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競馬実況から離れた正直な理由

元コミュ障でHSPアナウンサーの小屋敷彰吾です。

先日はTwitterで「ラジオNIKKEIを退社しました」とご報告したところ、たくさんの方から温かいメッセージをいただき、本当にありがとうございました。素直にうれしかったです。

ただ、それと同時に「競馬実況が好きだったのに、残念です」という声もたくさんいただき、心苦しさも感じました。

これまで「なぜ競馬実況をしなくなったのか」ということをちゃんとお伝えしていませんでしたし、中には「この人、なんで辞めちゃったんだろう」とびっくりされた方もいらっしゃったかなと思います。

だいぶ気持ちの整理もついてきたので、競馬実況をしなくなった理由を今回は書かせていただきます。

タイトルの通り、内容もヘビーになります。
時間と心に余裕がある方に読んでいただけたらと思います。

また長文かつ、読みづらい部分が多々あると思いますが、どうぞご容赦くださいm(__)m

1.私が競馬実況から離れた理由

それは「このまま続けていたら体が壊れる」と感じたからです。

私は2020年8月までラジオNIKKEIで競馬実況を担当していました。
「競馬実況アナウンサー」という職業は私の中学生のころからの憧れでした。だからその仕事に就くことができた時は、すごくワクワクしましたし、周囲の人も「夢が叶ってよかったね」、「好きなことを仕事にできて最高だね」とたくさん声をかけてくれました。

しかしデビューすることになってからは、ワクワク以上に不安な気持ちでいっぱいでした。

いつも聴いてくださっている方には今更な情報ですが、私が喋っていたラジオNIKKEIはJRA(日本中央競馬会)の公式実況を担当していて、その実況は競馬場内や全国のWINS、グリーンチャンネル(競馬専門のチャンネル)、JRAホームページなどで流れます。

「競馬を好きな方なら、一度は耳にしたことがあるであろう実況」と、言ったら少しおおげさかもしれませんが、それぐらいたくさんの方に聴いていただいています。

自分の実況をたくさんの方に聴かれるというプレッシャーは正直想像していた以上でした。

特に競馬はギャンブルでもありお金がかかっているため、他のスポーツ以上にミスが許されません。
もちろん人間なので失敗することもあるのですが、それでも「正しく伝える」ことが絶対条件です。
私はそのプレッシャーに耐えることができず、当時は毎週末が憂鬱でした。

そして実況を担当するようになると、当然うまくいかないレースもありました。
そうした時にSNSなどではやはり厳しいコメントが見受けられ、そうしたコメントをみるたびに自信を失いました。
そうなるとますます「また失敗したらどうしよう」とか「ミスをしたらSNSとかで何か言われるかもしれない」などと考えてしまい、失敗してしまうことがありました。

次第に競馬実況をすることが「恐怖の対象」になってしまい、本番がくるたび「早く終わってほしい。緊張から解放されたい」と思うようになりました。
そうした影響で2020年ころからは、マイクの前で喋ろうとするとうまく発声できなかったり、体調も頻繁に崩すようになりました。

しかもちょうどそのころはコロナが流行し始めたタイミングで「未知の病気へのストレス」も人一倍感じていました。

さらに会社での人間関係の悩みやプライベートでの生活の変化などもちょうどこの時期に重なってしまい「このままでは絶対に体が壊れてしまう」と直感的に感じました。

そこで会社にも相談し、2020年9月、競馬実況からいったん離れることにしました。

2.自己否定が続く毎日

競馬実況から離れた直後は、それまで感じていたプレッシャーからの解放感でいっぱいでしたが、時間が経つにつれ、焦りを感じたり、自分を否定するようになりました。

「なぜ他のアナウンサーはプレッシャーの中でも頑張っているのに、自分は頑張れなかったのだろうか?」
「自分が甘えているだけなのだろうか?」
「あれだけ挑戦してみたかったことなのに、なぜもう投げ出してしまったのか?」

そんな言葉ばかりが毎日毎日頭の中に浮かんできて、自分のことを受け入れることはできませんでした。

実況しないで悩むぐらいならいっそもう一度戻ってみようと、実況練習をしたこともありました。
しかしいざ喋ろうとすると、嫌な記憶が思い出されて、声が震えたりしてしまい、どうしてもマイクの前に立つことはできませんでした。

こうして改めて文章で書いてみても、当時の記憶が苦しみを伴って鮮明によみがえってきます。

「できていたはずのことが、なぜかできなくなってしまった」。

この時期はどうしようもなく辛かったですね。

3.人生の転機が訪れる

2021年1月にたまたま「HSP」という概念と出会ったことが、転機となりました。
ちょっと前に武田友紀さんの「『繊細さん』の本」がベストセラーになったことで、日本にも一気に広まりましたよね。

改めてご紹介すると、「HSP」とは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、直訳すると「ひといちばい繊細な人」という意味であり、生まれつきの人間の気質を表す言葉です。

人口の20%ぐらい、つまり5人に1人はこのHSPだといわれています。
(日本だけでも2000万人くらいいるとされる、かなり身近な存在ですね)

こうした気質を持つ人は生まれつき五感が鋭いため、騒音や光が苦手だったり、深く考え込んでしまったり、職場や家庭など生活の中で気疲れしやすく、生きづらいと感じてしまう傾向があると言われています。

どうやら私はこのHSPであり、生まれつき敏感すぎて、あれこれ気にしてしまったり、他人の顔色を伺ってしまったり、何気ない一言に傷つきすぎてしまう傾向があるようです。

それまで自分のことを繊細であるとは思ったことがなかったので、最初はあまりピンときませんでした。
しかし、SNSでのツイートや他人から言われた何気ない一言で1日も2日も落ち込んでいた過去を振り返ると、まさしく「HSP」だったんだなと思わせられました。

HSPではない方が「5」のダメージを受けるとするならば、HSPの人はその5倍から10倍でダメージを受けているという説明を読んだときに「確かにそれは、しょっちゅう落ち込むはずだし、気にしないことができないわけだよなぁ」と納得しました。

それまで自分と他人の感覚は同じだと思っていたので「違っている」という事実にとても驚きましたし、何よりも正体不明で扱いづらいと感じていた「自分自身」とようやくお友達になれたような感覚でした。

そのおかげで「ストレス耐性のない自分はダメな人間だ」という自己否定をしないようになりましたし、「他人の感情を察したり、相手の気持ちに寄り添うことが得意である」という自分の長所にも少しずつ目を向けられるようになりました

そこからはもっと自分のことを深く理解し、持っている力を活かせるようになりたいと思い「エニアグラム」を勉強し始めました。

あ、「エニアグラム」をまず説明しますね。

「エニアグラム」とは、人間の本質的な性格を9つのタイプに分ける性格類型論であり、そのタイプごとに行動や意思決定を行う際の動機が異なっているとされています。
各タイプによって、うれしいと感じること、悲しいと感じること、怒りを感じることが全く違っていて、自己理解、他者理解を深めることができるツールです。

このエニアグラムを勉強していくにつれ、自分という人間のことをより客観的に理解できるようになり、気持ちの整理がつくようになりました。

さらにワークを通して自分以外のタイプの人と触れ合うことで、それまで理解することができなかった他者への理解も深まりました。
そのおかげで今まで苦手だと感じていた人とコミュニケーションを楽しめるようになったり、自分の中での生き辛さがどんどんと解消されていきました。

そして自己理解が深まったところで、自分を活かすためには今後どうしていくべきかを考えたとき、「会社を辞めて、フリーランスとして活動していくことが最も自分を活かせるはずだ」という結論に達したため、退社することを決めました。

4.今後、挑戦していきたいこと

私は今後、挑戦していきたいことが4つあります。

一つ目は「もう一度、競馬を実況すること」。

2年前は原因もわからずとにかく喋ることが恐怖でしたが、自己理解が進むにつれ、「実況がうまくいかない」と自分で思い込んでいただけだったんだということに気付きました。
それに私、やっぱり競馬実況、カッコいいなって思うんですよね。
今後もしどこかでチャンスをいただけるのであれば、もう一度競馬実況に挑戦してみたいです!

二つ目は「HSPについて世の中にさらに伝えること」。

「HSP」は生まれつきの気質であるため、私は今も傷つきやすいという本質は全く変わっていません。
しかし自分の弱点を知り、それを受け入れることで、前向きに生きていくことができていますし、こうしてアナウンサーとして活動を続けることもできています。
私の体験はあくまで一例に過ぎませんが、それでも私の経験がちょっとでも生き辛さに苦しんでいる人のヒントになったらなと思います。

三つ目は「コミュニケーションで困っている人の手助けをすること」。

すでにこのnoteで1週間ほど「雑談」をテーマに書かせていただきましたが、私はずっと「会話」をすることが苦手でした。
以前は会話をしようとするたび「この人にこんなこといって大丈夫かな?」とか「この人機嫌よくないのかな?何か自分悪いことしたっけ?」とか、いろいろ考えてしまって、よく言葉に詰まっていました。
いわゆる「コミュ障」でした。

そんな私でもアナウンサーになり「雑談」を勉強していく中で「こうすれば会話ってうまくいくんだ!」というコツがだんだんとわかってきて、今では「会話をすることって、すごく楽しい!」と思えるまでに成長しました。
自分が苦労した経験があるからこそ、会話で悩んでいる方のお力になれたらうれしいです。

そして最後の目標は「エニアグラムをもっとたくさんの人に知ってもらうこと」

「エニアグラム」に出会えて本当によかったなと、日々実感しています。
エニアグラムを勉強しながら自分の内面へ意識を向けていくことで、自分の本心が手に取るようにわかるようになりましたし、それを受け入れることができるようになりました。それと同時に他人のことも深く理解し、段々と受け入れられるようになってきました。
「生きやすくなったなぁ」というのがエニアグラムを学んでの一番の感想です。

今の時代は、「個性を活かすこと」が求められ、それと同時に「多様性(他人の個性)を受け入れること」も求められています。
求められることが多すぎて、生きづらさを感じやすい時代になりましたよね。

「個性を活かす」ためには自分のことを誰よりも深く理解しなければいけませんし、「多様性(他人の個性)を受け入れる」ためには、相手のことを深く理解しなければなりません。
そのためのツールとして「エニアグラム」はこれからの時代、必ず役に立つはずです。
私自身まだまだ勉強することばかりですが、もっともっと習熟し、その面白さを発信できるようがんばります!

5.ここまで読んでくださってありがとうございます

この2、3年はものすごく長くて苦しいと感じた時間でした。
しかしその時間は、自分と向き合い人間として成長するために必要だったのだろうと今は思います。
学んだこと、経験したことを今後に生かしていきたいと思います。
これからもどうぞ温かく見守っていただけたらと思います。

ものすごく長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
みなさんが良い1週間を過ごされますように。


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