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朝鮮人民軍のMi-2ヘリコプター


旧単一塗装時代のMi-2 (KCTV)
緑と茶色の新迷彩に更新されたMi-2 (KCTV)

Mi-2 (NATOコードネームは"ホプライト") はソ連のミル設計局が設計・開発し、ポーランドのPZL-シフィドニクが生産した双発軽ヘリコプターです。連絡、偵察、貨物輸送に適した手頃なヘリで、乗客は最大8名、機内に最大700kg、または機外に吊り下げる形で最大800kgの貨物を輸送できます。

1977年に最初のMi-2の納品機を取得した北朝鮮は、その後も納品し続けており平安北道の方峴 (パンヒョン) 空軍基地でMi-2の組立を行いました。組立の拠点は後に咸鏡南道の海岸近くの宣徳 (ソンドク) 空軍基地に併設された工場に移りましたが、1984年に方峴のヘリコプター工場が完成したことでヘリコプターのセミノックダウン生産の体制が整いました。北朝鮮版Mi-2は革新-2 (ヒョクシン-2) として知られ、最終的に約140機が配備され、各地の飛行場やヘリポートで運用中です(なお、このMi-2の生産に関連して北朝鮮がポーランドに多額の債務を返済しないままとなっており、2012年に全て清算されたとVOAが報道しました)。

航空機工場を備え、北朝鮮の航空機産業の中心といえる方峴空軍基地。座標は39°55'07"N 125°13'00"E (Google Earth)
ヘリコプター工場は基地から北へ約7km離れた場所にある (Google Earth)


北朝鮮のMi-2は通常の輸送だけでなく、改修を施すことで対地攻撃も可能な軽攻撃ヘリコプターとしても活躍しています。機体左右に兵装パイロンを設け、そこにソ連製対戦車ミサイルの9M14マリュートカ (または国産化された火の鳥-1) を最大で4基、57mm口径のS-5無誘導ロケット弾を16発装填するUB-16-57ロケット弾ポッドを2基懸架可能な設計となっています。これにより兵員輸送をこなしつつ、ある程度の地上支援を行うことができます。これは実際に軍事境界線や白翎島などの韓国の島嶼に近い空軍基地にMi-2が多数配備されていることからも明らかです。実現可能かはともかく、有事には多数のMi-2 (その他の輸送ヘリも含む) に完全武装した兵員を乗せ、韓国への侵入を行うことを想定しているようです。

また、2010年に新義州を襲った洪水ではMi-2が被災者救援のために派遣されました。

パイロン上に見えるのは9M14用のレールで、左右に2基ずつ搭載 (KCTV)
UB-16ロケット弾ポッドをパイロンに懸架した例 (KCTV)
ロケット弾を発射するMi-2 (KCNA)

また、近年では新たに開発された画像誘導式対戦車ミサイルのテストにも本機が使用されました。トップアタックで装甲の薄い戦車の砲塔上部を狙えるため有効な兵装ですが、詳細は不明です。

2016年にテストされた画像誘導式対戦車ミサイルが標的に命中する様子 (KCTV)

また、珍しい例ですが白く塗装された民間仕様のMi-2も存在し、パラシュート降下競技の訓練のため新義州で活動しているようです。2013年に実際にその様子が中国国境側から撮影されました。

民間仕様のMi-2 (KCTV)


科学技術殿堂に展示されているMi-2の模型 (朝鮮の今日)
西海方面の苔灘(テタン)にある空軍基地に配備されたMi-2。座標は38°07'49"N 125°13'56"E (Google Earth)
軍事境界線からわずか50kmほど離れたヌチョンリ空軍基地に配備されたMi-2。座標は38°14'08"N 126°07'54"E (Google Earth)


参考文献

・朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍 (著 ステイン・ミッツァー/ヨースト・オリマンス) 大日本絵画

https://www.cia.gov/readingroom/docs/CIA-RDP04T00447R000200810001-3.pdf (PDF)


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