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書籍「ジェンダー史10講」(姫岡とし子著/岩波新書)

女性史とジェンダー史のこれまでの軌跡を、家族、身体、福祉、労働、戦争、植民地などの観点から総合的に紹介している本です。

次のような点について、興味深く読みました。

〇 我々が一般的に思い描くような家族、すなわち、夫婦や親子が強い愛情で結ばれた、私的で閉鎖的で親密な、そして性別役割分担によって女性がケアを担当する「家族」は、まだ250年あまりの歴史しかない。
  これを「近代家族」というが、1980年代から崩壊し始めている。

〇 男性/女性について、力強さ/弱々しさ、大胆/控えめ、自立/依存、勇敢/臆病、貫徹/順応、攻撃的/受身的、力/愛、理性/感情、知/信仰、というように二項対立的に考えられるようになったのは、18世紀になってから。意外なことに「啓蒙思想」がその原因となった。

〇 一般的には「女性はずっと伝統社会で虐げられてきたが、近代化によって解放される」と考えられてきたが、むしろ近代化によって、女性が低賃金の「劣悪な職」に甘んじさせられる形の労働市場のジェンダー化が進んだ。

〇 戦争は「男らしさ」を要求し、その中で男たちは軍隊という「男らしさの学校」を経験して「ひとかどの男性」と認められ、逆に兵役不合格者は女性たちからしばしば蔑みのまなざしで見られてきた。
  男らしさは、「戦えない性」である女性だけでなく、戦わない/戦えない「弱き男性」の存在によっても強化される。
  戦争で障がい者となった男性も、世間から冷たい目で見られる。とりわけ顔面損傷者、戦争神経症者、性職能力喪失者は、「女性化した」存在として蔑まれる。
 
 ↑ ゲイを蔑む風習はこういう文脈から出てきていて、根底にはこのような「男らしさ信仰」があると思いました。

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