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ニュースウオッチ9⑦取材依頼の罠

⑥騙し討ちからの続き/


2023年5月15日に放送された「ニュースウオッチ9」のエンディングには、ワクチン被害者遺族会の方々が登場しますが、おかしなことにこの映像には

ワクチンのワの字も出てきません。


なので、ワクチン接種死遺族なのにウイルス感染死遺族であるかのように、視聴者に誤認させてしまうのです。※以下は遺族会代表・鵜川さんのTwitterで公開されている番組動画です。

ところで、「ワクチンについては触れない」という判断は、いったいどの時点でなされたのでしょうか?


■別部署からのアドバイス

5月10日、担当者は遺族会から取材の承諾を取り付けた後で、別部署の記者にチャット上でアドバイスを求めています。「ワクチンで家族を亡くした人に話を聞けそうです」と伝えたところ、「ワクチン問題は慎重に」と言われたらしい。それに対して担当者は次のように答えました。

担当者は、5類移行してもこれまでの3年間を「忘れない」という企画意図から、遺族については「コロナで家族亡くした人という属性に留め」て、ワクチンの問題には言及しないと返答している。

BPO放送倫理委員会決定第44号p.6より。強調筆者


NHK側としては、担当者が遺族会に取材依頼した ”後で“ この記者に相談した結果、「ワクチン問題には触れない」という方針になった、という筋書きにしたいんでしょうね。取材依頼の"前に"決めていて、それを伏せて遺族会に取材を申し込んだとなれば、騙し討ちになっちゃうからね。

NHKの描いたシナリオは……

①取材のOKが出て
➁念のため局内の詳しい人に相談したら
③「ワクチンのことは慎重に」って助言されたので
④ワクチンのことは番組では出さないことにした

……って、きれいに起承転結になってますね。
よくできました💮


別部署の記者による助言が記者の判断に影響を与えたという見方は、BPOの意見書には次のように記されています。

遺族への取材の調整が進む中、担当者は、遺族らのインタビューの13日までに、ワクチンの問題については取り上げないと決めていたという。その背景には、担当者がコロナ関連の取材経験が豊富な別部署に所属する記者に助言を求めた事実があった。担当者はこれまで直接取材したことのないコロナ禍に関するテーマを扱うことに不安があったため、この記者の助言を求めたという。

同上。p.6より。強調筆者


■不合理な言い訳ふたたび

さてここで、
ワクチンに言及せずにワクチン遺族を番組に出すにはどうしたらいいか?
という難問が立ちはだかるんですが、ここでNHKお得意の言い訳が炸裂するんですよ。それは……

コロナ禍で亡くなった方の遺族だという伝え方をすれば、ワクチンについて触れる必要がないので、問題ないと考えてしまった

NHKによる報告書「ニュースウォッチ9報道について」p.3。強調筆者


あいかわらず、「にわかに信じがたい」ほど安直な言い訳ですね。つまりはこういうことです。

「コロナワクチンで亡くなった人の遺族」ではマズイので
➁ “ワクチン” の部分を伏せて…   
「コロナで亡くなった人の遺族」にすればOK!

小学生並みの屁理屈だな……。この言い訳自体、でっち上げの可能性が高いと私は考えています。前回お話ししたようにNHKの人たちは、最初に設定したシナリオに沿って動くだけなので。

BPOをして「にわかに信じがたい」と言わしめたあの言い訳、「ワクチンで亡くなった人の遺族であっても、広い意味でのコロナ禍で亡くなった遺族には変わりないと考えてしまった」と同じパターンではないかと思う。わざと馬鹿なフリをしているのですよ。※ニュースウォッチ9④「印象操作」の回を参照。

ともあれ、担当者が知り合いの記者に相談したのをきっかけに、「ワクチンには触れない」と判断したことになっているのですが、はたしてそれは本当なのでしょうか?


■取材依頼のメール

今までの報告書とBPOの意見書を参照してきましたが、ここで遺族会から出された「証拠」を見てみましょう。遺族会ウェブサイトの問合せフォームから、NHKの担当者が送った取材依頼のメールです。週刊現代の記事で全文公開されています。


まず気になるのは、

ワクチンについては一切言及していないこと。


「コロナ」の文字すら見当たりません。「コロナ」や「ワクチン」の語を意図的に避けているかのような、不自然さを感じます。

先般から各社報道していますように5類移行となり、社会には明るい兆しが見えているようにも受け止められていますがその実、非常に強い危機感を個人的に覚えずにはいられません。

あった事がなかった事のようにされ忘れられていくのではないか、数えきれない嘆きの声が埋もれていくのではないか。そして我々の報道の姿勢としてもこのままで良いのか。 歴史的にも非常に重要な意味を帯びるタイミングが現在であるとすら考えるのですが自分ではなかなか答えに辿りつけず、それでも番組でもどうにか取り上げて提起したい狙いから、厚労省や自治体にも取材をすすめていたところ、鵜川さまの活動に辿り着くことができました。

求めは長年活動されてきた鵜川さまのご意見をぜひ賜われないか、そしてご遺族の声を後年に残すことができないか、取材のご相談であります。

「週刊現代」の記事で引用されたメール本文から抜粋。現代ビジネスウェブサイトより。


「非常に強い危機感」とは何に対する危機感なのか、「あった事」「嘆きの声」が具体的に何を指すのか、「タイミング」「答え」「狙い」とは何を意味するのか……この文章は全体的に抽象的、情緒的で具体性を欠き、曖昧模糊としています。無理もありません。「何の」という部分が抜け落ちているのですから。

一見して、新型コロナについて書いてあるのかな?くらいはわかりますが、コロナのワクチンなのかウイルスなのかは定かではありません。どうにでもとれる書き方をしている。肝心なことをわざとぼかしているかのようです。まるで言質をとられることを恐れているみたい。

確かにこの文面だと、後で揉めても言い逃れができるでしょう。自分は悪くない、相手が勝手に勘違いしただけだと、責任転嫁ができますね。

「コロナ」「ワクチン」というキーワードを避けることで、読み手が察するように仕向けている。相手はワクチン遺族会の人ですから、メールを読めば「ワクチン」のことだと受け止めます。そのつもりで取材をOKしたのでしょう。NHKの真意がそこにはないことを知らずに。

このメールを送った時点ですでに、「ワクチンについては触れない」という判断がなされていた可能性は高い。NHKの報告書にあるように、知り合いの記者からアドバイスされて「ワクチンについて触れなければいい」と思いついたのではありません。前日に取材依頼のメールを送った時にはそう決めていた……だからあのような文面なのです。

取材が騙し討ちのように行われた可能性には、前回の記事でも触れましたが、今回取り上げた取材依頼の文面からも、そのことがうかがえます。

遺族会がもつ証拠と照らし合わせると、NHK側の主張の矛盾が次々とあぶり出されてきますね。次回も遺族会側の証言を参照しながら、NHKの嘘と欺瞞に迫ります。


⑧遺族会の申立て却下へ続く

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