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観音様はどこ? だれ? なに?『観音経 奇蹟の経典』

ぼくの母方の祖母―おばあちゃんは、人間ではない―

そう信じて生きて来た、40年以上。
愛情、やさしさ、寛容、温和…あらゆる言葉で表現しても言い表せないあの人格。熱を出して寝付けないぼくの背中をゆっくりさすり続けてくれた。ゆっくり、ゆっくり…真正のおじさんになった今でも、あの感触は残り続けている。
つらいとき、かなしいとき、腹をたてたとき、ごまかそうとしたとき…おばあちゃんが頭に浮かぶ。そして深呼吸をすると落ち着いてくる。

「ぼくのおばあちゃんは、人間ではない」―「慈悲の菩薩」なんだ、そう信じ続けています。

「伝統的な仏教学においては、観音さまが男性とされたとしても、現代のわたしたちはなにもそれにこだわる必要がないのかもしれない。われわれとしては思いきって、観音さまは性を超越した存在である、と言ってよいのではなかろうか……」

「観音さまは、男性でもなければ、女性でもない。そして同時に、観音さまは男性であり、また女性であられる。そのことを、わたしは言いたかったのだ」

「わたしは、「南無観世音菩薩」の称名が、「念彼観音力」そのものが、奇蹟であると思っている。奇蹟とはなにか?……と問われれば、称名させていただけるそのことが、大きな奇蹟なのだと答えたい」

ひろさちや『観音経 奇蹟の経典』本文より


本書は1982年(昭和57)に大蔵出版から刊行されました。
復刊シリーズ「ひろさちや仏教名作選1~3」と並ぶ、名著復刊です。

『観音経』は、「諸経の王」と呼ばれる『法華経』の一部『妙法蓮華経』の第二十五品(第二十五章)、「観世音菩薩普門品」をとりだして独立させたもの。釈尊が、観音さまの名前のゆえんを説明し、観音さまがわれわれ衆生をそのさまざまな苦難から救ってくださり、また衆生救済の方便のために観音さまが三十三の変化身をとられることを解き明かしている経典。
『般若心経』と並んで広く親しまれている『観音経』が、筆者の手にかかると見ごとに現代によみがえり、無類の面白さと深い真理の世界を見せてくれます。新鮮な発想とやさしい文体で、『観音経』理解のための絶好の入門書とも言えましょう。

「観音菩薩はさまざまなお姿に身を変えられて、わたしたちの前に出現される」…気づけばすぐそばに。

担当編集者:K

本書は2月の新刊です。
ただいま予約受付中

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『観音経 奇蹟の経典』ひろ・さちや著
定価 ¥1980(税込)

内容紹介
『般若心経』と並び親しまれている『観音経』の世界が、見ごとに現代によみがえり、無類の面白さと深い真理の世界を見せてくれる。

ひろさちや
1936年(昭和11年)、大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。1965年から20年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動をおこなう。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。2022年(令和4年)、逝去。

【目次】
序 章 仏教において奇蹟とはなにか
第一章 そのとき、あなたは
第二章 七つの災難
第三章 わが心のうちなる三毒
第四章 性を超越した存在
第五章 無功徳なる功徳
第六章 無限の姿とかたちをとる観音さま
第七章 清らかなる布施
第八章 詩による応答
終 章 再び、奇蹟とはなにか
原文 妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五
解説 復刊に寄せて ひろさちや氏のこと―松平實胤

ISBN:9784333028863
出版社:佼成出版社
発売日:2023/02/28