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AIでは解決できない経営判断のお話し

突然ですが、あなたは5人を助けるため1人の人間を犠牲にできますか?

単純に人数だけを秤にかければ、1人より5人の命のほうを優先するでしょう。しかし、人の命をそんな単純に比べることはできません。けれどどちらか一方のみを選択しなくてはいけない状況だったら、あなたはどう行動するでしょう?


トロッコ問題

突然ですが、下のイラストを見てください。

暴走したトロッコが、線路に横たわる人に向かって走ってきます。幸いとっていいのか、あるいは不幸といったほうが正解かもしれませんが、あなたは線路の分岐でレバーを握っています。
なにもしなければそのままトロッコは直進し、なんの罪のない5人の尊い命が奪われてしまいます。しかし、レバーを引けばその犠牲は1人で済みます。全員の命運をあなたが握っているのです。まさに究極の選択です。

この問題は「トロッコ問題」といわれ、道徳論や倫理観を問う問題として度々話題になります。ある調査では、90%の人がレバーを引いて5人を助けると回答しました。仮に命に重さがあって結果だけを重視すれば、レバーを引くという選択は理にかなっています。

一方で、レバーを引かないという選択をする人もいます。もしなにもしなければ5人は死んでしまいますが、それはやむを得ないことで、レバーを引くことにって本来なら死ぬはずではなかった人を自らの手で犠牲にしてしまうと考えるからです。

太った男

では、次のイラストを見てください。

状況は先ほどと同じです。ただしレバーではなく、橋の上にいる太った男を突き落とすことによって、トロッコが止まるという状況です。
結果はまったく同じですが、先ほどレバーを引くと回答した人も、さすがに男を突き落とすという選択には躊躇したのではないでしょうか。

もしもこれがアルゴリズムに従って動く感情のないAIなら、どちらの状況であっても判断がブレることはないでしょう。しかし人間はそうはいきません。

これと同じような問題は会社経営においても起こる可能性はあります。

あなたが社長だったらどう判断するか

例えば、ある重要な取引先から「あの営業マンはとても失礼な態度をした。もう当社の担当から外してくれ」と言われたとします。実は、その営業マンに落ち度はなく、相手の誤解だったとします(その誤解を解くことは不可能だとします)。
さらに困ったことに、その営業マンを担当から外しても他に異動できる部署はなく、実質解雇せざるを得ない状況です。しかし、そのまま同じ営業マンを担当に就かせておけば、取引先の怒りを買うとこは明白です。おそらく仕事は激減し、会社の経営は悪化して5人以上の社員を解雇しなくてはいけないかもしれません。

あなたが社長だったらどう判断を下しますか。

ここでも、その営業マンが直属の部下なのか、それとも普段そんなに接点のない他部署の社員かでその判断は影響を受けることでしょう。

最終的にはあなたの価値観や倫理観によって判断するしかないのです。そこに正解はありません。AIでは解決できないのです。


それは人事評価であっても同じです。なにを評価基準とするのか、だれを評価するのか、実は答えはあるようでそこに答えはありません。人事評価に正解はないのです。仮に正解があったとしても、そのときの状況や場面によって変わる場合もあるのです。むしろ一つだけの回答を設けてはいけないのです。

会社の経営判断であれ、人事評価であれ、人はそのときの状況やコンテキスト(前後関係)を自分の価値観や道徳観に照らし合わせながら判断することが求められるますし、またできるのです。それが人間のスゴイところかもしれません。


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