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【Jimi Plays Monterey】(1986) Jimi Hendrix 祖国に見参!ジミヘン伝説のステージ

動くジミ・ヘンドリックスを初めて観たのは深夜の音楽TV番組でした。曲は覚えていませんが粗い画質のライブ映像で、彼特有の混沌とした音に気圧されて、当時中学生だった私は、この人が果たして本当にギターが上手いのかどうなのか理解出来ませんでした。
それよりただ一つ、私がハッキリ感じたことは、「歌、下手だなぁ」笑。

今ではそんなこと言う人はいませんが、昔は周りの友人と「ジミヘンの歌は下手だ」とよく話したものです(私達だけかも)。思い返すと、当時の私には聴いたことの無い種類の音楽だったんですよね。ゆえに歌も(ギターも)調子っ外れに聴こえたのだと思います。

本作はモンタレー・ポップ・フェスティバルにジミヘンが出演した時の演奏を収めたライブ盤。ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズによる紹介で登場する The Jimi Hendrix Experience の3人。
先ずは、一曲目の "Killing Floor" です!

いきなり怒濤の如く繰り出されるギタープレイ。やたらと手数の多いドラミングによく動くベースライン。原曲のハウリン・ウルフのブルースを忘れてしまう3人の激しい演奏です。ジミのギターサウンドは宙を舞い、会場の空気を一瞬にして制してしまうエネルギーに満ちていますね〜。圧巻!

ちなみにモンタレー・ポップ・フェスティバルとは、1967年6月16~18日までの3日間、カリフォルニア州モンタレーで行われた野外コンサート。
バーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ジェファーソン・エアプレイン、オーティス・レディング、グレイトフル・デッド、ジャニス・ジョプリン、ザ・フーなど30組以上が出演した音楽の祭典で、その後のロックフェスの先駆けとも言われています。

実はこの時、ジミヘンは米国ではレコードも出てない無名の新人。英国で先にデビューして逆輸入の形で登場したのでした。
当然、モンタレーの観衆も誰だか知らない。それが出てくるなり黒人フロントマンが、当時まだサーフミュージック等のリズム楽器だったフェンダー・ストラトキャスターの音を目一杯歪ませ、弦を逆さに張り替えて左利きで、ビュイ〜ン、ビュイ〜ンと弾きながら歌ってしまうのだから……会場に居合わせた観客は、何が起こっているのか訳が分からなかったでしょう(私のジミヘン体験とも通じます)。フィードバック奏法を多用したノイジーなサウンド、視覚的にも派手なステージングに度肝を抜かれたでしょうね。

リプリーズ・レコードの米国盤

このジミヘンのモンタレー音源は、オーティス・レディングとのカップリングで一部は発表されましたが、全貌が紹介されたのは1986年のこと。上はそのアナログ盤です。
60年代にしては録音状態も良く、よくぞ誰だか分からない新人のステージをきちんと残しておいたなと感心します。

ところで、モンタレーを日本人で観た方がいるんです。音楽評論家の故福田一郎氏が、3日間のうち最初の2日を観たと、生前のラジオで話しておられました(残念ながらジミヘンは3日目の登場)。
しかもその少し前、ニューヨークで福田氏はジミヘンのステージも偶然に観ていたそうなのです。その時は前座。メインは何とモンキーズ!福田氏はモンキーズのステージをプレス招待で観に行ったところ、その前座に噂のジミ・ヘンドリックスがいたのだそうです。当然ながら客ウケは悪く(笑)、ジミも暫くしてツアーを途中で降りたとか…。その直後のモンタレーだったという訳で、ロックの歴史というのはつくづく面白いですね〜。
(追記:この部分は私の間違えでした。詳しくはコメント欄にて、音楽の杜さんの記述をご覧になってください。)


Side-A
⑤"Hey Joe"

実際のモンタレーの映像から。ジミヘンの英国デビュー曲です。襟と袖がヒラヒラになったオレンジ色の衣装は、まさにヒッピーの申し子と呼びたくなる出で立ち。ギターを持ち上げての激しいアクション、間奏は有名な「歯弾き」も披露。こんなの目の前で見せられたら、口が開きっぱなしです(笑)。

Side-B
②"The Wind Cries Mary"

彼がサイケな曲芸師ではなく、才能溢れるミュージシャンであったことはこの曲が証明していると思います。ミドルテンポでシットリと聴かせる乾いた哀愁。それまでのロックに無かったタイプの曲ではないでしょうか。

③"Purple Haze"

ジミヘンといえば「紫のけむり」。ライブの定番です。米国でのほぼ初お披露目ステージとあってミッチ・ミッチェル(drums)、ノエル・レディング(Bass)も気合いの入った演奏。竜巻のように押し寄せてくる轟音サウンドですね。

④ "Wild Thing" 

最後はモンタレーの観客を驚愕させた、ギターに火を点けて破壊してしまう伝説のパフォーマンス。これは映像でないとサッパリ何が起きているのか分かりません(笑)
一つ前のザ・フーが散々暴れまくった後の出番だったジミヘンは、何かやらねばとこれをやったそうです。6'15"辺りでライターのオイルをギターに振りかけて着火!これで完全に観客の心を掴みましたね〜。ジミヘンしてやったり。

モンタレーのステージが評判となったジミヘンは米国でもレコードデビュー。ロックの世界に革命を起こしていきます。今までに聴いたことのない音とパフォーマンス。私はジミからノイズも立派な音楽表現なのだと学びました。ロックの歴史にとっても "Experience" だったに違いありませんね。

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