クロニクル
※マガジン『ガンキッズ』→リンク
-----------------------------------------------
★昭和~平成 (プロローグ)
…………………………………………………………
・大きな戦争の開始。そして終結。荒廃した国土において、人材こそが最重要な資源とされた。「産めよ、殖やせよ」というスローガンが提示された。
・空前のベビー・ブーム到来。ただしこの当時の大人世代は、敗戦の衝撃により価値観を根本から破壊されていた。育児や教育の指針を喪失していたため、子供を過保護に育てる傾向が顕著だった。
・復興。彼らは戦争への情熱を経済活動に転換した。これまで見下げてきた諸外国に土下座しながら金儲け第一主義で働き続けた。美しい自然を切り崩してビルや道路を建設した。代々受け継がれてきた文化財や伝統芸能を低俗な見世物に貶めた。先祖が千年かけて作り上げてきたプライドを売り渡した見返りに利益を貪るその姿は外国からはエコノミック・アニマル……金儲け動物、と、揶揄された。
・劇的な経済成長。結果として得られた豊かさを、彼らは子育てにつぎ込んだ。同時期、欧米から享楽的な文化が流入していた。エロ・グロ・バイオレンス……成長していく子供に、それらを取捨選択することなく与えた。歴史上例のない低レベルの世代は、そうして育成されていった。
・その世代の成長。そうして育った子どもたちは学生になると、親掛かりの身分で革命をうたいテロリズムのまねごとをはじめた。しかし真摯さはなく簡単に制圧されると途端にしゅんと萎縮し、その後は、さんざん批判していた資本主義社会の中に、こそこそと紛れ込んでいった。
・その世代のその後。後世に遺る何事をも創造せず、蓄積もせず、労働を厭い、それでいて、贅沢を望んだ。上の世代が国のプライドを売り渡して蓄積した富をただ浪費して終わった。
・その世代の老後(1)。老いてもなお彼らは利権にしがみついた。いつまでも職場に居座ったが、勤労意欲があるわけではなかった。管理職という名目で実効的な作業をしないばかりか、理不尽な指示で生産性を下げ、そのくせ高額の報酬を貪った。その犠牲となった若者世代は、契約や派遣といった不安定な雇用形態で低賃金労働を余儀なくされた。
・その世代の老後(2)。引退して以降も、この世代は社会の寄生虫となった。下品で悪質なクレーマー消費者群としてマークされた。街中でも幼児のようにすぐ興奮し常軌を逸して暴れ、鼻つまみ者となった。
・その世代の犯罪(1)。この世代が未成年だった頃は少年犯罪率が異常に多かったが、老化しても分別はなく、この時代になると老人の犯罪率が激増した、それも万引きや痴漢など卑劣な犯罪が多く、社会全体のモラルと安全性を著しく毀損していた。
・その世代の犯罪(2)。判断力や運動神経が鈍ってからも自動車の運転を続け、事故を多発させた。暴飲暴食の生活を続けいよいよ体が動かなくなると完全介護を要求し病院のベッドを占拠した。その1年間の経費は単純計算で若者5人分の進学費用を超えた。公的年金制度は、この世代が下の世代から搾取するシステムとしてのみ徹底的に利用された末、破綻。
・世界情勢。反グローバリズムが進行。多くの国家が地域ごとに連携連合、その単位で事実上の鎖国政策へと進む。資源を持たず経済力も失った弱小国にとって唯一の生存戦略は、その未来をAI(人工知能)に委ねることだった。
★令和元年〜「不老技術の完成~実用化~禁止」
……………………………………
・令和0X年、医療技術が臨界点を突破。すなわち不老不死テクノロジーの完成。
・再生医療技術の臨床実験が次々と成功。iPS細胞を培養することにより全身どの部位の組織でも作り出すことができ、拒絶反応なく付け替えることができるようになる。体の一部を事故で失っても、飲酒や癌で内臓を損なっても、新しいものを移植すれば元通りになるということ。古くなった部品を取り替えていくことで機械を長持ちさせるように、身体を更新し続ける発想。この施術を続けることで理論的には永久に生き続けることが可能となる。
・富裕層においてこの技術のニーズは高く、定期的に若返り手術を受け、事実上不老不死となる人々が増加した。
・不老遺伝子解明の発表と前後して、一部の大富豪が既に遺伝子治療により不老化に成功しているとの噂が流れる。事実であれば無認可の技術であり、費用は極めて高額になることも想像に難くないが、この治療を受けた場合は以後、若返りの手術すら必要がなくなる。
・その後「不老者(ホープレス)症候群」の発生が報告され、やがて社会問題となる。不老者=老化を止めた人々の96%が、1年以内に異常をきたしていることが判明。知能の著しい低下、感情反応低下、等が主症状。身体的には健康であるにも関わらず立ち上がることもできないほど無気力化する例、あるいはそんな状況から凶暴化し無目的な通り魔犯行に走る例なども、多く見られた。
(※この時点において人類は遂に死を克服することに成功していたわけであるが、同時にそこが終着点ではないことも判明したことになる……永遠に生きるとはどういうことか!?)
いただいたサポートが1食ぶんに達するたびに次の作品をアップしますね。おわんおわんおわん……