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【Johnny Winter】(1969) 100万ドルのブルースロック・ギタリスト登場!

1960~70年代のロックシーンには個性溢れるブルース系ギタリストがひしめきましたが、この人もそんな1人ですね。ジョニー・ウインター!
コロムビア・レコードが当時100万ドルで契約したことで有名なジョニーは、テキサス出身らしく豪快なギタープレイが醍醐味。マシンガンのように弾きまくるスタイルは、どちらかと言えばロックンロール色が強いタイプかもしれません。

しかしながら、コロムビアからのメジャーデビュー作となる本作は中身が真っ黒け!黒人ブルースに殉じるかのような本格派の音には、聴いてるコチラが完全にノックアウトされてしまいます。

ジョニー・ウインターのキャリアは長く、10代半ばには弟のエドガーとバンドを組んで活動していたそうです。マイナーレーベルとはいえレコードも発表。やがてギタリストとしての力量が評判となり、地元テキサスに凄い奴がいるぞと噂が広がっていったようです。

メジャー1作目となる本作は、ナッシュビルで録音。基本はジョニー(vocal, guitar)に、トミー・シャノン(bass)、アンクル・ジョン・ターナー(drums)のトリオ演奏ですが、ゲストにシカゴブルースの重鎮ウィリー・ディクソン、ウォルター・"シェイキー"・ホートンも参加。
自作曲の他にブルースの古典ではB. B. King、Sonny Boy Williamson、Robert Johnson、Lightnin' Hopkinsなど取り上げており、白人ブルースアクトの本格派として、相当に気合いの入った1枚となっています。


(アナログレコード探訪)

コロムビア・レコードの米国初期盤

本作の米国オリジナル盤です。赤レーベルに「⬅"360 SOUND"➡」と記されてるのは1970年までのプレス。全方向に飛び出すSOUND、というような意味でしょうか?? この古めかしいデザイン、私は好きです。
音の方はさすがに迫力ありますね。ジョニーのボーカル、ギターが突き刺さってくるような感じ。毎回思いますが米国盤は派手な音が多いです。やはりラジオ文化の国だけに、ラジオの音質程度でもハッキリ聴き取れる音が基本にあったのかもしれません。

CBSソニーの日本初期盤

一方、こちら日本盤。1969年には発売されていたようです。大して期待もしていなかったのですが、これがなかなかの音でした。具体的には米国盤のボーカル、ギターを抑えた感じで、その分ベース、ドラムの低音がよく目立ち、豊かに響いてきます。
どっちがイイかと言われれば、カッコいいのは米国盤ですが、聴いていて疲れないのは私は寧ろ日本盤でした。

先日、Ginger.TOKYOのオーナー高山さんが、エマーソン・レイク&パーマーの【展覧会の絵】を取り上げて「米国盤より猛烈に聴いた日本盤の音に愛着がある」とリアルタイマーらしい感想を書いておられました。

私も後追いながら、こうした古い各国盤を聴き比べていると、実は日本盤の音って日本人の聴感に合ってたんじゃないか、と思う時があります。抜けが悪く、少しコモってて、主張もしないけど、ゴリッと存在感のある音。何故かシックリきます。同じ日本人が作るのだから合ってるのは当然かもしれません。
何はともあれ、安心して聴いていられることは良い音に違いないですよね。


Side-A
①"I'm Yours & I'm Hers"

ジョニー自作のブルース・ロックナンバー。ドスの利いた歌声と間奏に何本もオーバーダビングしたギターソロが印象的です。
ローリング・ストーンズが1969年のハイドパーク・コンサートでカバーしていました。

②"Be Careful with a Fool"

この曲がとにかくカッコイイ!ドッシリと腰の据わった本格派スローブルースです。絞り出す歌声と、少しタメを効かせて次々と繰り出していくギターフレーズ……とめどなく湧き上がる泉のようです。決してメロディアスではないけれど、スピード重視で思いの丈を吐き出し続けるギタースリンガーぶりに痺れます。手癖やミストーンも何のその。ジョニーのギタリストとしての凄みに感服デス。


③"Dallas"

こちらは一転、ドブロギターに持ち替えた自作のカントリーブルース。スライドバーを滑らせ、渋い喉で歌う様子は黒人さながら。ブルースマンの心意気が伝わってきます。

④"Mean Mistreater"

本作の豪華セッションがこちら。ウィリー・ディクソン(acoustic bass)、ウォルター・"シェイキー"・ホートン(harmonica)をゲストに迎えた、まさに50年代シカゴバンドブルースといった真っ黒な佇まい。渋い!本場のゲットーの空気をそのまま伝えるような圧巻の演奏です。本作におけるコロムビア・レコード並びにジョニーの本気度が窺えますね。


Side-B
④"I'll Drown in My Tears"

面白いと思ったのが、こちらレイ・チャールズで知られるナンバー。ここではジョニーもギターを置き、ホーンセクション、バックコーラスに身を任せてレイに成りきって歌っています。ピアノ演奏は弟のエドガー・ウィンター。ブルースに限らず、この兄弟は黒人音楽をこよなく愛したのでしょう。そんな想いが溢れるカバーです。

ジョニー・ウインターはその後ロックンロール色を強めて、弾きまくりのギタリストとして人気を集めますが、私はブルース愛に満ちたこのデビュー作が好きなんです。彼のルーツをシッカリ感じる1枚だと思います。
ちなみにコロムビアと交わした契約金は本当は数十万ドルだったとか。でもジョニーの存在感を考えたら間違いなく100万ドルの価値がありますね〜。

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