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ハギトモさんと ばあばの手紙

「そうか、そうだったんだね。」
皆、うんうん頷きます。

外はギラギラと日差しが照りつけている 昼下がりの こざるカフェ、
こざる達は、昨日のラジオ番組のインタビューを聴き逃し配信で聴いています。

「ハギトモさんのインタビューだよ!」

ハギトモさんこと、元水泳選手の萩原智子さんです。

「5歳の息子さんと、先日、庭にビニールプール出して一緒に遊んだんだって!」

楽しくなって子供用の滑り台を滑ろうとしたら、お尻が入らなかったそうです。

「水泳選手として大活躍していて、でもシドニーオリンピックでは残念ながら4位だったんだよ。」
「メダルが獲れなくて、もちろん悔しいのと、心ない言葉をぶつけられたりしたのとで、三ヶ月、怖くて家から出られなかったんだ。」
「そんなこと言うなんて、ほんとおかしいよ!」
こざるちゃんが怒った口調で、きっぱりと言います。

「でも、たくさんの励ましのお便りが届いたんだ。」
「その中で、一番心に響いたのが、『60代のばあばより』っていう お便りだったんだよ。」

その手紙には、"お疲れさまでした"とか、"これからも頑張って下さい。"とか、
そういう言葉は全く書かれていなくて、その ばあばの近況報告でした。

『萩原選手の決勝の背泳ぎ、とても美しかったです。
今までプールに入ったことがありませんでしたが、それから近くのスイミングスクールに入って、
泳いでいます。楽しいです。』

こんな風に書かれていたそうです。

「ハギトモさんは、このお便りに、ものすごい救われたんだよ。」
「誰かにとって、私が泳いだ意味が一つでもあったんだって思って、心が暖かくなって、
それで初めて、もう一回、プールに行こうって思えたんだって。」
皆、うんうん頷きます。

「この ばあばの人生が変わったんだよ、とってもいい方向にね。」
「うん、幸せにしたってことだよね。」

ハギトモさんのインタビューを聴いていた こざる達も、心が暖かくなりました。

ラジオからは、ハギトモさんのリクエスト曲、
ABBAの『Dancing Queen』が流れてきます。

「そろそろ、りこちゃん、お昼寝から起きたかな?」
「ちょっと見て来るよー。」
「そしたら、おやつにしよう!」

今日も、こざるカフェは ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
明日もまた猛烈に暑いようですので、どうぞ気をつけてお過ごしください。
よい毎日でありますように (^_^)

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