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【Where I Should Be】(1979) Peter Frampton ソウルミュージックに接近したフランプトンの隠れた好盤

毎年、梅雨の季節にはピーター・フランプトンを紹介させてもらっています。今年で4回目。えッ?今更ピーター・フランプトン!?

いやいや、この時期に私は無性にフランプトンを聴きたくなるのです。高校時代から聴き親しんだ "Show Me the Way", "Lines on My Face", "Baby, I Love Your Way", "I'm in You"……どれもみんな濡れているんですよね。雨の日にピッタリ。

でも、今回はちょっと違う一面を。梅雨のジトジトを吹き飛ばすようなフランプトンです。彼の作品ではあまり知られていませんが本作【Where I Should Be】(邦題:新しき旅立ち)は掛け値なしで素晴らしい1枚です。

先ずは本作からのヒット曲 "I Can't Stand It No More" 。これがイイ曲なんです。

重みあるビートに乗ったフランプトン。メロディもギターフレーズも拡がりがあって、明るくリズミカルです。サビも覚えやすい!
フランプトンの最大の売りは繊細かつポップで甘いメロディ。良くも悪くも「マイルド」な感性でしたが、ここでの陽光がクッキリと差し込んでくる晴れ晴れとした感触は、なかなかではないでしょうか!?

ライブ盤【Frampton Comes Alive!】(76年)の爆発的なヒットから3年。この間、一躍スターダムの座に登り詰めたフランプトンは、世界中をツアーでまわり【I'm in You】(77年)を経て、映画《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》(78年)に出演するなど人気、話題でも頂点。本作はその熱狂も一段落しようかという頃の、全盛期最後を飾った1枚です。

録音は米国ロスアンゼルス。初の米国録音。77年当時の電話インタビューでは本人曰く「ロンドンは今じゃパンク・ロック一色。僕は全く理解出来ない」…。交通事故で重症を負う怪我などもあって、環境を変えたかったのかもしれません。

ゲストにはスティーブ・クロッパー(guitar)、ドナルド・ダック・ダン(bass)、ジェイミー・オールデイカー(drums、元E.クラプトン・バンド)など米国人ミュージシャンを多数起用。フランプトンのルーツであるソウルミュージックに接近しながら、乾いたセンスで磨き抜いたオリジナリティが光る1枚です。

(アナログレコード探訪)

インナースリーブ表
インナースリーブ裏
米国A&Mレコードの初期盤

数年前、広島で見つけた1枚です。シュリンクもシールも値札も当時のまま。昭和の輸入盤ショップから真空パックで届いたみたいで気に入ってます笑
写真はすべて巨匠ノーマン・シーフ。貴公子然としたフランプトンからユーモアある部分を引き出していますね。

英国A&Mレコードの初期盤
マトリックス2/1

本作、米国盤と英国盤で似たような音なんです。今回再び比べましたが、やっぱり同じ。どちらも抜けが良く、低音もシッカリ出ているのでバランスの取れた良音盤です。
クレジットに拠れば、マスタリングはMike Reeseという人物。米国盤には「TML−S」と刻印が有り、調べてみるとロスアンゼルスの The Master Lab というスタジオでカッティングしたとのこと。

何度も聴き比べながら、ふと英国盤のB面を眺めていたら面白い発見がありました。

左から、英盤規格番号の機械刻印(左)、米盤規格番号の手書き刻印(中央)、TML−S刻印(右)

ご覧の通り、英盤に米盤の刻印が入っているのです。おそらく米国製作の鋳型を使ってプレスされたのでしょう。つまり本作は米国原盤だと想像。音が同じなのも納得いきます。
当時のフランプトン(A&Mレコードの方針?)が米国に軸足を置いた活動だった証拠とも言えそうです。


Side-A
② "Got My Feet Back on the Ground"

スラップベースにストリングスが絡んでくるイントロから新鮮!南の風が吹き抜けそうな気分です。当時のブラックミュージックに真っ正面から取り組んだといった、乾いたフランプトンの新境地です。タワー・オブ・パワーのホーンセクションも加わってゴージャスなアレンジで盛り上げていきます。

③ "Where I Should Be (Monkey's Song)"

ビアノとギターの力強いリフで進む骨太なロックナンバー。リフ主体で押していく曲作りも珍しい。本作でフランプトンは作家としての幅が広がったように感じます。


⑤ "May I Baby"

本作で取り上げているサム&デイヴのナンバー2曲の内の一つ。当時の右腕ボブ・メイヨ(keyboard)とのデュエットで聴かせます。ギターでスティーブ・クロッパーが参加。
私の友人でフランプトンの声がオジー・オズボーンに似て苦手だと云うのが居ました。この歌などは悪くないと思うのですが…。


Side-B
③ "We've Just Begun"

カーペンターズは "We've Only Just Begun" でしたが、こちらはOnlyを抜き。これが負けじとイイ曲です。メロウだけどベタつかない本作のフランプトンの良さが出ています。
夏の海が似合いそう。AOR風のロマンチックな雰囲気にウットリです。

自らのルーツを再確認しながら作品へと昇華した本作。私は彼のスタジオ作品では1番好きです。
現在ピーター・フランプトンは、2019年に筋力が低下する難病を公表。コロナ禍を挟んでフェアウェルツアーを小規模ながら敢行しているようです。いつまでも元気でいてほしい、私の大好きなミュージシャンの1人です。

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