火車/宮部みゆき
ミステリ書評第1回目を飾るのは宮部みゆき著・『火車』です!何にしようか迷った挙げ句、社会派ミステリの傑作である本作としました。
カードローンの借金が原因により自己破産した女性と戸籍乗っ取りにまつわる2人の女性の過去を丹念に描きます。山本周五郎賞受賞、東西ミステリベスト100国内5位の本作をレビューします。
基本データ
発行: 1992年
ページ数:590P
ブクログ登録数:34,768人
ブクログ平均点:3.83
※2024年6月時点です。
あらすじ
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。捜索を続けて行くうち、彼女は自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消していた事が判明。なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。。。
魅力的な謎/意外な結末(7/10点)
アッと驚く感じのトリックでは無いのだけど、出て来る二人の女性の"幸福な生活(アッパーミドル)"への渇望の描写、第三者から語らせる2人の置かれた境遇が伝わって来て切なかったです。
ココをもっと強調してくれたら良かったかな。"あのラスト"は賛否両論分かれそうだけどラストの段階で560辺りまでページ来てるので、これ以上引っ張られてもキツかったかな。
読みやすさ/のめり込み度(6/10点)
冒頭が少し重い印象。文章としては読みにくくも無く読みやすくも無く、と言った印象。ただ、作品の魅力として、どんどんページを捲らせる推進力はあると思います。
"お遣い小説"とでも言うのかな。手がかりが川口にあると分かったら川口、そこで次の手がかりが分かったので宇都宮、そこから大阪、、、と転々として行く部分が少し冗長です。
総合オススメ度(S/SS~C)
普段はミステリは1回読んだら再読する事は無いのですが、本作は時間を空けて2回読んでいます。2回目の方が切なさや、社会的背景や"女性と消費"と言うカテゴリについて深く考えました。この感覚をミステリで持つのは珍しいです。本作の下地となる人間心理とか社会構造は現代にも深く根付いていると思います。
宮部さんは色んなジャンルの小説を書いているけれど、一般的には社会派ミステリの人と言う位置づけだと思います。ロジカルな謎解きとかは出て来ないので、そこの点が気にならなければ、読んで損は無いと思います。
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