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【Siren】(1975)Roxy Music ヨーロッパ美学を貫くRoxyの傑作ロックアルバム

ロキシー・ミュージックって、何だか得体のしれないバンドというイメージです。グラムロックの一派とされたブライアン・イーノがいた時期から、紆余曲折を経て80年代の【アヴァロン】に至るまで、リアルタイムで通って来なかったこともあって、どうも私には捉え所がなく取っ付きづらい印象…。

一度キチンと腰を据えて聴いてみようと、新宿TSUTAYAにあるロキシーのCDを全部纏めて借りたことがあるのですが、そこでようやく分かったこと。日本では積極的に紹介されなかった(と思われる)70年代半ばの作品が意外と味わい深いのです。私はブライアン・フェリーがダンディだとは一度も思ったことはないですが(笑)、華麗なロックバンドだったこの頃のロキシーは魅力的です。

本作はロキシー・ミュージックの5作目。
まずはオープニング曲で、彼ら初の全米ヒット(30位)となった "Love Is the Drug" (恋はドラッグ)です。

足音、車が走り出して行くSEに続いて、R&B調のビートで曲はスタート。スカスカな乾いた音でメロディも至って単調。ブライアン・フェリーって気の抜けたような歌い方なんですよね。そして取って付けたような分かり易いサビは、♪oh〜oh〜恋は麻薬〜…。普通はキザで歌えません笑。ロキシーらしい美意識とチープさがミックスされて、私はこれ、一度聴くとクセになるんです。

ロキシー・ミュージックは1972年にレコードデビュー。当初はブライアン・フェリー、ブライアン・イーノの双頭バンドでした。奇抜なファッションを身に纏い、古き良きロックンロールを未来型にアップデートするというコンセプトのもと、アヴァンギャルドな方向性でしたが、2作目でイーノがクビ。
後釜に当時18才のエディ・ジョブソン(元カーヴド・エア)が加入すると、以降はブライアン・フェリーの美学を具現化するロックバンドへと舵を切っていきます。

3作目から本作までは、ヨーロッパ浪漫主義と呼ばれる妖艶さをロックサウンドで表現したロキシーの充実期です。彼等の場合、キャッチーな曲が少なかったことが英国以外でブレイクしきれなかった原因かなと思うのですが、本作ではポップな要素も加味してますね。ロキシーの総決算的な作品だと思います。

ちなみにジャケットで人魚に扮した女性は、当時のフェリーの恋人でモデルのジェリー・ホール。当時19才。この名前を聞いておっ!と思われる方はコアなストーンズファンですね。そうです、後のミック・ジャガーの奥様になられる方です(その後離婚しますが)。ロックスターは若くてキレイな女性を好むとはどうやら間違いないようです💦

英国アイランド・レコードの初期盤


Side-A
②"End of the Line"

ゆったりと大らかなメロディライン。穏やかにレイドバックしたロキシーも心地良い。
天才少年エディ・ジョブソンのバイオリンソロが牧歌的な雰囲気を添えます。

③"Sentimental Fool"

イーノ時代とも異なるアヴァンギャルドな一曲。デビッド・ボウイがのちに実践するドイツのシンセサイザーミュージックの先駆けのようなサウンドです。暗く沈み込んだノイジーな音が漂流。ここでもエディ・ジョブソンがシンセで大活躍です。アンディ・マッケイのサックスは鰻にかける山椒のようにピリリッ…いいアクセントです。中盤からの歌パートも何処か浮遊感を伴った世界観。ロキシーの表現の振り幅を感じさせる大作です。

Side-B
①"She Sells"

本作で最もキャッチーなのがこの曲。ちょっぴり甘く切ないのが英国産のセンス。
ロキシーが面白いのは、ポップな曲でもバックのリズムが重いことです。ポール・トンプソン(drums)は不釣り合いなほどにフィル・インを繰り返して、間奏での跳ねたアレンジもGood。

③"Both Ends Burning"

当時のロキシーの映像からです。ライブ作品【VIVA!】(76年)収録のバージョン。
フェリーの歌は爬虫類っぽい!?感触ですが、堅実なビートに女性コーラスも配して、華麗なロックサウンドを展開しています。ソロ作ではR&Bカバーをやるほどブラックミュージック好きなフェリーだけに、彼なりのソウルレビューだった?とは深読みでしょうか。

本作を発表して、翌年にツアーを終えたロキシー・ミュージックは解散。それから3年のブランクを挟んで再結成しますが、ロックバンドだったロキシーは本作までだったかなと思います。
ハードロックでもプログレでもない、でも英国のエッセンスをたっぷり含んだ彼等の音楽は、まさに純然たるブリティッシュロック。これから秋の夜長にはこのロマンチックが沁みるんですよね。

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