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人事評価は正しく行えない…けれど〇〇は正しく行える

多くの会社が人事評価を正しく公平に行い、業績の良かった社員には高い給料を、そうでなかった者にはそれなりの給料を支払いたいと考えます。そのために評価シートを作り直したり、あるいは部下や同僚の視点も取り入れてた360度評価を導入したりします。

ところがこれら全ての評価制度は、「実際の実績を反映したものになっているとは控えめにいってもいえない」とノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは述べています。

では、評価をすることは全く無駄なのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。

「分配的公正」は正しく行えない

人事評価を行い、その評価結果に基づいて公正に給料を分配しようとすることを専門用語で「分配的公正」といいます。
会社の売上のために貢献し、そこからもたらされた成果(インプット)に対して同じだけの報酬(アプトプット)を与えることが公正であることは、誰からも異論はないと思います。

しかしながら、先に述べたようにこの成果(インプット)と報酬(アウトプット)を同等にすることはほぼ不可能に近いといえます。さらにいえば、仮にもっとも評価の高かった5段階評価のうち「5」を取った社員の昇給額が1万円だったとして、その1万円がその社員が会社にもたらした利益に対して同等であるとどう証明できるでしょうか。

「それでは評価なんてやる意味ないじゃないか」そう思われたかもしれません。しかしご安心ください。この評価制度における“公正”にはもう一つ「手続的公正」というものがあるのです。

「手続的公正」が組織の納得感を高める

「分配的公正」が「だれになにを分配したか」を重視するのに対して、「手続的公正」は「分配を決定する過程における手続きやシステム」を重視します。

そして「手続的公正」が整っている組織では、多少報酬の分配に不公平感があったとしても社員は理解し受け入れ、不満は少ないのです。一つ例を紹介しましょう。

例えば、裁判において最終的な判決が下されれば、多少不服があったとしても理解し受け入れます。それは裁判官という法律に精通した専門家が、国民から選ばれた国会議員によって定められた法律に従い審議し、もし異論があれば申し立てをすることもできるからです。それでも納得いかなければ、さらに最高裁まで上告することができます。

このような制度化された手続きを経て下された判決だからこそ、人は納得し決定を受け入れるのです。

「手続的公正」に基づいた評価制度をつくる

会社における評価制度も全く同じです。評価する基準が明確に定められており、誠実な上司が評価基準に基づき評価を下せば、仮に分配方法に多少の誤りがあったとしても部下は納得し受け入れます。もちろん部下の意見を聞き入れることも大切です。

「分配的公正」を正しく実行することは難しいかもしれません。しかし「手続的公正」を実現することは不可能ではありません。
企業は「手続的公正」を担保するような評価制度全体のシステムを構築することが大切なのです。


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