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VUCA(ブーカ)とOODA(ウーダ) 『フクザツ時代の航海術』

「VUCA(ブーカ)」は、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)を合わせた造語です。

非連続的で、過去の経験、昔からのルールやマニュアルが通じない状況のことを指します。

まさに今の新型コロナウィルスに対応する社会のような状況です。病気そのものよりも、それに対処する行動が二次的、三次的に相互に影響を与えあう中でこれまで体験したことの無い内容や規模になったりする場合にVUCAになります。

現代のようにグローバルな経済やコミュニティが繋がっている状況では全てのことがVUCAであるとも言えます。

対処法はOODAループ

VUCAに対処するためには、普段の状況に対処するPDCAは使えません。

Observe(観察)、Orient(状況把握)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字を集めた「OODA(ウーダ)」ループが使われます。

比較のためにPDCAのステップを記載しておきます。

観察(Observe)がPDCAと最も違う点です。未知の状況に対して、起きていることを把握することが最重要になります。

状況把握(Orient)は、観察によって得られた情報から状況全体を推定したり、詳細を推定したりします。不足している情報に対しても可能な限り客観的なスタンスで扱います。観察の後に状況把握の様に考えてしまいがちですが、むしろ仮説による状況把握によって観察視点を持つことの方が自然な流れと言えます。

意思決定(Decide)は、把握した状況に対して、これからおこなうことを決定します。ここからは自分ごとです。外部状況に対して自分がどうすることが良いのかを考えます。客観的な情報に基づいて意思決定していることもありますが、先に直観による意思決定があり、行動をおこしながら観察を進めることもあるはずです。

行動(Act)は、決定したことを行動に移すフェーズです。行動を始めると同時に状況は変化していきより複雑になると同時に、新しい情報が得られますので、観察と状況把握を同時にアップデートしていく必要があります。混沌とした状況とはその前にパターン化した活動が前提としてあり、それが大きく外れたときに生まれる状況です。人はこれまでと同じ行動を無意識にとってしまいがちです。その行動によって失敗(間違い)を冒し、状況を知ることが多いのではないでしょうか。

OODAもPDCAと同じように、ループ状に繰り返すことで、状況を少しづつ改善する手法としてステップバイステップで実行することもできますが、PDCAが手順なのに対してOODAはむしろ独立した視点と考えた方がしっくりきます。

観察と状況把握は他者への視点、意思決定と行動は自己への視点です。さらに観察と行動は身体活動で、状況把握と意思決定は思考活動です。

つまりこの内・外と身体・思考の視点をバランス良く持つことが重要で、慣れてくると同時に意識することができるようになります。

自分中心視点から、全体視点へ

PDCAは人間の行動によって全てがコントロール可能であると感じるようになった産業革命以降に広まった視点です。

自分が何をやるか計画し、それを実行し、自分を評価して改善するという自分中心の視点です。

それに対してOODAは、自分にはコントロールできないことに対していかに自分を合わせられるかという視点です。

この考え方はデザイン経営の中心となるデザイン思考、人間中心設計の思想と通じるものです。

産業革命を源流に持つメーカーはPDCAをいう言葉を今でも聞きます。計画が無ければ何も起きません。極端には情報収集でさえ計画がなければおこなわれません。

多くの計画は長・中期計画に基づき、年度前におこなわれるため、一定以上のスピードで変化することができません。日本の大企業にデザイン経営をPDCAサイクルで導入しようとしており様々な無駄と歪みが発生し利益を生み出す効率が低くなっています。さらに悪いことに無駄と歪みによって生み出される仕事をやることで成果を上げて出世する人がいるため、なかなか根本的な変化ができないという状況もあります。

柔軟に変化していく開発スタイルには、リーン開発/アジャイル開発がありますが、これらはVUCA時代のOODAをベースとしたものです。

つまり企業における文化の変化やパラダイムシフトと呼ばれていることは実はこのPDCAからOODAへの変化だと考えることもできるのです。

スタートアップから、中小企業、大企業までが一つの開発スタイルを共有することでオープンイノベーションなどの連携も起きやすくなりますので、VUCAとOODA(ブーカとウーダって双子の子犬に付けたい名前)を企業に浸透させていきたいと思います。

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