大人はもっと綺麗だと思ってた
私は男が嫌いだ。
すぐに嘘をつくし、精神年齢低い人が多い。
適当な所ばかりで馬鹿みたいな言動も多い。
本当に大っ嫌いだ。
なのに私は、その男達にとっての『都合のいい女』を演じ続けている。
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二年前の秋、私は大学に通うために田舎のちいさな町から都会に出てきた。
恋愛もろくにしたことがなく、恋愛年齢は恐らく中学二年生くらいで止まっている。
素敵な出会いがあればいいなぁと、
呑気に考えながら一人暮らしを始めた。
最初の頃は家事やバイト探しに追われる日々。
自分のことで精一杯だった。
大学ではサークルではなく部活に所属した。
運動部のマネージャーである。
しかも部活なだけに、拘束時間が長い。
しかしやりがいはあった。
高校時代もマネージャーをしていた為、ノウハウは分かっているし楽しい事も知っていた。
授業、部活、バイト、その繰り返し。
息付く暇もなく毎日動いた。
一見充実してるように見えるこの生活。
これは徐々に私の体を壊していった。
睡眠時間が大幅に削られ、バイトや部活ではどんどん責任重大な仕事が増えた。
頼られるのは嬉しかった。
みんなの為に、もっと必要とされたい。
その気持ち一つで応え続けた。
ノーとは言わない、イエスマンだった。
朝5時には起床、練習に行きそのまま授業、授業が終わったら速攻で再び練習、その後3~4時までバイト。
仕送りなしで部活と一人暮らしを続けるにはこれくらい働くしかない、そう思ってた。
しかし所詮は脆い人間だ。
私はすぐに過労で倒れた。
「貧血、睡眠不足、栄養失調ですね。」
看護師さんの声が聞こえて目を覚ますと、自分の腕から伸びた管が点滴に繋がっていた。
「うわ、やらかした…。」
私は頭の中でいつ倒れたのか、その後の仕事は大丈夫だったのか、何時間で帰れるのか、そういったことをぐるぐると考えた。
それを察知したかのように、看護師さんは少しだけ苦い顔をした。
「今は自分の事だけ考えて。貴方倒れた時、記憶朧気になりながら『まだ部活の書類出来てない…』って呟いてたのよ?」
そう、私は昔から自分の優先順位が低かった。
自分はいいから、他の人のために。
聞こえはいいが、悪く言えば『人に嫌われるのが怖くて怖くてたまらない小心者』である。
その後はバイトの時間を少し減らしながら、出来る範囲で働いた。
しかし一度切れた気持ちは元には戻らなかった。
頼るのが下手くそな私は当時、周りになんでも相談できる存在がなかった。
結果、一人で悩みを解決して生きるしかなかった。
気分はどんどん落ちていった。
ある日、小さい頃から患っていた持病が酷くなり病院へ駆け込んだ。
医者が言った。
「…貴方、一度心療内科に行きなさい」
「はい?」
何故心療内科を勧められたのか、
意味が分からなかった。
でも行くしかなかったので半信半疑で心療内科を受診した。
「重度の鬱病ですね。」
私は鬱病になっていた。
気づいていないと言ったら正直嘘になる。
自分の気持ちが思っているより持ち上がらず、何をするにも気力が湧かなくなっていた自分が怖かった。
鬱病、という名前を貰って少し安心もした。
「誰か、頼れる相手を見つけましょう」
医者は優しい声で私にそう言った。
頼れる相手がいないから鬱病になったんじゃ…?
その言葉を飲み込んで私は心療内科を後にした。
頼れる相手探し。
これが私の人生を大いに狂わせるきっかけとなった。
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