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love letter from K. Season5「好きと嫌い」4. エンギ・モノ

KOZLIFEをご覧の皆さん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。(※この記事は2022年1月に書かれたものです。)
さて、皆さんはどんな年末年始を過ごされましたか?僕はというと、実家で脳が溶ける程ボーッとしようと思い立ち、地元の友人には一切会わずひたすら何もしない日々を送りました(笑)。休みがあるとついつい予定を入れて結局忙しくなってしまうのと、LLFKで「何もしない」とか言っているからには、一回そんな正月を迎えてみようじゃないかと。 結果は、まずまずの成功。暇の向こう側、脳が溶けそうな瞬間を感じ取りました。

さぁ、今年はどんな年になるでしょうかね?きっと色んな事があるでしょうけれど、頑張りすぎず自分のテンポでいきましょう!というわけで2022年最初のLLFKは、「縁起」のお話しです。

ツキがある

今年の1月11日は、暦(こよみ)の中で“天赦日”と“一粒万倍日”が重なる日でして、一年の中でも“事始め”に適した「最強開運日」でした。この日に新しい事を始めたり、目標を立てたり、結婚や引っ越しなどをする方も多かったようです。僕も財布を新調し、神棚に寝かせてから使い始めることにしました。

昔から、事あるごとに暦を見たり月の満ち欠けを調べては「プロジェクトの公開日はこの日にしよう。」などと日程を決めてきました。僕自身、特に宗教的に傾倒している訳ではないのですが、暦とか新月とか何かにつけて縁起を担ぐのは嫌いではありません。この手の情報はちょっと調べれば沢山出てきますが、例えば月の満ち欠けの話。

月のバイオリズムは新月→満月→新月の繰り返しです。新月は名の通り新しい事を始めるには良いタイミング。新月から満月にかけては“インプットの周期”、学びやノウハウを吸収するのにぴったりです。そして、満月は何かを達成させたりするのに良く、満月から新月にかけては“アウトプットの期間”となり、自分から周りへ何かを還元するのに向いていると言われています。

このルーティーンは実際に結構活用してまして、仕事でも、ついアウトプットばかりになってしまうので新月のタイミングで少し知識を貯めてみようかな、という具合に使っています。またお礼なども忘れがちなので、満月を見ると、何か忘れていないか思い出すようにしています。

運の良い人を「あの人はツキがある」などと言いますが、これはまさにツキ=月を良く見てバイオリズムを知った上で、月を味方に付けている人を指すそうです。他にも例えば、新月の日に株価が上がるという傾向があったりします。実際に月は人間の心に作用するという研究があり、平安時代から長きに渡り月に魅了された人達の文献が多いのも、確かに頷けますよね。

縁起は人次第

暦や月をはじめとする縁起の類は、歴史こそ長いですが、実は科学的根拠はありません。先祖代々からの言い伝えの賜と言っても良いようです。しゃっくりが100回出ても死ぬことはないでしょうし、最近では北枕は縁起がいいと言われています。今まで信じていたものが、意味がなかったとわかったり。…ここでふと思ったのです、「それなら、自分だけの縁起が存在してもいいのでは?」と。例えば、自分に起きたストーリーを記録したり、それにまつわるモノを買ったり。

ファッションブランドのポール・スミスにはウサギをモチーフにしたものが多いのですが、それには理由があります。それは1976年、初めてのパリ・コレクション開催のこと。さすがのポールも不安だったようで、ショー直前、故郷ノッティンガムに向かう列車の窓から偶然見えたウサギを心の拠り所としたといいます。ショーは成功し、以降、ウサギはポール・スミスにとって特別な存在として、彼の膨大な収集品の一部になっているそう。これは、随分昔にポール・スミスでウサギのオブジェを買った際、店員さんから聞いたお話。こういうプロダクトって以前は多かったのですが、最近はあんまり見ません。機能や形だけではない「心の余白」を感じられるのが気に入っています。

自分だけの縁起

今日本の消費は「もう買いたいモノがない状況」と言われているそうです。経済を回すために、あの手この手で損得勘定をくすぐるキャンペーンが行われ、「抽選で購入金額の全額を還元!」と聞くと、人は「買わなければ!」と落ち着かなくなります。さほど必要ながなくてもそのチャンスを得るために無理矢理買うのは、ゲーム的で楽しそうでも、個人的にはどこかに大切な何かを置き忘れたままのように感じます。「好き」でも「嫌い」でもない、感情を抱かれないモノほど可哀想な存在はありません。

そう考えて身の回りを見てみると、自分だけの理由やストーリーをつけて使い始めたモノは、意外と長く使っている気がします。特にセールだった訳でも流行だった訳でもないですが、節目に買ったモノや、落ち込んでいた時に験担ぎで買ったモノ。それを見れば、その時の思い・ストーリーを振り返る事ができる。そうやって使い続ければ、モノはきっと大切な存在に育っていくのではないでしょうか。自分だけの縁起ができたら、それを子どもに語り継いでみるのも良いかもしれません。

つづく

和田 健司
オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。


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