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Good Design受賞から見えるカメラの未来

10月1日に2020年のGood Design受賞が発表されました。Good DesignのWebサイトはデザインされた製品のデータベースというだけでなく、デザイナーの想い、評価者の想いという製品の背景にあるコンテキストを知る上でも貴重な情報を提供してくれています。


今回は色々と思うところがあり「Re:GoodDesign2020」と題して、個人的に気になることを数回に分けて書いていきたいと思います。まず最初のお題は「カメラ」です。


【2020】カメラにとって象徴的な年

延期となってしまいましたが今年はオリンピックイヤーであったことからカメラメーカーは過去の集大成として、また未来へのショーケースとして例年になく積極的な展開を見せています。それがGood Design受賞にどのように反映しているかを見ていきたいと思います。

<主なカメラメーカーの受賞状況>
※検索ワードリンクにバグがあるため下記単語で検索をしてください

CANON

NIKON

SONY

Panasonic

FujiFilm

リコー

Casio

※OLYMPUSの受賞はありませんでした


ここからは注目の受賞製品をテーマごとに見ていきたいと思います。全体を俯瞰して見たときにどんなことが見えてくるのか考察していきます。


【熟成】一眼レフの集大成として

オリンピック選手の圧倒的なスピードを絶対的な信頼性で撮影するためのカメラとしてキヤノンとニコンから「やっぱり一眼レフ」が受賞しました。

当然ですがこれまでの技術の蓄積の集大成として作られていることが受賞理由になっています。実際両機種とも前のモデルと比較して外観的な変化は極めて僅かです。ここから学べることは「熟成」デザインと単なる商売としての「改良」デザインの違いについてカメラメーカーは考えを持たなければならないということです。

これからデジタル技術を中心としたミラーレスへ移行していくなかで「熟成」というものがどのようなものなのかを想定しておく必要があります。

今後ファインチューン以上の開発投資が一眼レフにおこなわれるかどうかは分かりませんが、これが最後の一眼レフになるのではないかという特別な思いがメーカー側にも審査員側にも在ったのではないかと想像します。


【継承】ミラーレスへの流れ

ミラーレス一眼が登場してから10年以上がたち、一眼の主力製品がいよいよミラーレスに移行するタイミングを迎えました。レンズシステムを含め、高級・高性能一眼から簡単・気軽な一眼まで、ミラーレスの中でどの機種にするのか選ぶ時代になった分けです。

そこには極めてオーソドックスなスタイルのカメラが並び、従来(一眼レフ)と同じ操作性であることを価値としていることが特徴です。これは後ろ向きな意味ではなく一眼レフと決別するために必要な過程です。

ミラーレスは進化の途中であり、特にディープラーニングを使ったデジタル技術と常時撮像、高度な表示が可能なファインダーによってこれから毎年のように進化していくことになります。

そのようなソフトウェア的な進化と、ハードウェアデザインの保守的な傾向を今後どのように評価していくのか非常に気になります。「高性能」「上質」「完成度(バランス)」だけではない評価軸がこれから生まれてくるのか注目していきたいと思います。

またアプリ連携、SNS連携がカメラUXの中心になってきた時に本当の変化が生まれるはずです。



【飛躍】新しい形態が新しい視点を生む

スマホの登場でコンパクトカメラが売れなくなり、高級カメラしかビジネスが成り立たないと考えられてきたところがありますが、一方で高性能化したスマホカメラに近い技術(部品)を応用して新しい形態のカメラが登場してきているのも2020年の特徴の一つです。

スマホで写真を撮る時は「カメラの様に構えて」撮ることが多いと思いますが、それとは違う視点からの映像を撮るためにファインダーという存在をあえて失わせることで、写真がもっと自由なものにしたいという提案です。

アクションカメラというジャンルが切り開いてきた道ではありますが、それぞれのシーンやユーザーに合わせて撮影スタイルの提案として分かりやすく提示されています。

VLOGCAM ZV-1は今年の受賞にはありませんでした)


【視点】ロボットカメラ

ロボットカメラには2つの方向があります。ひとつは自動撮影の方向、もうひとつは人間が遠隔操作する方向です。

これは単なる人件費削除のためではなく、特別な視点や場面での映像を可能にすることが目的です。

古くはAIBOに組み込まれたカメラやパーティーショット、最近ではドローンのカメラがその役割を実現してきましたが、まだまだたくさんのロボットカメラがこれからも登場していきそうです。


【実体】デジタルとアナログの融合

この分野(切り口)は富士フイルムがずっと取り組んでいるものです。デジタルで一工夫を加えることで「写真の価値」を高め、その延長で実態のあるモノを購入してもらうという方向です。モノによって外在化すれば更に価値が上がり、長期的に写真に対する高いモチベーションが形成されていくことになります。


【拡張】ハードとソフトの融合

コロナ禍の状況でいち早く映像機器としてコミュニケーション実現と映像品質を提供したとして評価されたキヤノンのWebカメラ化ユーティリティ、さらに富士フイルムのカメラ本体の画像エンジンをPCアプリの外部装置として活用するRAW現像アプリケーションが、ソフトウェアの力によってハードウェアの活用領域を拡張した良い事例になっています。

その中でもキヤノンの取り組みはβ版という状態でも世の中に価値のある製品は受け入れられ、その後の改良も社内だけで進めるよりもコミュニティを巻き込んだ方が良いものになるということを教えてくれるものでした。

デジカメの普及に大きく貢献したカシオが、ビジネス領域をコンスーマから医療分野に移したことでハードとソフトの融合がより明確に出せるようになりました。

多様な使い方ができる汎用デザインではなく、オールインワンパッケージによるソリューション提供を目指し特化したデザインによってハード・ソフトの魅力が相乗効果を生み出しているように思います。こういうデザインを担当したデザイナーはきっと楽しかったのだろうと羨ましくなります。


Good Designサイトの楽しみ方

最後になりましたがGood Designサイトの楽しみ方についてお伝えしておきます。

受賞製品一覧ページにアクセスします。

気になる製品分野や企業名を入れて検索してみましょう。

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