勤路記42.あたしゃ忘れない
あいさつは大事だよ。
少し前のCM「よーく考えよーお金は大事だよー」を聞いて「なんやねん、わざわざやかましな」と軽くイラついていたのと同じ感じになるぐらいあたりまえのこと。
通学路の旗振りの方々、暑い中毎日子どもの安全のためにありがとうと思い見ているが、そのうちのお一人が、あいさつをしない、できない子どもに対して、「あいさつしないの?!」とか「返事しないね!!」と結構大きい声で叱る、とまではいかないけれど、まぁ、あいさつを強めに促していらっしゃる。
悪いことじゃない。
あいさつは絶対したほうがいい。
ただ、それを見ていると私が小学生の時の通学路にいた「おはようオバン」を思い出し苦い気持ちになる。
その人は、学校近くに住む年配の女性で、いつからか通学路に毎朝立ってはかなり大きな声で通り過ぎる子どもらに「おはようございます!おはようございます!」とがなりたて、返事のない子にはさらに大きな声で「あいさつ出来ひん子はあかんよ!!!!」などと叱責に近い言葉をがなり立てていた。
すでに高学年だった私は「あいさつというものは人に強いられてする物ではない。それに知らん人にあいさつする義務はない!」と決意し、ある日オバンにあいさつを返さなかった。
「おはようございます!」というオバンの横を、隣の子と話をするふりをして無視して通り越した。全身の血が沸るような、頭の後ろがカーッとするような高揚感を感じた次の瞬間、後ろから「1番前歩いてる(高学年は集団登校の先頭)のにあいさつも出来ひんなんてどうなってんの!!あいさつも出来ひんのに×△⚪︎⭐︎」
後半は聞こえなかったが、大きな大きな声で叱られた。
恥ずかしさとみじめさで血の気が引いていく感覚、怒りと後悔でごちゃごちゃになる心情、それでもみんなの手前、何事もなかったように振る舞うけれど、細かく振動する手先。
あの時のそれもこれも全部「あいさつを良かれと思って強めに指導する」場面をみると割とリアルに思い起こされる。
これ書いてる今もたぶん体温は上がってる気がする。
ただ、オバンがその後どうなって、私がそのあとどうしてたかの記憶はない。
うちの子らはあいさつができない。
とりあえず私からは「あいさつはしておいた方が色々と得だよ」ぐらいの声かけにしている。
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