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【Cactus】(1970)Cactus  日本グラモフォン盤のラウドな音作りから感じること

Cactusは1970年デビューの米国ハードロックのバンドです。元Vanilla Fudgeのティム・ボガート(ベース)、カーマイン・アピス(ドラム)がジェフ・ベックとの新グループを計画しながら、ベックの交通事故であえなく頓挫、そのため急遽結成されたバンドです。

彼らの1stの日本での初回発売が日本グラモフォン配給。日本グラモフォンとは後のポリドールレコード。社名変更する1971年まで存在しました。

歴史の古い老舗ですが、1960年代末ニューロックの時代には、数多くの英米名盤を発売、中でもLed Zeppelinの3枚目までの日本初回盤を発売したことが良く知られています。

その日本グラモフォン盤のレコード、熱心なファンも多く、高く評価する方々も沢山います。が、私個人の意見としてはそれ程イイとは思えないのですが…。          しかしながら、このCactusの1stに関しては面白い音だったので取り上げたいと思います。

まずは写真で。

●日本盤

こちら日本グラモフォン株式会社、国内初回盤、70年11月発売、定価¥2000、      規格番号MT 2037、マトリックスは両面C-1-4。

ジャケットはボール紙のような厚手のもので見開き型。内側に解説と歌詞が掲載されていますが、これは割とグラモフォン盤によくあるスタイルです。

●US盤

こちらは米国アトコレコードのUSoriginal盤 SD 33-340、マトはA面/C、B面/B ジャケットはシングル。

蛇足ですが、ジャケ表裏それぞれの写真の画質を日米盤で比べてみると、この母国US盤の方が鮮明でした。国内盤はややピンぼけしてます。

音を比べてみると

この2枚、全く音が違うんです。そもそもスタジオで一発録りっぽい作品だからなのか、US盤は各曲に音質のバラつきがあります。低音はズッシリ来るのですが、音がこもって団子状になってる曲もあれば、クッキリと分離のいい曲もという感じ。

一方、グラモフォン盤はラウドな音。私が知る限りグラモフォン盤の中で最強にラウドな1枚。のっけからバンドの音が高音を強調気味に、ハッキリとど迫力で迫ってきます。同じ再生音だとビックリします。ライトな音色で、両面通して各曲の音のバラつきが全くありません。不思議だ〜

不自然なこの差は何故なのか?

考えられる事は、既に米国マスターテープそのものに音質のバラつきがあり、コピーマスターを送られた日本としては、これを整音するべく、かなり大胆なマスタリングをしたのだろうということです。

日本のレコード品質基準からしてもそのままでは出せなかったのでしょう。どうせやるならもっとハードロックらしい音に!というような意図があったんじゃないのか?? どうも極端に中高音のレベルを引っ張ってるような音に…。                                 実はこのグラモフォン盤、私にはややキンキンしてうるさい音なのです。音量上げて聴いていると疲れるのです笑

日本グラモフォン盤から感じたこと

コピーマスターから製作する以上、日本盤が原盤を超えることは理屈上まず無理でしょう。元の録音が良ければなおのこと。しかし録音が悪ければ、日本独自のマスタリングで良い音のように聴かせることが出来るハズ?!

そんな風に考えれば、このグラモフォン盤の攻撃的でメタリックなアプローチは、ローファイ気味なUS盤と比べて、これはこれで面白い音と言えます。好きな人もいるはずです。

Cactus絡みで同じような経験がありました。Vanilla Fudgeの【ニア・ザ・ビギニング】(69年) USoriginal盤もモコモコとした音なのに、国内グラモフォン盤は中高域がクッキリした分かりやすい音でした。同じエンジニアの方の仕事だと思いますね。

Cactusの2枚の極端な違いは、そのままレコード会社の思惑とも取れて私には興味深いです。                 「米国ではCactusは大して期待されてなかったのかなぁ、日本では本格轟音バンドとしてZEP並みに売り出そうとしてたのかな?」などと勝手な妄想を膨らませてしまいます。何かこの当時のドキュメントが透けて見えるようで。。

アルバム【カクタス】について

米国版Led Zeppelinとも称された彼ら。オープニングA-①「パーチマン・ファーム」B-①「レット・ミー・スウィム」の重戦車突撃!といった感じのハードブギが最高です。まさしくフル・スロットル!という感じ。ラスティ・ディの野性的なボーカルもいいですね。

そして全編通してとにかくリズムが重い!ZEPと同じく積んでるエンジンが違いますね。じゃあ何故ZEPになれなかったのか?   端的に言って、いい曲を書く能力がなかったからだと思います。

そんな中、私個人大好きなのがスローなブルースB-②「ノー・ニード・トゥ・ウォーリー」。ここでのジム・マッカーティのギターが素晴らしいです。マイナースケールでブルースを弾くギタリストは数多けれど、ここでのメジャーペンタトニックスケールで終盤まで押し切るプレイはなかなかのものです。この人、過小評価されてると思うんですが…。

Cactus、グラモフォン盤に関してはまた機会見つけて書いてみます。   

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