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【Steel Wheels】(1989) Rolling Stones アーバンな装いで再始動した平成ストーンズ

【スティール・ホイールズ】懐かしいデス。リアルタイムで私が体験した最初のストーンズの新譜でした。
1989年高校の夏休み、陸上部のキツい練習を終えて、ジャージか学ラン姿で輸入盤ショップに立ち寄って本作を予約しました。日本盤はアナログ発売が無かった為に予約が殺到しており、店員さんに米国盤じゃなくて英国盤になるけど大丈夫?と聞かれたことも憶えています。

本作と言えばこの直後のストーンズ初来日も重なり、日本のロックファンには思い出深いアルバムではないかと思います。良い悪いの話は別にして、やはり忘れられない1枚なんですよね〜。

1989年は世界中が沸きました。ミックとキースの不仲で解散説まで囁かれたストーンズがいよいよ再始動で新作を出すというのだから話題は持ちきり。ラジオからは新曲 "Mixed Emotions" が流れていましたね♪

注目の本作でしたが、肝心の評判はといえば同時に始まったワールドツアーの異常な盛り上がりに飲み込まれて、結構あやふやだったと記憶しています。当の私は丁度、全盛期の作品を漁り始めており、本作の大人な感じは正直ちょっと違うかな??…。でもそれを言っちゃイカンでしょ、という空気は確実にありましたね。仕方なくストーンズの新譜だと言い聞かせて繰り返し聴きましたけど…。

それまでに無くアーバンな雰囲気の本作。しかもバラエティに富んだ内容はミックとキースの総意だったのでしょう。マンネリを脱却して今までと違うストーンズにしようという話だったと聞いたことがあります。
2人のソロ活動の経験が遺憾なく発揮されてストーンズサウンドの領域を一気に広めた作品、そんな感触ですね。それこそ昨年の新作にも繋がる近代ストーンズの姿勢は、本作から始まったと私は思ってます。


(アナログレコード探訪)
〜アナログ盤とCDで聴き比べてみました〜

CBSレコードのオランダ初回盤
インナースリーブ

高校時代に買った英国盤は遥か昔に手放してしまい、今でも後悔してます。こちらは少し前に買い直したオランダ盤。

Wikipediaに拠れば、本作はストーンズ初のデジタルレコーディングだったようです。盤の内周部にはDMM(ダイレクト・メタル・マスタリング)、STIRLING、TJの手書き刻印がありました。STIRLINGは米国盤でよく見かけるSterling Sound社のマスタリングの印。TJは同社のチーフエンジニアTed Jensen(テッド・ジェンセン)によるカッティングということでした。
つまり、オランダ盤は米国カッティングの鋳型をプレスに使ったようです。音像も米国盤らしい主張ある感じ。ハイパーな本作のノリが臨場感を伴って伝わってきます。

CBSソニーの日本初回盤CD

一方、こちらは日本初回盤CD。消費税3%です。随分あとに二束三文の中古でゲットしました。久しぶりに聴いてみると、ミックのボーカルがやたらデカいことに驚きました。音量レベルはアナログ盤と大して変わらないのに、ボリューム上げると兎に角煩い(笑)

そうしてみると、CDは小さい音でもハッキリ聴こえる作りだったのでしょう。オーディオブームも過ぎ去り、ミニコンポやラジカセで聴くような時代になって、マスタリングの方向性も変化したように思われます。


Side-A
② "Mixed Emotions"

ストーンズ再始動を高らかに宣言したナンバー。平坦なメロディですがミックの歌は力強く気合い充分。キースのギターもイイ感じ。PVでは2人をはじめメンバーが皆楽しそうに満面笑顔!特にキースがこんなに笑ってるなんて感激…(涙) 世間は2人が仲良くしてる所を見たがってるとようやく理解したのでしょう。

⑥ "Blinded by Love"

カントリー風味が広がる唯一のアコースティックナンバー。ミックがソロで披露するアイリッシュフォークの要素も感じます。マンドリン、フィドルの音色が牧歌的。地味ですが逆に古臭さを感じない曲ですね。


Side-B
① "Rock and a Hard Place"

アーバンストーンズを代表するナンバーと言えばこちら。条件反射で大塚製薬ポカリスエットのCMを思い出すのは私だけではないはずです(笑) キースの16ビートを強調したリフ、ゴージャスなコーラス、ホーンセクションなど……計算されたタイトなアレンジは、当時ミックが思い描く最新型ストーンズだったのでしょう。私はこれ苦手でしたね…(苦笑)

③ "Almost Hear You Sigh"

こちらもアーバンストーンズ。完全なAORバラードですが、ストーンズらしからぬ!?非常によく出来た曲で私は好きです。バブルで元気のあった時代の香りがプンプンしますね。ミックの歌もムード全開。間奏のキースのスパニッシュ調のソロがイイ。本作ではマジメにギターを練習した痕跡がありますな。


④ "Continental Drift"

当時は問題作と話題になった一曲。ミック、キース、ロニーの3人がモロッコに飛んで現地ミュージシャンと録音したエキゾチックなワールドミュージック風味。亡きブライアン・ジョーンズへの弔いとも言われました。この曲が終わると私の脳内は「スタート・ミー・アップ」が流れます。

⑥ "Slipping Away"

ラストはキースが歌うバラード。これがなかなか絶品。もう一曲のアッパーな "Can't Be Seen"よりイイ。心に沁みます。メジャー7th系のお洒落なコードを使う辺りも心憎い。これ以降味をしめて枯れ具合を強調するキースですが、私はこの曲くらいが好きです。本作の素晴らしいエンドロール。

1990年2月にローリング・ストーンズは初来日を果たします。記者会見のショットが音楽雑誌の表紙を飾ったことも懐かしい。東京ドームでは何と10日間の公演が全てソールドアウト!凄い時代でした。
でも私、行けなかったんです。1万円のチケットと東京までの交通費は高校生の私には到底無理…。芸能人が随分と観に行ったようで、タレントの宮沢りえチャン(私と同い年)が行ったと知った時は怒り心頭!絶対に宮沢りえより僕の方がストーンズ好きなのに…‼(泣)


最後に見て頂きたいものがあります。

これ、当然私のではありません。前述の日本盤CDの歌詞カードに挟まれていたのです。前の持ち主が入れたのでしょう。割と良い席で観られたようで…。
私はこれを眺めていると、観に行けなかった自分への慰めになるばかりか、ホントは観たような気になれるんです(笑)。本作を聴きながら半券を眺める、私流の乙な聴き方です♪

昼のワイドショーが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のPVを流す程に日本中がストーンズシンドロームの渦だったあの頃。ワンレン・ボディコンのお姉さんが「サティスファクション最高〜!」と大騒ぎしていた光景をNHKニュースで観たことをつい昨日の事のように思い出します。

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