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デジカメの「画作り」と「絵作り」

最近noteに続けて、画作り(絵作り)モードに関する記事を書きました。

壮大な自然や魅力的なモデルさんを撮影するときには、素直にその魅力を表現すれば良いと思いますが、常にそのような素晴らしい撮影機会に恵まれる訳ではありません。

むしろ毎日、毎週写真を撮ろうと思えば、近所の見慣れた景色の中から新しい魅力をどうにか発見して撮影する知恵が必要です。

デジカメのUIオタクの私が画作りについて書く時には、いわゆる「画質」としての画作りが云々ということではなく、昨日と変わらない風景でも「表現(作画)」という世界では沢山の冒険や発見をすることができるという趣旨で露出操作と同じような機能として書いています。

ミラーレス一眼がパナソニックから発売されて10年がたち、フルサイズカメラもミラーレス化が一気に進んできました。ミラーレス化は同時にEVFで画作り結果をそのまま確認して撮影することができるようになることであります。

そのため、UIさえ使い易くなれば、露出補正と同じように多くのユーザーが積極的に表現に活用するようになると考えています。

今回の記事では、そのような画作り(絵作り)の全体像を俯瞰し考察してみたいと思います。

デジカメ画作りの始まり

カメラがデジタルになり、ユーザーがフィルムを選択する代わりにメーカーの色づくりや画質をまとめて面倒をみることになりました。
その中で比較的早い段階から、イメージモード、カラーモード、フィルターモード、エフェクトモードなど様々な名称であったり、シーンモードの一部としてユーザーが選択し楽しめるようになっていきました。

メーカーとしては、ソフトウェアだけで実現でき製造コストにほとんど影響しないことと、標準の画作りに不満があるユーザーに調整できる余地を残しておく目的で、当初はオマケ的に実装されました。

2000年以前は、現在のように高性能な電池が使われておらず、光学ビューファインダーが主流で背面液晶を使った撮影は補助的な位置づけでしたので、特別な画作りを積極的におこなう環境ではありませんでした。

しかし2003年ごろになると、光学ビューファインダーを持たず100%液晶モニタで撮影するカメラが登場し、そのころから画作り機能が、カメラの差別化のひとつとして、モデルチェンジの度に少しづつ増えていきました。

表現できる時代に

フィルムの時代にも、フィルムの選択だけでなく、撮影時のフィルターワークやライティング、さらにフィルムの現像に、印画紙への処理と多くの段階の総合的な結果として1枚の写真を見ていました。

デジタルになっても、写真を使って何かを表現したいという人の気持ちに違いはなく、何かを選択し、何かを調整することで被写体を最適に表現したり、自分の好きな雰囲気を追求していくようになりました。

初期のころは、デジタルの品質が十分でなく作品写真を撮るのはまだフィルムカメラという時代がありましたが、2005年ごろにはただ奇麗に撮れるだけでなくデジタルで表現することができるようになりました。

ミラーレスとEVFが作画意識を変える

日常のシーンに魅力的な視点があるということを発見し、それを誰かに伝えることが写真の楽しみの一つです。

アートフィルターやフィルムシミュレーションの画作りモードは、視点に揺らぎを与え、選ぶという行為を通して被写体の魅力と自分の感性を再認識させるものになっています。

イメージエフェクト的な画作りは遊び要素が先行してしまったため、嫌厭して全く使ったことが無いユーザーもいると思いますが、写真を深く理解するためにも一度「どのモードが自分の表現したいことに最適なのか」という問いを持ち真剣に選んでみてもらえると、いろいろな発見があると思います。

自分の持っているカメラに思った以上にたくさんのモードがあることに気づいたり、好みの表現が見つかるかもしれません。

デジカメ内の画像生成要素

レンズを通して撮像素子に入力された光は電気信号に変換され、画像処理エンジンによって色の情報に置き換えられていきます。
このときの処理が、メーカーごとに微妙に違っていて、同じ色を撮影しても、同じ画像にはなりません。

各社基本的な思想は「忠実性」で見たままを写すことを目指していますが、人間が見て忠実だと感じるためには、色の印象(記憶色)に合わせていく調整が必要になります。この部分に各社のノウハウや思想があるため結果が違ってくることになります。

さらに、中級以上の機種では、画像を細かく調整する機能が搭載されており、利用目的(プリントかモニタか、後で画像調整するかなど)によって調整できるようになっています。

当然、撮影時に設定する露出(明るさ)やホワイトバランス(色味)によって画像の雰囲気は大きく変わります。

私が注目しているのが、さらにこの上におこなう「演出性」を目的にした絵作りです。その場の空気感や心象風景を表現するために選択したり、作家自身の作風としての調整がカメラの中でできるようになっています。

これからのデジカメ差別化技術要素

20年前から10年くらい前までは「画素数、ズーム倍率、価格」がデジカメのコンセプトを決める主要な要素でしたが、現在ではそれが次の5つに変わってきています。(販売の中心がコンパクトカメラから一眼に変化していることも要因としてあります)

①AF機能
②連写(ドライブ)機能
③手振れ補正
④UIカスタマイズ機能
⑤画作り機能

「AF機能」は人物認識から瞳AFへとより高い精度が実現できるようになり、「連写性能」は電子シャッターやプリキャプチャの組み合わによる瞬間撮影から、比較合成などの長時間撮影まで表現できる時間に対する可能性が大きく広がってきました。
「手振れ補正」は単純な性能競争にも見えますが、流し撮りやハイレゾ撮影と連動しているところもあるので、今後楽しみな機能分野です。

そしてこれらの多機能を撮影現場で使いこなすためには、複雑なメニュー内に機能があるだけでは不十分であるため、「UIカスタマイズ機能」が大きな項目の一つになってきています。

そして5つめが「画作り機能」です。

メーカーが発信する情報の中で使われる用語では「画作り」と「絵作り」があります。どちらも「えづくり」と読みます。
ニコン、キヤノン、ソニーは「画作り」を主に使っており、富士フィルム、オリンパスは「絵作り」のようです。(個人による感想です!)

私の印象では、忠実性をベースにするメーカーは「画作り」、フィルムシミュレーションやアートフィルターのように演出性のメーカーは「絵作り」を使っている印象を持っています。

各社とも厳密に用語を統一している訳ではありませんので、あくまでも傾向が強いという程度のものです。

まとめ

画作りをユーザーが積極的に選択したり、事前にカスタマイズを楽しむことがあるのか、またそのためにどのようなUIが最適なのかなど、十分にデザインできていないことが沢山あります。

ただ色々な環境が画作りがやりやすい方向に向いてきていることは事実です。

オリンピックまでは、AFとドライブのUIが中心になりますが、その後はきっと画作りUIの時代がくると思いますので、これからもUI研究を続けていきたいと思います。

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