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先行デザインからデザインシステムを作るメリット

デザインをするためのルールやアセットを整備することで、製品の拡張や複数製品の開発に対して、効率的で統一した開発ができるようにする仕組みを「デザインシステム」と呼んでいます。

デザインシステムに近いものとしてデザインガイドラインがありますが、これにUIコンポーネントなどのデザインツールを統合することで「使える」ガイドラインにすることがデザインシステムの特徴となっています。

またいつまでも使えるように維持していくために、デザインシステムの運用面でも、製品を中心とした開発からデザインシステム中心の開発へ移行していくことで、風化しないガイドラインを実現しています。


システム連携製品群のためのデザインシステム

特にデザインシステムを必要とするのが、システムとして連携して機能する複数の製品を同時に開発するようなシステムデザインの場合です。

今回の記事では、デジカメ、スマホアプリ、PCアプリ、Webサービスを同時に次世代のプラットフォームとして開発しなければならないような場合を想定して考えてみます。

これらは連携することで初めてパフォーマンスを発揮することができるものですが、一方で従来の開発のやり方では単なるカメラ、単なる画像管理アプリ、単なる写真投稿サービスという風に各部門でバラバラに開発することもできてしまいます。かと言ってシステム全体を一つの製品として開発しようとすると、ハード開発とソフト開発の違いなどから混乱が生じてしまいます。

そこで各製品開発を始める前に、全体の目的や各製品の役割、共通した機能や操作などを抽出し、まとめてデザインしてしまおうというのがデザインシステムの基本的な考え方になります。


次世代システムのためのデザインシステム

AIやロボティクスが実際の製品に利用されるようになる節目では、既存製品からUIパターンを抽出するだけでなく、新しいテクノロジーや製品自身の役割の変化に応じて新しいUIパターンを生み出していく必要があります。

製品デザインを始める前に、UI課題を定義しそれに対するUIパターンを研究していくことで次世代システムのためのデザインシステムを作っていくことになります。研究と言っても製品デザインと同じようにプロトタイピングと評価を繰り返すことは変わりません。

製品システムに共通の操作や基本構造についてより多くの時間を掛けることで、各製品の開発ではそれぞれに特化した部分に注力してデザインすることができるようになるためトータルで掛かる時間は変わらないかより少なくなります。


先行デザインはUIを見直すタイミングになる

製品開発とデザインシステム開発を分けるメリットの一つとして、個別の事情による特殊なUIになっているものを、ユーザーが他のシステムで慣れているものに切り替える機会になることがあります。

一般的なUIを意識したデザインシステムのために、例えば他社製品研究や書籍を参考に視野を広く持つことができるのも製品開発から離れた先行デザインのメリットです。

製品開発だけが繰り返されている場合には、常に発売に向けた日程となるため十分な検討が必要な変更には消極的になってしまいますが、デザインシステムでは長期的で全体的な意識で取り組むことができるのです。



どんなUIを先行デザインするか

先行デザイン(研究)では、通常の製品デザインとは違う視点でデザインをおこないます。製品デザインでは機能を中心に考えることになりますが、先行デザインでは複数製品で共通に使われる基本的なUIをデザインします。

表面的な色やコントロールの外観だけではなく、共通操作やその土台となるUIアーキテクチャーにじっくりと取り組むことで、システム全体の親和性が高まり不整合によるユーザーの混乱を防ぐことができます。

もし製品開発の中でシステムデザインをおこなおうとすると、開発者の負荷が増大するだけでなく、特定の製品に有利なシステムになってしまい長期的にはシステム崩壊の原因になります。


複数製品・複数利用者が連携するUI

近年ではクラウドやWebサービスを主体としたマルチデバイス(マルチスクリーン)やマルチユーザー(共同操作)のシステムが実現してきています。

デジカメの例では、撮影画像が瞬時に複数のデバイスに共有されるだけでなく、撮影レシピなどの設定データが共有されることで撮影デバイスと操作デバイスが異なるような使い方もできるようになってきています。

動作している機器と、ステータス表示や操作をおこなう機器が違う場合に、どのように動作機器を理解できるようにするのか、またエラー表示などで機器を特定する方法などをシステム全体で決めておかなければユーザーが理解できなくなってしまいます。

先行デザインとしてシステム全体の研究を進めていくと色々な「関係性」に気づくことができますので、それをデザインシステムに展開していければ良いシステムデザインができるのではないでしょうか。





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