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食べると奇妙な夢を見るチーズを食べてみた

先週、「食べると奇妙な夢を見るチーズ」なるものを、1週間試してみた。

このチーズの存在は、ネットニュースで知った(手近すぎて申し訳ない)。
調べてみると沢山記事があり、どうやらその手の夢を嗜む人達の中では有名なブツらしい。
しかも、特別なチーズではなくて結構普通に流通しているものらしく、うそでしょと思いながら近所のイトーヨーカドーへ行くと本当に普通に売られていたので私はショックで脱肛しかけた。
とりあえず物は試しだと、その食べると奇妙な夢を見ると噂の「スティルトン」というチーズを購入した。
日常の中に潜んでいたこの奇妙なチーズは、600円ほどだった。

◇◆◇

【変な夢のレシピ】
毎晩、就寝の30分前にスティルトンチーズを20グラム食べる。

20グラムを測り、割り箸で砕いてティッシュにのせていると、ふと中高生だった頃のことを思い出した。
勉強もせず、部活も続かず、異性との関わりもなかった私はとにかく暇をもてあましていた。
近所の古本屋で立ち読みをして仕入れた情報を元に、バナナのすじを乾燥させていぶしたり、ナツメグを飲んで激しく腹を下したりしていた。
あの頃の私は、青春とは程遠い場所でただただ精神世界につよい興味を持っていた。
それから早15年ほど月日が経ち、いろんなことがあったけれど今ようやく原点に帰ってこれた気がする。

私は逸る気持ちを抑え、なかば倒錯した目で無心でチーズを砕き味見をしてみた。

かなり美味だ。
でも、臭いが凄まじい。
右手にスティルトン、左手に足の爪の垢を隠して何回かぐるぐる回したら爪垢のほうを食べてしまう人の方が多いんじゃないかと思うほど、それぐらいクサい。
爪垢そっくりさんというより、もはや爪垢を越えている。

◇◆◇

そして1週間試してみた。
その日に見た夢の内容と、期待度に対しての感動を星三つで評価をし、更にそれぞれのチーズとの関係性を考察してみた。
かなり長いので、本当に暇な人だけ読んでいってほしい。

◇◆◇

●月曜日の夢●

駅前は、温泉街のような街だ。
そういえば、昔行ったことがある動物だらけの変な家がこの駅にあった気がする。あのアルビノのライオンや、虐待された動物はどうなってるだろうか。
(小指著の「夢の本」の中にある「阿佐ヶ谷の動物ハウス」という話になっています)

迷路のような住宅街をいき、探すが、なかなか見当たらない。廃墟寸前のような街だったように思うけど、街自体もかなり変化し一見普通な住宅街になっていた。
公園だけは残っていた。そこには野生のプレーリードックがたくさんいて、落ち葉の下をはらうと見たこともない生物がゾワゾワと現れるがすぐに体を隠してしまうため結局いつも正体を掴めない。
中央部にはプレーリードックが沢山いたが、誰からも世話されないため、死んでるのもそのまま放置されていていた。黒くまるまったものや長い年月で鉱石のように硬化してしまったものなどもあった。その合間を、生きているプレーリードッグがうじゃうじゃと歩いていた。

駅前は、旅館街を少しいくと工場街になり、車を裸で持ち歩いているようなすごいやつもいる。うっかり落として体に当てられてもなんの保証もしてくれないだろう。

・評・
★★★
夢の中でプレーリードッグと思っていた動物はモルモットだった。
モルモットの、丸い黒ずんだ死骸がどこかで見覚えがあった。なんだっけ、、と考えてやっと思い出した。以下は、現実の話です。

私は小さい頃、よく休日に母が勤める学校へ行かされ教室の掃除などの手伝いをしていた。
ある時、校庭でスコップを握らされ、今から掘り上げたものを全部動かなくなるまでスコップで殴り潰せと言われた。
母はタコヤキをひっくりがえすように土から毛むくじゃらの生き物をほじくりだし、逃げようとする生き物が何者なのかもわからないまま私はスコップで何匹も叩き殺した。
いい気分はまったくせず、この動物はなんなのかと母に聞くと、「恐竜のタマゴだ」と言われた。
どうやら、この恐竜のタマゴは放っておくと孵化し、人間を食ってしまうから小さいうちに駆除をしないといけないとのことだった。
私は、それは大変だ!と必死になり、更にペースを上げて叩き殺した。

大人になってから、あれは何だったのかと母に聞くと「多分モグラ」と言われた。校庭にモグラが大量発生した年があり、その時のことだろうとのことだった。
私はモグラをモグラだと認識する前に、モグラを虐殺してしまっていたのだった。

…この時私が叩き殺したモグラが、この夢の中に出てきたモルモットの死骸にそっくりだった。忘れていたけど案外トラウマだったのだろうか。
チーズが過去のトラウマを引き寄せたのか、なんだか奇妙きわまりないので星みっつ。

●火曜日の夢●

煙で周りが見えないようなスナックで、明石家◯んまを性接待することになった。左端ではバカラの賭博場があり、並べられたベルベッドのしみだらけの椅子には多くの芸能関係者が座っていた。私はさんまに好意を持った。
帰り、新大久保の夜道を歩いているとさんまが追いかけてきて、お前どこ行ってたんか!この後時間あるか?と聞かれる。ただのコンパニオンと思われているだろうと思っていたので、すこし嬉しく思った。さんまの事務所に向かうためバイクの後ろにのると、突然フルフェイスの男が並走してきて、撃つの見てくれませんか?と声をかけてきた。
さんまと私は、はい?と振り返ると、銃をつきつけられてさんまは撃たれてしまった。

・評・
★★☆
この夢を見た日、実はチーズの用法用量を大きく破っていた。「量が足りないんじゃないか」と、残りのチーズを全てパスタに入れて過剰摂取していたのだった。
そして、このような恐ろしい悪夢を見てしまった。今もTVでさんまを見かけるとドキッとしてしまう副作用付きだ。チーズを欲張った呪いだろうか。
拳銃で撃たれるシーンは圧巻だったが、私はもっと次元を超えた夢を求めている。
というわけで、星ふたつ。

●水曜日の夢●

足がムズムズするので、どうしようと医者に話したら切開しようと言われる。
大丈夫だから自分で剥いてみなさい、と言われ、脛あたりを半分にもいでみると骨の付近に太くて黒いハリガネムシのようなものが沢山蠢いていた。ギョウ虫を処理するように、足の片方をもって虫をひっこ抜くと、どんどんと抜けていく。しかも、その引き抜く快感は凄まじいものだった。

・評・
★★★
結局、20グラムしっかり計算して摂取できたのは初日だけだった。(とても面倒くさい)

ところで私は、角栓を引き抜く動画をはじめとした異物を除去する動画が大好きだ。
youtubeのおすすめ動画には、外人がどでかい耳くそを掘り上げる動画や、蓄膿症の患者が病院でハナクソを取り除く動画ばかりが表示される。
同様のジャンルで、ウマバエのような人の肌に卵を産み付ける害虫や寄生虫をほじくりだすものがあり、もしかしたらそれの見過ぎでこんな夢を見たのかもしれない。
スポンと抜けたとき、もう何者にも替えがたい報酬物質が私の脳の中を駆け巡った。今思うと「抜く」とはそういう意味なのだろうか。欲求不満だと言われれば頷くことしかできないが(でも相手は求めていません!)、どういう意味が隠されていたのだろうか。
そんな調子であるから、この夢でも私は快感の絶頂を体験した。
星3つ。

●木曜日の夢●

プールサイドで、winkが泣いていた。
どうしたんだろうと眺めていると、相田翔子が突然歌い出す。
歌の歌詞はこんな感じだった。

《夜の浜辺であなたとふたり
ずっと星を数えていたかった 本当は

でも あの人の瞳に映るのは
キラキラ光るネオンと 誰もいないプールサイド

あなたは私に大丈夫と言ってくれた
夢の中で
キラキラの虹の粉
あなたは私に大丈夫と言ってくれた
なのになんで
悲しい白い粉

shining ただ急ぎたかっただけ
shining ただ急ぎたかっただけ
私も あなたも

キラキラの 虹色の粉
だけどあなたは 約束を守らなかったの
そして 2度と帰らなくなったわ》

ああ、これはコカインの歌だなと直感した。
歌い終えて、相田翔子の目から涙が落ちた。

・評・
★☆☆
ピエール瀧さんの連日にわたるニュースによって引き起こされた夢だろう。
ちなみにこの歌詞は、歌う相田翔子の横に、エンドロールのように文字が浮かび上がっていた。
そのため、起床 即 夢の印象が鮮明なうちに書き写すことができた。意外なところで、なんとも地味な自分の書記の才能に気づく。

相田翔子の最後の涙は、きっと彼女は白い粉で大切な人を失ったんじゃないかなと思う。
私の夢の中の相田翔子さんと実際の相田翔子さんはなんの関係もございません。
それなりの達成感はあったけれど、全体的にどうでもいい夢なので星1つ。

●金曜日●

忘れた。夢はなんか見た気がする

・評・
☆☆☆
新しいチーズを購入、用法用量守るも足先の冷えが気になって熟睡が阻害され、朝までずっと半睡のような状態で夢どころではなかった。

●土曜日の夢●

おじいちゃんは医者には意識がないと言われ病院のベッドに寝ているが、我々家族だけは本当は意識だけがそこらへんを歩いてるということを知っている。そしてずっと、おじいちゃんは意識だけの存在になって病院内でビラ配りをしているのだった。
ビラだけは実体があり、祖父のことを意識が無いと言い張る医者でさえも気付かないでビラを受け取ったりしている。

幸ヶ谷公園に行く。
地面は全て砂浜のような砂、中央には大きな白い花をつけた謎の植物が植わっていた。全体的に黄色い砂が舞って、空は溶けるように青い。夢みたいな風景だった。
美しい光景をゆっくり見ていたかったが、サッカーをする親子のボールが何度もあたりそうになり怖いのでやめた。

・評・
★★★

目にしみるほどの鮮やかな青色が印象的だった。もしやこれもチーズの影響だろうか?
むかーし読んだ中島らもの「アマニタパンセリナ」というエッセイで、中島らもがメスカルボタンと呼ばれるサボテンの輪切りを摂取したとき
「青色が輝いて見えた」
という感想を書いていたことを思い出した。青色には、その時の体の状態や感受性によって見え方が変わる特性でもあるのだろうか。

でも、中島らもは輪切りのサボテンをわざわざ日干しし相当な苦味に耐えながら摂取したのに対し、私はスーパーで買える600円のチーズなので、一緒にするのは気の毒に感じる。
いい年してようやるなあと思うが、私も齢30にして松屋の牛めし380円をグッとこらえて600円の夢チーズにはためらいなく手を出すところが、自分でも大概だなと思うのだった。

●日曜日●

実はこの日、チーズを食べずチョコモナカジャンボを1/3食べて寝るという愚行を犯してしまった。
大変申し訳ありませんでした。

でも、なぜかチーズ食うよか印象的な夢を見たのだった。どういうことだろう?
長いので、リンクにしました。飛んでぜひお読みください。

https://note.mu/koyubii/n/n44e9c8dd4480

・評・
★★★
《チーズ外審査員特別賞》
チーズを食い忘れた小指はチョコモナカジャンボでふしぎな夢を見る。

私は普段、糖質をあまりとらないようにしている。
甘いものは血糖値の乱高下で精神に悪い影響を与えると聞いたので、甘いものごときに心を振り回されるなんてたまったもんじゃないと思ったからだ。
だが、久々に食べたチョコモナカジャンボは、まるで劇薬だった。うますぎた。

そして、ジャンボの甘美で危険なケミカル人工甘味料が私の脳神経に悪さを働いたのかはわからないが、やはりなんとなしに不穏な夢を見たのだった。

私が気になるのは、あのゲゲゲという異質な声を持つ中東男性の存在である。
彼はいつも、不気味な笑みをたたえながらこちらを観察していた。
私達のもとへ急に近寄ってきたり、威嚇するとニヤニヤ笑いながら遠くへと立ち去る。
そしてまたこちらを見ては、最後奇声をあげながら坂を降りて行った。

突然急接近したり、坂を急降下しながら立ち去ったり…なんだか、彼はまるで血糖値そのものみたいではないか。
私は、あの夢の中の男こそが、私の血糖値を象徴する存在だったんじゃないかなと今になって思うのだった。

◇◆◇

確かに最初の1〜2日目はチーズの効果を感じたけど、体が慣れて効果が半減していくに従い、乱用したり摂取を忘れたりしてちゃんとした調査に支障が出たのは反省している。
でもまあ、美味しいチーズなので、これからも耐性がつかないペースで摂取を続けていきたい。

そういえば先日、ヒマワリの種で色彩豊かな夢を見れると聞き、大久保で1kgのヒマワリの種を購入した。
だが、開封したらなんと皮付き… 全部ハクビシンの顔みたいな色で見てるだけで食欲が削がれる。そもそもこれは食用なのだろうか。ハムスターの餌?園芸用…?
今度はもっと自然派食品みたいな店で高いやつを買おうと思う。

次回、小指の人体実験 ヒマワリの種編 も更新あるかもしれません。おたのしみに!

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