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意味がわかると怖い話

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一見なんでもないのに本当の意味に気づくと背筋がこおる!クセになっちゃう怖い話集。
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恋はつづくよいつまでも【意味がわかると怖い話】

先生がわたしの顔を覗き込んだ。鼻先が触れ合うくらい先生の顔が間近に迫る。ドキドキした。呼吸が速くなり、体中が汗ばむ。 先生の手がわたしの胸に重ねられた。ああ、天国にも昇る気持ち。 (了) ここから解説になります。ネタバレなのでご注意を。 解説この話は男女の逢瀬のようで、実は全然違います。 以下、本文を引用して解説していきます。 最初の文章は、医師が語り手の生死を判断するため瞳孔を確認しているところです。 動悸、呼吸困難、発汗。語り手の体に表れているのは、急性心不

なんか怖い話 極短6編

男尊女卑の激しかった時代、ある一家が話題となった。生まれた子供8人全員が男の子だったのだ。大変に珍しがられ、跡継ぎのいない家では羨む者もあったという。やがて両親が亡くなると兄弟8人で土地を分割したのだが、その一角から白骨化した遺体が出てきた。その数8体。いずれも、生まれて間もない赤ん坊のものだったという。(No.01 全員女の子) スーパーで養殖うなぎの大安売りをしていた。あまりに安いので、なんとなく手を出さなかった。近所の魚屋でも養殖うなぎがやたらと安い。店主にどうしてこ

鍵【意味がわかると怖い話】

鍵しっかりと部屋の鍵を閉めてから、眠りについた。 翌朝、ロッキーのテーマで目覚めた。毎日同じ時間に鳴るようにスマホにセットしてあった。カーテンを開けて朝日を浴び、寝室を出た。 キッチンで朝食の準備に取りかかる。やかんを火にかけ、トースターで食パンを焼く。野菜を切っているあいだに、やかんが湯気を噴いた。今日のメニューは、サラダとトーストとコーンポタージュだ。僕はいつも朝食を抜く。これはさゆりの分だ。 朝食を盆にのせて、彼女の部屋に向かった。片手がふさがっていて、鍵を開ける

スナッフフィルム

「スナッフフィルムって知ってるか」 自室のベッドに寝そべって漫画を読んでいると、遊びに来ていたマサヤが突然そんなことを言い出した。ぼくは漫画に目をやったまま答えた。 「知らん。なんだそれ」 「殺人の様子をビデオに撮ったもんだ」 「こわっ」ぼくは顔をしかめた。「なんで撮るんだよ。捕まるじゃん」 「娯楽用だ」 「娯楽って、映画じゃあるまいし。ポップコーンも喉を通らんわ」 「お前、こわいのだめだもんな。だけど映画監督志望なんだから、一回は見ておくべきだぞ」 「なにを?」 「だか

ストーカー【意味がわかると怖い話】

ストーカーみゆきがストーカーにつきまとわれて困っていると言っていたので、心配になった。翌日から彼女の周囲に目を光らせたが、一週間経ってもストーカーは姿を現さなかった。一か月経ってもその気配すら感じない。僕に恐れをなしたのだろう。 しかし、みゆきと彼女の母親のやり取りを聞くと、まだストーカーに頭を悩ませているようだ。おかしいな。 (了) 以下、解説になります。ネタバレのためご注意を。 解説ストーカーの正体は、語り手である。 ここで疑問。 みゆきは、なぜストーカーのこ

正夢【意味がわかると怖い話】

隣から寝息が聞こえて、スマホから顔を上げた。横を見ると、彼が眼鏡をかけたまま寝入っていた。寝返りをうってフレームが曲がってしまってはいけない。わたしは彼の眼鏡をそっと外し、ベッド脇のテーブルに置いた。 おだやかな寝顔だった。よほど幸せな夢を見ているらしく、顔がほころんでいる。口をぱくぱくと動かしているところを見ると、夢のなかでごちそうを食べているようだ。 わたしは電気を消し、彼の隣で眠りについた。 翌朝目が覚めると、台所からトントントンと音が聞こえた。彼がエプロン姿で朝

ある男子中学生の遺書【意味がわかると怖い話】

こんにちは。『真相追及! 独占報道ニュースONE』のお時間です。 一昨日18時ごろ、山梨県K市で男子中学生が自室で首を吊っているのを、帰宅した母親が発見し救急通報しました。男子中学生は病院に運ばれましたが、まもなく息を引き取りました。 自室の机のうえには遺書があり、警察は学校でのいじめを苦にした自殺と見て捜査を進めています。 男子中学生が書いたとされる遺書の内容は次のようなものでした。 『先生も周りのみんなもぼくを助けてくれた。ありがとう。だけどもう限界みたいだ。壊れ

ゆうれい部員【小説】

3-Aの教室に夕日が差しこんでいた。教室の窓から校門を通り過ぎていく部員たちの姿が見える。 放課後、この教室は将棋部の部室として使われていた。多くの部員はすでに帰路につき、残っているのは数人の三年生だけだった。 「あれ、木村ってだれだっけ」 そう声をあげたのはノッポだった。そのあだ名の通り、将棋部でいちばん背が高い。ほっそりしたごぼうみたいなやつで、眼鏡をかけていた。 木村って、芸能人の木村拓哉だろうか。 どっしりと席に座っていたフトッチョも、ぼくと同じことを思った