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【Blind Faith】(1969) スーパーグループが試みた可能性の1枚

元クリームのエリック・クラプトンと、元トラフィックのスティーヴ・ウィンウッドが結成したブラインド・フェイス。この新バンドが登場したとき、世間のロックファンはさぞ興奮したことでしょうね。

ギターの神様と天才少年がタッグを組んだ夢のスーパーグループによる唯一の作品。かつては名前ばかりで内容が伴わないと評価もイマイチでしたが、近年は見直されているような気がします。
ニューロックの時代らしく、ジャムセッションをしながら手探りで何かを掴んでいこうとするスリリングさが本作の魅力だと思います。2人の傑出した曲も入っているし、私は結構好きですね。


まず、触れづらいジャケットの話を…。


英国盤ジャケット

本作で有名なのが少女のヌードジャケット。調べてみると、写真を撮ったのはクラプトンの知人で米国人写真家のボブ・ザイデマン。

何でもロンドンの地下鉄でモデルとなる女の子をスカウト。自宅に出向いて両親の了解まで得たものの、14才の彼女はポーズを上手く取ることが出来ず、その様子を見かねた妹が「私がやりたい」と言い出したとか。少女の名はマリオラ・ゴシェン、当時11才。ギャランティは40ポンドだったそう…。

写真家ホブ曰く、手に持った模型飛行機は人類の創造性の象徴、ピュアな少女はその担い手なのだとか。人類が月面着陸した時代らしい発想ですね〜。よく分かりません(笑)

ちなみに米国の初回盤ではヌードの替わりにメンバーの集合写真が使用されています(極稀にヌードジャケットも見かけます)。

英国盤見開き内側
米国盤ジャケット

さて、ブラインド・フェイスのメンバーは、
エリック・クラプトン(guitar)
スティーヴ・ウィンウッド(vocal, organ)
リック・グレッチ(bass, violin)
ジンジャー・ベイカー(drums)

主軸となるクラプトンとウィンウッドは、実はこれが初顔合わせではなく、遡ること3年前、パワーハウスなるバンドで共演していました。

【What's Shakin'】(66年)
Eric Clapton and the Powerhouse 名義で3曲収録

米国エレクトラ・レコードが発表したコンピレーション盤【What's Shakin'】にて、レーベル側が企画したバンドで2人は共演(ジャック・ブルースも参加)。後のクリームのレパートリーをほぼ同じアレンジで演奏するなど、貴重な音源が聴けます。全くの即席バンドながら、ここでの経験が良好だったからブラインド・フェイスに繋がったんでしょうね。


(アナログレコード探訪)

ポリドールレコードの英国初回盤
アレンジにRobert Stigwood(クラプトンのマネージャー), Chris Blackwell(ウィンウッド所属のアイランド社長)両者の名がクレジット。スーパーバンドに関わる協定だったのかも??

以前に米国アトコ盤、日本グラモフォン盤も有りましたが、比べるとやはり英国ポリドール盤の音が1番イイです。録音もロンドン。記憶ではアトコは太いけど音のレンジは狭いです。

〜消える右チャンネルのギター〜

私が気になることを。一曲目の"Had to Cry Today" の曲頭0:18辺りで右チャンネルのギターが突然消えるのをご存知でしょうか?3秒ほどで再び入ってきますが。
左右2本のギターのフレーズ運びからしてクラプトン(左)、ウィンウッド(右)でしょうが、このウィンウッドのギターの唐突な消され方が昔から不思議で仕方ありません。CDだけ?と思ったら、英国初期盤でも全く同じ。ウィンウッドのギターにミストーンがあったとしても、もう少しどうにかならなかったのかな…


Side-A
① "Had to Cry Today"

1969年ハイドパークでのお披露目ライブ映像です。この時点ではまだアルバムは未発売。どんな音楽をやるのか、観衆が固唾を呑んで聴いてる様子が伝わってきます。ステージではウィンウッドは鍵盤。声も張ってますね。10万人を前に4人とも緊張してます。


② "Can't Find My Way Home"

本作の収穫ともいえるウィンウッド作品。伸びやかなハイトーンボイスが美しく、凛としたアコースティックプレイと調和したフォーキーな傑作です。ベイカーのブラシも効果的。

③ "Well All Right"

昭和の刑事ドラマで流れそうなイントロですが、このバディ・ホリーのカバーがなかなか良い。跳ねるベースはウィンウッド。クラプトンのレゲエっぽいカッティングも面白い。後半はウィンウッドのピアノソロ。このインタープレイを聴いていると直後のトラフィック再編【ジョン・バーレーコーン・マスト・ダイ】の予兆を感じます。


④ "Presence of the Lord"

本作もう1つの収穫、クラプトンの自作曲。タイトル通り神の存在を歌うゴスペル風ナンバー。歌い上げるウィンウッドの力強さが引き立ちます。中盤からは一転、クラプトンがレズリースピーカーに繋いだギターで弾き倒すパートもポイント高し。この突拍子のないアレンジ、私は好きですね〜(笑)


Side-B
① "Sea of Joy"

ウィンウッドらしいソウルフルなナンバー。でもクラプトンのギターリフは無理矢理ハメた感じが…。ここにきてベースのリック・グレッチ(元ファミリー)が得意のバイオリンで登場。彼はグラム・パーソンズのソロにも参加するなど謎のキャリアです。

彼等の米国ツアーの前座を務めたのがデラニー&ボニーでした。スワンプロックの元祖とも言えるこの夫婦バンドにクラプトンがベタ惚れ。米国に残りたいクラプトンと英国に帰りたいメンバーでバンドは空中分解してしまいます。
クラプトン、ウィンウッド両者のその後のキャリアを考えれば、自らの音楽を掘り下げていく分岐点だったように思いますね。

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