えて思った事

今回、本当にやってみて良かったと思いました。
オンラインでも受け付けましたが、会場を設けて受付が出来たことが1番良かったです。直接お洋服についてお客様の思い出話を聞けたり、私からも素材によってこれくらいしか色がつきません等のアドバイスができたり、直接顔と顔を合わせて話してみないと分からない事って沢山ありますよね。

染め上がったお洋服を届けた後、わざわざお電話を下さったり、染め上がったお洋服を着た写真を送って下さったり、お手紙を下さった方もいました。
こう言ったお客様の声が工場に直接届くという事は、普段の染色の仕事ではなかなか無い事です。
染めて喜んでもらえるなんて、これ以上嬉しい事は無いです。

染め直しはサステナブルな考えもあって受付を始めましたが、在庫を持たないという点でもサステナブルですよね。これは、とても良い循環だと思っています。
それに、地域の一番近い人に地元の産業を少しでも身近に知ってもらえる良い機会だとも思いました。
「桐生って本当はすごい所なんだよね」と言っていたお客様もいました。



次回染め直し受注会の予定

12月、染め直しの受付を2回!行う予定です。

まずはこちらのイベントに参加させて頂きます。
・日程:12月19日(土)@ふふふ桐生

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その名も『ふぁふぁふぁ』。ネーミングが素敵なんです。
お買い物を楽しんだり、既存のお洋服にテクスチャーを加えることを楽しんだりできるイベントです。
桐生市内にあるボードゲームのお店「ふふふ」さんが企画してくださいました。今回がイベント第1回目となります。
「ふふふ」のオーナー夫婦は東京から桐生へ移住して、ふふふを拠点に活動されていて、ご夫婦共に(ファッション)デザイナー。
お二人は同世代で、年の近い面白い人が桐生に移住してくれるのは嬉しい事です。
このイベント『ふぁふぁふぁ』で桐染は黒色のお洋服の染め直しを受け付けます。イベントは予約制なので、ふふふのホームページ、又はインスタグラムでご確認の上、お申し込みください。▶︎ふふふInstagram

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そして、第2回目の染め直し受注会を桐生市内のパンセギャラリーにて行います。
次回の色は焦茶とワインレッドです。

・日程:12月26日(土)、27日(日)@パンセギャラリー

アートボード 1 のコピー 26@2x-80

アートボード 1 のコピー 17@2x-80

アートボード 1 のコピー 13@2x-80

アートボード 1 のコピー 15@2x-80


焦茶は、前回の受注会でお客様からのリクエストが多かったので選んでみました。(私たちは大きな組織じゃ無いので、お客様の声をミニマムに取り入れることができるので、できる限りお客様の声を優先したいと考えています

12月って、クリスマスやお正月に向けて赤色が欲しくなるので、真っ赤ではちょっとお洋服では着にくいかと思い、ワインレッド色で受け付ける事にしました。
赤色の微妙な色合いに迷ってしまったので、受け付ける色をInstagramの投票で決めました。ここでもなるべくお客様の意見を取り入れたいと思いました。SNSって本当に便利です。
次回も染色方法は3種からお選びいただけます。
オンラインショップでの受付は18日(金)〜スタートします。
お気に入りのお洋服を染め直して着続けて頂けたら嬉しいです。

今回も長くなってしまいましたが、最後まで読んで下さった方ありがとうございました。

桐染
平本ゆり



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