kozue

日常の小さな幸せや哀しみを、そっとすくい上げて言葉にしたい。

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最近の記事

寒くても

外を歩くと指先が氷みたいに冷たくなった。こんな夜は高村光太郎の詩の一節を心の中で繰り返す。 冬よ 僕に来い 冬よ 僕に来い 寒いのは辛い。だけど潔く受け入れよう。自分の身体をギュッと抱きしめ冷たい風の中を歩いていく。私は負けない。夜空を見上げるとオリオン座が輝いていた。

    • がんばったあなたへ

      今日も一日お疲れ様でした。 頑張ったことは自分自身が一番よく知っているから。だから自分のこと、いっぱい褒めてあげてくださいね。 自分のことなんて褒められないよっていうあなた。それなら私が代わりに。 言いたいことも飲み込んで、辛くても笑顔で、よくがんばりましたね!偉い! 明日はきっといいことあるよ。

      • からっぽ

        からっぽに ホッとする時がある 例えばお弁当箱 からっぽのお弁当箱 朝は不機嫌そうにしていたけれど もりもり食べて 元気になった姿が目にうかび 安心するのだ 例えば家 からっぽの家 お客さんの理不尽な要求と 愚痴ばかりの同僚に 何度も頷いた後の 誰もいない家 家族が帰ってくるまでの わずかな時間 その静けさに 救われるのだ 例えば心 からっぽの心 眠りに落ちていくとき 嘘が夜に溶けていく 本当の私がここにいる 朝が来たら からっ

        • 十回目の結婚記念日に

          記念すべきその日 あなたからは何も無かった 何も無かったことが問題なのではない 何も無かったと がっかりしている私がいたことが 問題なのだ あなたはいつものように 乱暴にドアを開け帰ってきた 何も言わずにテレビをつけ つまらないバラエティを見ながら 大好きな唐揚げを食べ つまらないコントに 声をあげて笑った そして突然 オカン元気にしてるかな と 呟いて 部屋を出て行った 何をがっかりしているのだ、私は ときめきもなければ安らぎもない

        寒くても

          呼ぶな 私のことを 返事などするものか 「〇〇さんの奥さん」とか 「〇〇ちゃんのお母さん」とか 何をしていても 追いかけてくる 声、声、声 私は一人の女 役割りも肩書きもない 一人の女なのだ 呼ぶな、呼ぶな、呼ぶな 力をこめて 声を踏みつぶす

          夜の南海電車で

          初夏の夜。難波発の区間急行の中に私とその人はいた。車内は冷房があまり効いておらず、二人ともじっとりと汗をかいていた。私たちは一緒に映画を見た帰りだった。映画の内容はもう思い出せない。おそろしく不細工なゾンビが出てきたような気はする。 今度はいつ会える? その人は何度も聞いてきた。私はもう会いたくはなかった。他に好きな人がいたからだ。けれど、その人を傷つけてしまうことが怖くて、曖昧に頷いたり首を傾げたりを繰り返していた。もう会わない。その一言がどうしても言えなかった。 じ

          夜の南海電車で

          はじめまして

          kozueです。仕事と家事の合間に読書を楽しんでいます。そして、創作も。一人でも多くの人に私の言葉が届きますように。

          はじめまして