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編集で大切にしている3つのこと

ありがたいことに、会社の広報メディアで、取材をしてもらえることになった。事前の打ち合わせで、どんな内容になるかを聞いたところ、「編集で大切にしていること」について話してほしいという。ぱっと答えることができなかったので、このnoteで記事をまとめることを通じて、取材の準備をしておこうと思う。

1.突出した才能を拾うこと

編集するうえで、最も大切なことは著者の突出した才能を拾うことだ。本は、著者の突出した才能こそ商品価値になる。

たとえば、TRFのSAMさんの取材をしたとき、「60歳になったいまが一番、心も体も自分史上最高」「いまが一番踊っていて楽しい」とお話されていた。ダンスをされている方は、世の中にたくさんいるかもしれないが、60歳を迎えて、「いまが一番」と言い切れる人は、SAMさんしかいないだろう。
そこで、デザイナーさんやカメラマンさんにお願いして、SAMさんの踊っている姿を写真に撮ってもらい、表紙や冒頭のページに掲載した。
下記のプレスリリースにも写真が載っているので、ぜひ見てほしい。歳を重ねてなおしなやかに踊るSAMさんの姿は、神秘的なオーラさえ放っている。この写真ができてきた時、私は仕事を果たしたぞと思った。

2.文脈をつくること

2つ目に大切にしていることは、文脈をつくることだ。
私は特にそうだが、人間の記憶力は想像以上に乏しいので、本の中であれこれ詰め込んだところで、覚えていられることはそれほど多くない。なので、一番伝えたいメッセージがひとつ際立つようにして、そのほかは削ぎ落としていく。

たとえば、絶賛編集中の『本当に必要なことはすべて「小さな暮らし」が教えてくれる』。これはジャンルとしては片付けの本なのだが、一番重要なのは、「本当に良いモノと出会って、それを愛し抜くことは素晴らしい」ということだ。モノをあまり買わないようにすることや、どういう基準でモノを捨てていくかということももちろん書かれているが、これらはあくまでも補助的な位置づけにして、原稿からにじみ出る「本当に良いモノと出会ったときの高揚感」が際立つように、構成を整えた。

3.「なんか変だな」と思われる本をつくること

最後に大切にしていることは、「なんか変だな」と思われる本をつくることだ。
1日に発売される書籍の数は、200冊近いと言われている。すごく多い。こんなに出版する必要があるのかと思う。とりわけビジネス書は、正直に言って、「なんか同じような本だな……」と思うものが多い。SDGsが叫ばれるなか、わざわざ紙に印刷して流通させるのだから、ほんの少しでも世界にとって意味のあるもの、新しいものを生み出したい。そして、新しいものとは、きっと「なんか変だな」という違和感のあるものなのではないかと思っている。

とはいえ、奇をてらった変な本をつくりたいのではない。あくまでも著者の才能の秀でた部分を拾っていったすえに、既存のフォーマットには当てはまりきらない「なんか変だな」と思うものができあがるのだ。

たとえば、『怪獣人間の手懐け方』は最たる例だ。第8章の怪獣人間図鑑編は、特に変なエピソードだらけで、本当に何の本を編集しているんだろうと思いながらつくっていた。たとえば、成田悠輔さんが飲み会中に突然黙って帰ってしまったけれどipadを忘れて戻ってきたエピソードや、エイベックスの松浦勝人さんに呼び出されたとき、箕輪さんが景気づけにストロング缶を一気飲みして会いに行ったら、何故か「お前最高!」と意気投合して抱き合うみたいなエピソードがでてくる。怪獣人間のみなさんが本当に怪獣人間すぎて、一般読者にとってなんの実用性もないのだが、「こんな人も世の中にいるんだな」と読んでいるうちに自然と元気がでてくる。

自分なりの戦い方でベストセラーを目指す

以上が現段階での、編集で大切にしていることだ。
自分なりの戦い方をきわめていって、ベストセラーをつくっていきたい。

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