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【Long Player】(1971) Faces 米国への憧れと懐古趣味

昔、私にフェイセズを教えてくれた先輩がいました。

高校卒業後、名古屋から上京した私が最初にアルバイトしたのが新宿の小田急百貨店地下にあるラーメン屋だったのですが、そこで知り合った方が大変洋楽に詳しかったのです。

3才年上の慶応ボーイ(M先輩とします)で物腰が柔らかく、渋めの古い洋楽ロックに詳しい方で色々と教えていただきました。

M先輩が1番好きなギタリストはロン・ウッド。当時20代始めにしては通な方でした。
当然、後輩の私はフェイセズを仕込まれましたね。

最初に貸してもらったCDが、忘れもしない
この【ロング・プレイヤー】でした。

今思えばせめて【馬の耳に念仏】から貸してくれれば良かったものを、M先輩曰くフェイセズ1番の傑作だからと直々の御達し。

まだ10代だった私には渋味に感じた作品ですが、年齢を重ねて滲みてくる音楽の良さがありますね。


●UK盤レコードジャケット

英国ワーナー・ブラザースのUK初期盤のジャケットです。

古めかしいタイプの紙質で、真ん中のくり抜かれた穴から中が見えるようになっています。

上方から盤を出し入れするオープントップ型。

しかも三方の縁はミシン糸で縫って綴じてあるという非常に凝ったデザイン!コストがかかってますねぇ。

‘’Long Player‘’とは後に略されたLPのことです。かつての出始めの頃の収納袋を模しているのでしょうか。懐かしい感触が伝わります。この時代はジャケもアートですね。

・UK初回盤(マト1)

さて中身です。規格番号WS3011、マトリックス両面1のUK初回盤です。

本作は正直言ってあんまり音質良くないです。ライブ録音も含めた一発録りの曲が多いせいか、全体的に潰れて、こもったような音に聴こえます。

しかし、本当にこんな音なのか納得できず、もう1枚買ってみました。

・UK盤レコード(マト2)

こちら規格番号K46064、マトリックス両面2の初回盤直後のUK盤です。ジャケも同じ仕様。コンディションもほぼ同じ。

同じような音でした。但しこっちの方がマシ。比べてみたらこちらの方が音圧あって迫力ありました。
マトリックス1の初回盤が必ずしも1番音がいい訳ではないようです。

とは言っても潰れてこもった音には違いありません。本作は録音自体が良くなかったと思われます。 

懐古趣味なタイトルにジャケットアート、中身はくすんだ録音によるルーツミュージックの影響色濃いロック。

初めから狙ったとは思いませんが、結果的に本作は作品全体のコンセプトを感じます。
この辺はロニー・レインの趣味の気がしますね。


結局、レコードの音に関しては…

こちら80年代半ばのドイツ再発盤です。
私が初めに買ったこの廉価盤が1番聴きやすい。

リマスタリングされた音は全くの別物。
かなり持ち上げているので、少々ウルさく感じますが、音色は明るく各楽器が際立ってとても聴きやすいです。

本作はド再発盤くらいの方がイイんじゃないかというのが目下私の結論です。

【Long Player】(1971)

A-①「Bad ’n’ Ruin」
 ②「Tell everyone」
 ③「Sweet Lady Mary」
 ④「Richmond」
 ⑤「Maybe I’m amazed」
B-①「Had me a real good time」
 ②「On the beach」
 ③「I feel so good」
 ④「Jerusalem」

フェイセズと言えばラフでルーズなノリのロックンロール。そんなイメージを満たしてくれるのがA-①、B-①でしょうか。

どちらも引きずるようなルーズなリズムが最高です。ロン・ウッドのリードかリズムか分からないようなギターが渋い!

B-①は後半が別の曲へとジャム的展開。ボビー・キーズのサックスがブロウしてます。

こちらA-①スタジオバージョン。

A-③は米国への憧れが感じられるフォーク調のミディアムバラード。ロン・ウッドのスライドギターとイアン・マクレガンのオルガンが郷愁感そそります。


そんな本作の中で光るのが次の2曲です。

まずロニー・レイン作のA-②。胸を打つロッカバラード、名曲です。ロッド・スチュワートの情感溢れるボーカルが素晴らしい!
ロニーはソロでも再演してるのですが、やはりこのロッドの歌が文句なくイイです。


そして目玉と言えるのがフィルモア・イーストでのライブ音源を収録したA-⑤「恋することのもどかしさ」こちらはポール・マッカートニーのカバー。

当時ポールの1stソロからこの地味な選曲、一体誰のアイデアだったのでしょうか。グッドジョブ!

ロニー・レインの歌い出しから、ロッド・スチュワートが歌い継ぐこのフェイセズバージョン。ソウルフルに熱を帯びていく歌、演奏がとにかく素晴らしいです!

BBCのスタジオライブでしょうか。ロニーとロッドが肩を抱きながら1つのマイクでハモる所などなかなか胸熱くなる演奏です。

もう1つのフィルモア録音で、熱いブルースのカバーB-③の後、静寂に響くロン・ウッドのドブロギターが美しいインストB-④。
遥か彼方の米国への想いが切なく伝わってくるようです。

こうして聴いてみると、本作はロニー・レインを中心にしながら、メンバー5人が1つに纏まったピュアな魅力がありますね。

米国への憧れが目一杯詰まった、英国バンドの素敵なロックアルバム。
かつてM先輩はこれを私に教えたかったのかな、などと今でも思い出すのです。

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