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0歳~6歳の子どものが持つ「吸収する心」

前回は、Dr.モンテッソーリが考える成長段階において最初の0~6歳の時期がとても重要であるという内容をご紹介しました。今回はこの第一期の子どもたちのみが持つ「吸収する心」について授業の復習も兼ねて私なりの理解をまとめていきます。

0歳と6歳の子供を比較すると、多くの違いをみることができます。

生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で動けないどころか体はふにゃふにゃ、首もすわっていません。食べ物だって、自分で食べることはできません。その上、言葉も話せないので、泣くことで主張します。大人に依存し完全に無力な状態です。

では6歳では?歩くことはもちろん、走ったり、ジャンプしたりもできます。お腹が空けば自分で食べたいものを取り食べることができます。自分の主張したいことも言葉で伝えることができます。ある程度の自立も見られます。

なぜ、たった6年でここまでできるようになるのでしょうか?

Dr. モンテッソーリは子どもには大人が持っていな特別な力があると考え、これを「吸収する心」と呼びました。

大人と違い、子どもは生活をするなかで、無意識に感覚を通して環境を吸収していきます。これだけの多くのことをマスターするのに、なんと努力不要です。そして常に学び続けています。この吸収する心は6歳を過ぎると徐々に消えていきます。

吸収する心を持つ第一期の子どもの成長は0-3歳と3-6歳の2つの段階に分けられます。この2つの区分の大きな違いは、0-3歳は無意識に物事を学んでいきますが、3-6歳では意識的な活動も可能になるという点です。(例えば自分で決めることができるようになったり、自分が思うように手を動かせるようになったりするなど。)

人間の子どもが持つ特別な力を理解するために、動物と比べてみます。動物は生まれてすぐに立ったり、鳴いたりすることができます。生まれた時点ですでに自分の環境を生き抜く能力がプログラムされているのです。一方、先ほども述べた通り、人間の赤ちゃんは無力な状態で生まれます。この時点で自分の環境を生き抜く力はありません。

しかし、生まれてから6年の間に、自らの住む環境に適応する能力を獲得します。時間をかけて人間になることを学ぶのです。さらに言えば、自らの住む国や文化、慣習といったものも吸収していきます。例えば日本人の赤ちゃんに日本語の言葉や文法はプログラムされていません。もし仮に、両親が日本人である赤ちゃんがアメリカでアメリカ人の親に育てられればその子が母国語として習得する言語は英語となります。つまり人間はある特定の言語を話すように作られているのではなく、自分の環境に必要な言語を話せるようになる能力がプログラムされているのです。

続いて、大人と比較してみます。引き続き言語を例にとります。大人が自分の知らない言語を話す国に行った時、ただそこで生活するだけで無意識的にその言語習得することは難しいですよね。意識を向けて、発音を練習したり、単語や文法を覚えたりしながら学んでいきます。それでもネイティブ並みに話せるようになるには相当な努力を要します。一方、吸収する心を持つ子どもは、無意識に生活するなかでその言語を習得することができます。

このように0-6歳の子どもには環境をすべてまるごと吸収できる力があるのです。全く無力だった子どもがたくさんの能力をつくりあげていくことから、この時期は創造の時期とも言うことができ、この時期に身に着けたものを基礎として能力の拡大が始まります。

まるでスポンジのように多くのことを吸収する時期、とても大切ですよね。
でも「この時期を逃したくない!」と思って色々詰め込もうとするのは、「ちょっと待ったぁ!」(急に語気が強くなってごめんなさい。でもこれ大事!)無意識に学ぶというのは別の言い方をすると意識的に何かを学ぶことはできないということです。

この時期に大人ができることは、吸収される環境の一部になることです。話し方や、人に対する態度、価値観、こういったものすべてが子どもの中に取り込まれます。子どもに直接何かを教えることはできませんが、お手本として振舞えばその姿はとりまく環境の一部として子どもの中に吸収されていきます。

2つの世界大戦を経験したDr.モンテッソーリにとって教育の先にあるものは「平和」です。平和な社会をつくるためには、政治よりも子どもたちにはたらきかけなさいと述べています。それほどまでに吸収する心は大きな影響力を持つものなのです。

以上が私なりに理解した「吸収する心」です。

吸収する心という特別な能力そのものはとても素晴らしいものですが、見方を変えれば周囲の大人の示す態度によっては差別や偏見といったネガティブな心も子どもは簡単に吸収してしまうということも意味すると感じました。最近アメリカで起こった事件をニュースやデモなど身近で感じる中、どうしたら子どもに差別や多様性といった問題について伝えることができるのかを模索しています。そんな私にとって、「吸収する心」は一つの大きなヒントになるような気がしました。もちろん私自身がその問題についての理解を深める必要がありますが、自らも学びつつ、子に示していきたいと感じています。

※参考文献
Montessori, Maria.  "The Absorbent Mind" 及び日本語翻訳版「創造する子供」
Montessori, Maria.  "The Secret of a Child"

※マリア・モンテッソーリの生涯についてはこちらにまとめてあります。

ついでに…お時間のある方、私のぼやきを聞いてください。

コース開始から3日を過ぎ、早くもキャパオーバーな予感。しんどいです。私の英語力まだまだだなぁなんて思ったり。1ヶ月耐えられるのかしら…

はぁ~、でも言えてちょっとすっきり!お付き合いいただき、ありがとうございました!

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