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「アソビ」とプロトタイピング

「アソビ」という言葉には、子供たちが外などで遊ぶという意味と、緩衝材としての余白という2つの意味があります。

この2つの意味を同じ言葉にした昔の人に敬意を表します。

似たように「適当」という言葉にも2つの意味があり、それが微妙に重なっている部分が好きです。(「いい加減」も同様)

いづれの言葉も余裕や余白、余地というものがあることで、物事が上手くいくということを、昔の人たちはよく知っていたことが分かります。

この感覚は日本人だけのものではなく、余暇を意味する「リクリエーション」にも、同じようなニュアンスが含まれています。つまり再(Re)想像(creation)を生み出すためには余裕が必要だと欧米人も知っているのです。

余白を作る方法には2種類あります。ひとつは「ボー」とすること、何もしないことです。

もう一つは、積極的に「遊ぶ」ことです。本業をぶっ壊しても良いですし、全く違うことをしても良いですが、子供の遊びのように心から遊ぶことで得られるものが沢山あると思います。

子供の遊び

子供の遊びはどんなものか考えてみます。

子供は大人から見ればハチャメチャで非常識です。ふざけています。それが子供にとっての遊びの本質です。

ラクガキは「落書き」と書きますが、「楽書き」と書くこともできます。なにかに縛られたりせずに気楽に描くことで面白い何かが生まれます。

子供は無知であることで自由でいられます。

大人は知識が広いのでルールの下でも行動範囲が広くできますが、子供が冒険をしなくなると本当に狭い範囲の行動しかできなくなってしまいます。

子供たちは良い意味で無知であり、それを解消するための好奇心がそなわっています。それらを引き出してあげられる環境を与えれば、本当の遊びを私たちに見せてくれます。

イノベーションを生み出す「遊び」

従来製品の改良だけをやっていると、製品の本質的価値が下がっていってしまいます。それを少しでも補おうと付加価値を上げようと努力をしますが、それにも限界があります。

そこで全く違う新しいフレーミングから考え直す必要が出てきます。イノベーションが求められます。

イノベーションに大切なのは、いかにして現在の価値から離れ、より多くの可能性を実際に作って試しその中から新しい発見をすることです。

プロトタイピングによって、短時間にたくさんのアイデアを試してみることができできます。

ただし常識的なアイデアだけでは駄目です。「非常識」と思われることを発想し、実際に試してみて、本質の価値に気づく方法でしか、現在の常識を変えるイノベーションはおこせません。

つまり子供の遊びの中にイノベーションの本質があるのです。

子供の遊びを真似してみても良いのですが、思い切って本物の子供の遊びを上手く活用できないだろうかと考えています。大人(企業)と子供(学校)が同じツールを使うことで接点を作り出し、お互いに世界を広げるようなプラットフォームがあれば面白いですよね。

BBC micro:bitとAdobe XDが世界を広げる

子供たちへのSTEM(科学、技術、工学、数学)教育の重要性が言われ、その教育方法について従来の教科書を使った決まった内容を教えるだけでは不十分だということになってきており、教育のありかた自体を考え直すきっかけにもなっています。

そんな中で、子供たち自身が安心して自由に工夫をして、いろいろなものを作ることができるツールとして「BBC micro:bit」が登場しました。
イギリスのBBCが小中学生に無料で配布し、今では世界の多くの国で安価に購入することができるようになっています。

また、Adobeからはプログラムが苦手なデザイナーでも使えるプロトタイピングツールとしてAdobe XDがリリースされ、デザイナーだけではなく、企画者や開発者がワイヤーフレームを作ったり、プレゼン資料を作ったりして、誰でも使い易いというコンセプトが実証されてきています。

このユーザーを選ばないmicro:bitとAdobe XDを組み合わせることで、フィジカルとサイバーがどのように組み合わされ、どのように連動したら価値があるのかを考えることができるようになります。

子供の作品からイノベーションを見つけよう

子供と同じツールを使うことによって、子供が遊びで作った作品に触れる切っ掛けができます。

子供の作品がそのまま、イノベーションにつながったり新しい製品になるということではありません。それでも子供たちの作品の中に何かヒントになるものを見つけることはできるはずです。

もし単に幼稚な作品としてしか見れないのであれば、それは見る目が重く硬くなってしまっているのかもしれません。

遊びとプロトタイピングが同じ意味として認識され、子供と大人が一緒にイノベーションを楽しめる世界がくることを目指していきたいと思います。

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