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競走馬の名前をつけられたワインがある

 ヒューソネット(Hussonet)という馬をご存じでしょうか? アメリカで産まれた競走馬です。現役時代は7回走り、条件戦を2勝しただけの平凡な馬でした。しかし、母のサカウィスタ(Sacahuista)が1987年のBCディスタフを含むGⅠ3勝をあげた名牝であるため、血統の良さを評価されてチリで種牡馬入りしました。後にオーストラリアでも種牡馬生活を送っています。

 チリのスタッドブックによると、ヒューソネットは2000年から2006年まで種牡馬リーディングを獲得しました。南米大陸で23頭ものGⅠ馬を輩出。その中には、チレ競馬場3冠を達成したトロタモンド(Trotamondo)や、アメリカのGⅠを勝ったワイルドスピリット(Wild Spirit)などがいます。日本にも、リース(Lhiz)とドメーヌ(Domaine)という2頭のヒューソネット産駒のGⅠ牝馬が導入されています。競走馬としては輝けませんでしたが、種牡馬として競馬史にその名を刻みました。

 ヒューソネットはピルケ牧場(Haras De Pirque)で繋養されていました。チリの首都サンティアゴの南にあるピルケという地区に開かれた歴史のある牧場です。この牧場、ただのサラブレッド生産牧場ではありません。

 ピルケ牧場はワイナリーとしての顔も持ちます。2006年からオーガニック農業に取り組み、2016年より全商品がオーガニックワインとなったそうです。2017年にはイタリアのアンティノリ社(Antinori)という1385年創業の超老舗ワイナリーが、ピルケ牧場のワイナリー部門を買い取りました。チリの一流ワイナリーです。興味のある方は Google Map で "Haras De Pirque" と検索して航空写真を見てください。南にブドウ畑が、北西にサラブレッドのトレーニングセンターがあるのが分かります

 ピルケ牧場が生産するワインのラベルには馬が描かれています。様々な銘柄のワインがありますが、その中の1つが『ヒューソネット・カベルネ・ソーヴィニヨン(HUSSONET CABERNET SAUVIGNON)』です。このヒューソネットはもちろん種牡馬ヒューソネットに由来します。公式HP(https://haraswines.com/)の商品説明には、「ヒューソネットはチリ競馬でもっとも有名なサラブレッドの1頭を思い起こす(Hussonet recuerda el nombre de uno de los potros más famosos de la hípica chilena.)」と書かれています。

 ヒューソネットは日本でも買えるそうです。エノテカで販売ページを見つけたので、試してみようかなと思われた方はぜひ!


 いかがでしたか? 日本ではサラブレッドの生産牧場はサラブレッドの生産牧場ですが、チリではサラブレッドの生産牧場が牧場や農場の機能を持つことがあります。たとえば、チリNo.1生産牧場のドン・アルベルト牧場は、サラブレッド生産と酪農を事業にしていました。チリはワインが有名なので、ピルケ牧場のようにサラブレッド生産とワイナリーを兼ね備えていても不思議ではありません。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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