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拡張モデルベース開発で体験設計

久しぶりにモデルベース開発について考えてみます。開発と言っても対象範囲は、経営レベルの企業価値やパーパス、ビジネス開発での提供価値やビジネスモデルと企業連携を含む内容から、製品・サービス開発に渡る領域を1つの体系として扱う話になります。

以前展示会で「NEXT DESIGN」という設計文書構造管理ツールの担当者と話をしたとき、実際にここまでの体系を一つのモデルとして扱っている事例はまだ無いそうですがデータの扱いとしては可能とのことでしたので、いつか試してみたいと思っています。


機構をモデルにする <具体→抽象>

具体的な機能現象を一度抽象的なモデルで表すことで、その先で実現手段をシミュレーションによって評価しながら最適化することができるというのが一般的なモデルベース開発(MBD)です。

機構の抽象化といっても、単に部品の集合をユニット(モジュール)として扱うだけでは、抽象化ではなくグループ化にしかなりません。抽象化では「役割(機能)」で表現する必要がありグループの名称が役割になっていれば抽象化と言えます。

最近では、機構の抽象化を機能的役割だけでなく、製品がユーザーや社会にて提供する価値を役割として考える視点が模索されています。この辺りの考え方を明確にしたのが「1DCAE」です。

日本機械学会より
https://1dcae.jp/about/

ただ上の図に書かれている表現では、1つの製品を設計するイメージとなっています。しかし世の中はIoTを始めとして複数のシステムが連携して大きなシステムを構成して成り立っています。この視点で設計することを「System of Systems(Systems Engineering)」と呼びます。

1DCAEの基本的は考えに変わりはありませんが、各段階の用語が少し変わります。


行為をモデルにする <抽象→具体>

私は会社ではUXデザイナーを名乗っているのでモデルベース開発をユーザーの体験設計に活かす方法を考えています。またその体験設計から製品設計を一つにつなげることで全ての設計段階でUXを起点とした最適化を考えられるようにしようとしています。

上記のSystem of Systemsに人間(ユーザーや社会)と環境を加えたものを私は「UXシステム」と呼んでいます。人間中心設計プロセスに登場するユーザーと利用状況、設計対象の機器やサービスをまとめて呼ぶために使っており、その考え方はSystem of Systemsと基本的に同じです。

HCD-Netより
https://www.hcdnet.org/hcd/column/hcd_06.html

人間は多様で同じ人でも気分によって行動が変わったりします。そのような曖昧な存在を単に曖昧なままにしておくのではなく、UXシステムの一部として扱うことができるようにペルソナ化・シナリオ化することでモデルベース開発で扱うことができると考えています。

もちろん手間がかかることですが、タスク分析(ユースケースシナリオ)、ジャーニーマップ、ペルソナシートなどを作るのであれば、モデルとしてインプットに対する特定のアウトプットを持つ具体的な存在として定義してしまった方が活用の範囲が広がるはずです。

このようにモデルベース開発で扱うことができればUXデザインが企業活動で中心的な存在となり、部門や職種の壁を超えたコミュケーションや企業文化の変革にも繋がるのではないでしょうか。


デザインシステムとモデルベース開発の統合

何年か前にデザインシステムと共に「アトミックデザイン」という言葉がはやりました。その時に私は直ぐに「コズミックデザイン」の提案をしました。言いたかったことは内部構造だけに目を向けるのではなく、そのシステムの外側も一緒に考える必要があるという話でした。

以前に書いた図

デザインシステムは現在もしっかりと定着しており、一貫性のあるデザインのためだけでなく、デザインを効率化することでより上位の提供価値について考えるように誘導する仕組みにもなっています。

デジタル庁デザインシステムより
https://www.digital.go.jp/policies/servicedesign/designsystem

現在は気軽さの点で、まだ独立した存在のデザインシステムですが、近い将来はより大きなSystem of Systemsのモデルベース開発に統合されていくのではないかと予想しています。






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