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大きなストーリーの関連性、影響、前提を含める

ユーザーの体験は部分によって作られるのではなく前後の関係、周囲との関係などの文脈的な影響が重要である。そのため部分的なプロトタイピングであっても関連性するもの前提とするものを体験設計では考える必要がある。
目の前の機器を評価する場合などでも大きなストーリーの中の操作の位置付けや周囲の出来事との関係を前提として扱うことで、モノの評価がコトの評価・イミの評価にしていくことができる。


複数製品の連携

SNSを例に挙げるまでもなく、製品は単独で機能すると考えるよりも直接的・間接的な組み合わせによって複数の製品が連携しています。IoTの時代では「接続していない」ことが価値になるという逆転現象まで起きているのもいかに現在の製品が接続されているのかを表しています。

クラウドサービスを複数端末で同じように利用することができる「マルチスクリーン」や、機能デバイスと操作デバイスを分けて操作をスマホでおこなう「スマートコントロール」などさまざなバリエーションがあり、便利になる一方で目に見えない関係が増えユーザーが理解しなければならない概念モデルが複雑になってしまっています。


複数の場面、複数の参加者のための複雑さ

また機器が連携するのに伴い、繋がる場所や時間、相手が多様になってきています。離れた場所にいながらリアルタイムコミュニケーションできたり、逆に非同期コミュニケーションによって個人の時間を自由に使えるようになるなど関係を定義する場所や時間が多様になってきています。

さまざまな状況の場面、さまざまな背景や特徴を持つ人が存在しそれぞれに最適化していくことから複数の形態を持つ製品が生まれ連携が作られてきました。コンピュータルームで特別な人だけがコンピュータを使っていた時代から、どんな状況でも誰でもコンピュータを利用できる時代に変わってきたことを意味しています。これは人間中心的で体験設計的な視点です。

機器が持つ特定の使い方に合わせるのであれば、体験設計は一方的で単一的なものになってしまいます。しかし私たちは逆の方向へと向かっています。多様なシチュエーションを考え整理すること自体が価値を生み出すデザインで、その複雑なパズルを解くための方法としてプロトタイピングが役に立ちます。


コンテキストデザイン

製品には価格や機能(コストパフォーマンス)という比較しやすい価値から、物に魂が宿るという精神的(宗教的・文化的)な価値まで幅広い価値の視点があります。

モノのデザインからコトのデザイン、体験のデザイン、意味のデザインという風に視点が抽象化していく中で、人の参加や時間・場所が生み出す意味の体験を価値の中心にしたデザイン手法がコンテキストデザイン(文脈設計)です。

体験設計の中でも、ユーザーと製品の関係だけでなく、その製品やサービスを実現している様々な人の体験をデザインしていくことに着目しています。高度な体験設計ではステークホルダーのそれぞれが快適であるというだけでなく、お互いの存在が製品を利用する価値や意味を向上させるような設計がなされています。コンテキストデザインではより積極的に関係する人の価値を文脈として相互につなげ体験価値をレバレッジすることを目指します。


この記事は「体験設計のためのプロトタイピング<11箇条>」の中から個別の項目についてより詳細に解説をおこなったものです。是非全体の項目もご確認ください。


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