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【Blues Breakers with Eric Clapton】(1966) John Mayall & the Bluesbreakers 英国ブルースの礎を築いた歴史的作品

ジョン・メイオールがさる7月22日に90才で亡くなりました。英国ブルースのゴッドファーザーとも呼ばれ、アレクシス・コーナーとともに数多くの後輩ミュージシャンを育て上げたブリティッシュロックの功労者です。

と、頭で分かっていても、私はこの方の歌がどうにも好きになれないのですが(苦笑)、彼の元へと武者修行にやって来た歴代ギタリスト(エリック・クラプトン、ピーター・グリーン、ミック・テイラー…)を思えば、その偉大さは認めざるを得ません。

本作はジョン・メイオールの名を一躍知らしめたブルース・ブレイカーズ名義のデビュー作。ヤードバーズを脱退したばかりの若き日のエリック・クラプトンを迎えた英国ブルースの歴史に燦然と輝く1枚です。

本作の魅力は何と言ってもエリック・クラプトンのギタープレイです。当時21才の若武者。元気ハツラツ、無我夢中でブルース道に邁進する姿が全編に渡って弾けていますね。マーシャルのアンプにギブソンレスポールを繋いだ、独特の歪んだ音色で攻めまくるスタイルは、後のFREEのポール・コゾフをはじめ、多くのブルースロック系ギタリストのお手本になったことが良く分かります。

そう言えば、私は本作を見直したキッカケがありました。都内の中古レコード屋で、ある年配客が店内の巨大スピーカーで本作を試聴したいとのことで、爆音で流れてきたのがこの曲だったのです。

威勢のいいホーンで始まるアッパーなナンバー。B面の1曲目 "Key to Love" です。
忘れてました、この曲の存在を(笑)。改めて聴くとソウルフルでカッコいいですね〜。不意に流れてきた、まさかのB面に思わず心が動いたのでした。

でも実際に、本作ってよく聴けばブルース以外の要素が混ざっていますね。
その昔、まだ情報の乏しい英国では、BLUESとはジャズもゴスペルもひと纏めに米国の黒人音楽と捉えていた、なんていう話も読んだことがあります。ハーモニカ、ホーンセクションにピアノ、ハモンドオルガンだって加えてしまう、時にモンドな感覚の英国人による「ごちゃ混ぜ」のブルース。本作はそんなところがミソなのかもしれません。


(アナログレコード探訪)
〜共存しなかった英国モノラルとステレオ〜

英国デッカ・レコード ステレオ初回盤
マトリックス1W/1W

通称オープンデッカと呼ばれるデザインの英国ステレオ初回盤です。シッカリした音で鳴ります。
このステレオ盤、英国では3年遅れの1969年に登場したのをご存知でしょうか?私も後になって気付いたのですが、レーベルの下部に小さく発売年を示す「1969」との表記がその証拠です。調べたみたところ、英国では当初モノラル盤のみの発売で(米国はステレオ、モノラルともに発売)、モノラル時代の終焉に伴い、1969年にステレオ盤を登場させたという訳なのです。

満を持して出たステレオMIXですが、定位は旧態依然。メイオールの歌が真ん中、クラプトンのギターが右スピーカー、他は全部纏めて左スピーカーという振り方が古いですね。1969年ならば、もう少しステレオ音響の考え方も確立していたハズですが…。おそらく最初からステレオMIXも施していたものの、発売に至らなかったということでしょう。

SUNDAZED発売のモノラル復刻盤(2011年)

対するモノラルMIXは迫力がありました。これは近年盤で、多少イジってはいるでしょうが、中央から飛び出してくる音塊はとにかく圧巻。英国が推しただけあって聴いてみる価値はあります。

キング・レコードの日本初回盤(ステレオ)
文字デザイン並びに、タイトルが
「WITH」から「AND」に変更
裏側に解説という倹約ジャケット

最後に番外編。本作の我が国での初お目見えは1969年。英国ステレオ盤に合わせた発売かどうかは分かりませんが、ジャケットからして何だかパチモノ風(笑)。
文字デザインが安っぽく、タイトルも「AND ERIC CLAPTON」と勝手に変えられていました。音質もくぐもった感じで、少し遠くで鳴っている印象。他と比べてしまうとある種のレアアイテムと言わざるを得ません。


Side-A
② "Hideaway"

フレディ・キングのインストナンバー。夢中で弾きまくるクラプトンからは、ブルースに没頭出来る喜びが伝わってくるようです。本作の鍵盤バッキングはメイオール。失礼ながら歌より遥かに上手いです💦

⑥ "What'd I Say"

何とレイ・チャールズのカバー。メイオールのオルガンが大活躍ですが、中盤にJazz風のドラムソロが展開したり、後半はビートルズ「デイ・トリッパー」のリフも挿し込まれるなど遊び心に溢れたセッションです。これぞ英国ブルースバンドの「ごちゃ混ぜ」ぶりが窺える一曲ではないでしょうか。

Side-B
③ "Have You Heard"

私が思う本作のハイライトが、このメイオール自作のスローブルースです。既に「Eric is God」と称されたクラプトンですが、この先の長いキャリアに於いても、ここまで感情移入したプレイも珍しいかと思います。師のメイオールを前に昂ぶる思いをぶつけた名演。憑依してますよ。

④ "Ramblin' On My Mind"

クラプトンのプロ人生初のリードボーカル。曲は戦前ブルースマン、ロバート・ジョンソンのカバーです。後のクラプトンの重要レパートリーにもなりました。ギターの神様、21歳の歌声は初々しい〜。

本作には、1960年代中盤のロンドン界隈のクラブシーンの空気が詰まっているような気がします。夜な夜な、あちらこちらで色んな形のブルースが繰り広げられていたのでしょうか。この時代のマグマのような熱気を感じる1枚です。


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