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内外の六処について法を観つづける 中部#10 念処経 読了 その9 (法随観 六処)

中部#10 念処経 読了記事のつづき(その9)です。


法随観 目次

  • 五蓋ごがい (pañca nīvaraṇāni)

  • 五取蘊ごしゅうん (pañc-upādānakkhandhā)

  • 六処 (内処, 外処) (cha ajjhattika-bāhirāni āyatanāni)

  • 七覚支 (satta bojjhaṅgā)

  • 四聖諦 (cattāri ariyasaccāni)

法随観 六処

(法随観を修習する)比丘は、次のように六の内処六の外処の法において法を観つづけて住む、と説かれています。内処Aを知り、もろもろの外処Xを知り、両者によって束縛 (saṃyojana) が生じることを知り、未だ生じていない束縛がどのように生じるかを知り、既に生じている束縛がどのように断たれるかを知り、断たれている束縛が将来どのようにして生じないかを知る、と。

比丘たちよ、ここに比丘は、
 げんを知り、もろもろのしきを知り、その両者によって束縛が生じることを知ります。未だ生じていない束縛がどのように生じるかを知ります。また、既に生じている束縛がどのように断たれるかを知ります。また、断たれている束縛が将来どのようにして生じないかを知ります。

パーリ仏典 中部 根本五十経篇I 片山一良
第10 念処経
p.180

上記の前半部分のパーリ文は以下の通りです。

‘Idha, bhikkhave, bhikkhu cakkhuñca pajānāti, rūpe ca pajānāti,
yañca tadubhayaṃ paṭicca uppajjati saṃyojanaṃ tañca pajānāti,

MN I 61

パーリ文: tipitaka.org

  • Idha, bhikkhave ここに, 比丘たちよ

  • bhikkhu: m. 比丘, 乞者, 乞食者

  • cakkhuñca = cakkhuṃ ca

    • cakkhuṃ 眼を (sg. 単形)

      • cakkhu: n. 眼, 目

    • ca: conj. …と, そして, また

      • …ca…ca …と…と

  • pajānāti: 知る, 了知する

  • rupe もろもろの色を (pl. 複数形)

    • rūpa: n. 色, 物質, 肉体, 形相, 容姿, 像, 相, 画, 人形

  • yañca = yaṃ ca

    • yaṃ 関係代名詞

  • tadubhayaṃ paṭicca その両者によって

    • tadubhayaṃ = taṃ ubhayaṃ その両者

      • taṃ 「その両者」の「その」にあたる指示代名詞

      • ubhaya: a. 両の, 二つの

    • paṭicca: adv. [pacceti の ger.] 縁りて, のために, 理由で

  • uppajjati: 起こる, 生ずる, 発生する

  • saṃyojana: n. 結, 繋縛, 結縛. =saññojana

  • tañca pajānāti それを知る

    • tañca = taṃ ca

      • taṃ それを

パーリ語釈: 増補改訂 パーリ語辞典 水野弘元 (春秋社)

六処 (内処, 外処)

六内処は眼耳鼻舌身意げんにびぜっしんいのことで六根ろっこんとも呼ばれ、六外処は色声香味触法しきしょうこうみそくほうのことで六境ろっきょうとも呼ばれます。六内処と六外処を合わせて十二処といいます。六内処のうち、眼耳鼻舌身が感覚能力/器官、意が知覚能力/器官であり、これらの感覚・知覚の対象となるのが六外処の色声香味触法です。

(6) 意処 (mano-āyatana) 意根ともいう。前の五処が感覚器官または感覚能力であるのに対し、これは知覚器官であり知覚能力である。

仏教要語の基礎知識 水野弘元
p. 140

「意」の対象となる「法」については、分かりにくいかと思いますので、スマナサーラ長老の解説を引用します。

意に触れる情報は、仏教用語で「法」と言いますが、現代的な言葉でいえば「概念」です。それは存在しないので、「幻想」だと理解した方が効き目が早いです。… 頭に浮かんだ概念は意根の対象です。それを確認します。

大念処経 ヴィパッサナー瞑想の全貌を解き明かす最重要経典を読む
アルボムッレ・スマナサーラ
法の随観 (一部省略)
  • 六処 (内処, 外処), 六内外処

    • cha ajjhattika-bāhirāni āyatanāni

      • cha: num. 六

      • ajjhattika: a. 内の

      • bāhira: a. 外の, 外部の

      • āyatana: n. 処, 入, 入処

六内処と六外処の組み合わせは以下の通りです。パーリ文では、六外処は単数形ではなく複数形で表現されています。

  • 眼 (cakkhu), もろもろの色 (rūpe, pl. 複数形)

  • 耳 (sota), もろもろの声 (sadde, pl. 複数形)

  • 鼻 (ghāna), もろもろの香 (gandhe, pl. 複数形)

  • 舌 (jivhā), もろもろの味 (rase, pl. 複数形)

  • 身 (kāya), もろもろの触 (phoṭṭhabbe, pl. 複数形)

  • 意 (mano), もろもろの法 (dhamme, pl. 複数形)

また、スマナサーラ長老は、内処と外処の両者によって生じる束縛 (saṃyojana)として、十種類の束縛(十結)を解説されていますが、ここでは説明が長くなってしまうので、割愛させていただきます。
(ちなみに、法随観のパーリ文では、十結へは展開せずに束縛 saṃyojana とだけ書かれています。)

その9 まとめ

六処において法随観を修習する時は、内処Aを知り、もろもろの外処Xを知り、両者によって束縛が生じることを知り、未だ生じていない束縛がどのように生じるかを知り、既に生じている束縛がどのように断たれるかを知り、断たれている束縛が将来どのようにして生じないかを知る、と六の内処六の外処の法において法を観つづけて住む。

法随観を修習して、内外のもろもろの法において法を観つづけて、もろもろの法において生起・滅尽の法を観つづける比丘には、〈法のみがある〉との念が現前し、かれは依存することなく住み、世のいかなるものにも執着することがない。

参考訳: パーリ仏典 中部 根本五十経篇I 片山一良 (大蔵出版)

つづく

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